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『源氏物語』の面白さの秘密を探る│源氏物語「空蝉」講読 オープンカレッジ備忘録

『源氏物語』は面白いですね。
1,000年以上前に成立した物語ですが、いま読んでも抜群の面白さ。

長く読み継がれてきた理由は、筋書きや心理描写の巧みさもさることながら、読み返すたびに新たな面白さを発見できることでしょう。
以前は見過ごしていた部分に心惹かれたり、共感できなかった部分が腑に落ちたり…

読者の経験値により違った表情を見せてくれる、多面的な魅力に満ちた物語なのです。

『源氏物語「空蝉」講読』のオープンカレッジを受講しました


とはいえ、原文に触れたのは学生時代の古文の授業のみ。
54帖の大部分は現代語訳で読みました。

古典の中でも難解とされる『源氏物語』ですが、ぜひ原文に挑んでみたい…と思った矢先、タイムリーな企画が目に飛び込んできました。
某大学のオープンカレッジ。
テーマは『源氏物語「空蝉」講読』。

これを聴講しない手はありません。
同じく源氏好きの母を誘って出かけました。

結論から言うと、非常にエキサイティングで実りある講義でした!
受講して良かった!

ドニー教授のホットな源氏論


連続2コマの講義、最初の90分は「源氏物語とは何か」をざっくりと。
成立から、後世への影響、研究など…立て板に水の如く発する担当教授。
誰かに似てる?
…竹中直人だ!

周防正行監督の映画『Shall we ダンス?』のドニー青木を彷彿させるヴィジュアルと語り口。
熱いアクションと緩急自在の語り口で聴衆を飽きさせることがありません。

長大で難解な物語を理解する上で必要な知識を、簡潔に分かりやすく伝えてくださり、学生時代に得た「点」の知識が「線」でつながったような気がしました。

後半は、いよいよ「空蝉」の講読。
『湖月抄』などの注釈書を取り交ぜつつ、軽妙に語られる若き日の源氏の姿。

実のところ空蝉には関心の薄かった私ですが、改めて読んでみると陰影に富んだ面白い女性です。
ドニー教授の解説で54帖を制覇してみたいですね。

面白かったポイント 7選


1. 『源氏物語』は、本流(上流階級の女性)と傍流(中流階級の女性)の物語の組み合わせで構成されている

2. 『細流抄』で三条西実隆は『源氏物語』について (1)歴史書→資治通鑑である (2)道徳書→好色への戒めである (3)宗教書→悟りへの道である、と述べている

3. 昔の人は54帖の順番通りに読む事は少なかった
→縁起が良いからと、正月に「初音」を読んだりした

4. 源氏は母娘または、男系の親族の女性と関係を持つタブーは犯さなかった
→前者の例は夕顔と玉鬘、後者の例は正妻の葵の上(父帝の姉妹[三条大宮]の娘であった ※兄弟の娘は不可)

5. 本名の登場人物はたった2人(藤原惟光 と源良清)

6. 『源氏物語』とは結局、「A子がいいな、B子もいいな、C子もD子もE子、やっぱりF子がいいな!」という話である
→身も蓋もないが、それだけで終わらないところが長年愛されてきた理由だと思う

7. 平安京の朱雀大路は道幅82~84mもあった(羽田空港の滑走路や行幸通りより広い!)

雀百まで踊り忘れず


たっぷり3時間の講義を終え、すっかり王朝気分に浸った私たち。
かれこれ10年以上、先生について源氏を学んでいる母は、別の方の解釈に触れて新鮮だったようです。

「とても現代的、かつ男性ならではの視点を強く感じた」とのこと。
何事も多角的な視線で対象を捉えることは大切ですね。

帰宅して早速『源氏物語』をひもときました。
「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに」
あぁ、これ!これ!覚えてる!

「桐壺」の冒頭を目にした瞬間、鮮やかに甦る学生時代の記憶。
雀百まで踊り忘れず。
独特のリズムに助けられ、するっと源氏の世界に入り込むことができました。

どの女人が好き?


登場人物で最も共感するのは「玉鬘」。
周囲に翻弄されつつも、持ち前の聡明さで、地に足の着いた幸福を得る姿を好もしく思います。

「源氏を受け入れない」ことで、逆に強い印象を残す「朝顔の斎院」や「空蝉」も味わい深いですね。

ヒロイン格の「紫の上」に関しては、生涯気の休まるときがなかった気の毒な女性というイメージです。
特に後年、源氏が女三の宮を正妻に迎えてからはドラマがぐっと深まります。

物語のキモは、葵の上や明石の君は子どもをもうけたのに対し、源氏最愛の紫の上は子どもに恵まれなかったこと。
源氏と紫の上をつなぐよすがが、ただ「愛」という移ろいやすいものだけであったことが『源氏物語』をいっそう面白くしているのです。

正妻という社会的地位もなく、子というかすがいもなく、きわめて不安定な立場にあった紫の上。

病に倒れてからの「あやしく、浮きても過ぐしつるありさまかな。げに、のたまひつるやうに、人より異なる宿世もありける身ながら、人の忍びがたく飽かぬことにするもの思ひ離れぬ身にてや止みなむとすらむ。あぢきなくもあるかな」の嘆きは、1,000年以上の隔たりを感じさせないほどリアルに響きます。

超訳するなら「源氏は私を“幸せ者だ”って言うけど、いつまで経っても悩みが尽きなくて、私はいつになったら安らぎを得られるの?あーやだやだ…」的な感じでしょうか?

人の心は昔から何ひとつ変わっていないのです。
この普遍性こそ『源氏物語』が今まで愛され、読み継がれてきた理由ですね。

連れ合いは末摘花がお気に入りだそう。
源氏を信じて待ち続けた一途さにほだされるらしいです。
晩年は二条院に引き取られ、穏やかな幸福をつかむのもいい、とのこと。
これも『源氏物語』の世界をつらぬく「因果応報」の表れですね。

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宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
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