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すぐに「駄作」と決めつけないで-「not for me」と「作品の優劣」を混同してはいけない

何らかの創作物を指して、すぐに「駄作」と決めつける人がいます。

芝居が、映画が、小説が「つまらない」と片付けるのは簡単です。
しかし、ろくに噛み砕こうとせずに独断するのは「自分の感受性が鈍い」と白状するに等しいですね。

自分の理解力の乏しさ、心の貧しさを棚に上げて、「つまらない」「古臭い」「意味がわからない」と一刀両断するお粗末さ。
それは受け取る側の怠慢です。

すぐに「駄作」と決めつけないで


学生時代の私は、周りの大人たちに追いつきたくて背伸びして難解な映画や芝居にかぶりつく子どもでした。
理解できずに寝てしまうこともあったりして…
もったいなかったですね。
今ならもう少しマシな観方ができたのではないか、もっと多くを感じ取れたのではないか、と思います。

能を基にした三島由紀夫の戯曲。
廃校を舞台に行われた山海塾のパフォーマンス。

なかでも、数年前に亡くなったポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダが撮った『ナスターシャ』の豪奢な美しさは心に残っています。
ネットがない時代に、どこで情報を仕入れたのか。
学校帰りに伊勢丹の裏の小劇場まで足を運んだことを覚えています。

全編ロシア語で紡がれる、坂東玉三郎と永島敏行の二人芝居。
案の定、難解すぎて寝てしまいましたが、銀幕を覆う静かなるエロスだけは感覚に刻まれ、忘れることはありません。

当時、何も分からなかったのは、私の「観る力」が圧倒的に足りなかったのです。
それは完全に私の責任であって、作品の出来によるものではありません。

「つまらないから寝てしまった」なんて言い訳は通用しません。
精神と知識が未熟だから豊かな実りを受け止められなかったに過ぎないのです。

「not for me」と「作品の優劣」を混同してはいけない


自分の無知や読解力・理解力の無さを顧みず、一方的に短絡的に「つまらない」と決めつけるのは危険です。
そこで止まってしまうからです。

つまらないなら、「なぜ」つまらないのか考えてみる。
「何が」「どのように」つまらないのか語ってみる。
それこそが自分の価値観です。

99人が「駄作」と言っても…「面白い/面白くない」は自分で決める│舞台鑑賞の醍醐味

現代を生きる私たちが一日に得る情報量は、江戸時代の人々の一生分に相当すると言われます。
ひとつひとつの物事を咀嚼し、消化し、血肉にするゆとりがないのは不幸です。

しかし、だからといって一段深く理解する(しようと試みる)努力を怠ってはいけません。
自分の怠慢を棚に上げて、安易に「駄作」呼ばわりするのは作家や演者に失礼ですね。
SNSが発達し、評価が瞬時に拡散される現在は特に注意が必要です。

作品や演者が劣るのではなく、単に自分の好みに合わないだけならば尚更です。
「not for me」と「作品の優劣」を混同してはいけません。

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野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共に30年(ブランクあり)。全組観劇派。美丈夫タイプの生徒さんが好み。谷正純・酒井澄夫・木村信司・大野拓史作品が好き。観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。

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