FC2ブログ

『鎌足』MVPは天寿光希!―「船史恵尺=ルキーニ」説

私がドハマリする演目は大抵、幕開き早々に印象的な言葉が置かれます。
『BADDY』ならば、王子(暁千星)の「ぼくは退屈で眠られないんだ」。
『退屈』を打ち破れ!「眠られないんだ」が意味するもの―覚醒する暁千星│BADDY

そして、『鎌足』。
船史恵尺(ふなのふびとえさか:天寿光希)の「過去はこんなにも力強い」。
この言葉が刺激となり、物語への集中が一挙に高まりました。
全編を通して琴線に触れる台詞が多かった『鎌足』。
とても私好みの作品です。

「船史恵尺=ルキーニ」説


僧旻(一樹千尋)と共にストーリーテラーを司る恵尺。
作品世界を俯瞰し、ときに物語の中に入り込み、登場人物たちを妖しく導く男

開幕前に「みっきーさん(天寿)は語り部/ストーリーテラーとして重要な役割を果たすのではないか?」との予想を立てました。
これは大当たり。
また、キャッチコピーの「歴史は、作られる。」に絡めた恵尺の働きもほぼ見込み通りでした。
『鎌足』相関図を作りました―有沙瞳、新たなる挑戦/天寿光希はストーリーテラー?

恵尺とよく似た役割の登場人物に、『エリザベート』のルイジ・ルキーニがいます。
舞台と客席をつなぐ架け橋として、作品世界から一歩踏み出し、観客に語りかけるメタ的存在。
選ばれし者、月城ルキーニ│エリザベート

作品の語り手でありながら、ときに、登場人物たちの運命を大きく変える行動に出る彼ら。
ルキーニはエリザベートの命を奪う。
恵尺は蘇我蝦夷(輝咲玲央)を見殺しにし、中臣鎌足(紅ゆずる)に死を示唆する。
しかし、決して直接手は下さない。
それは彼の領分ではないからです。

「主の命より書物が大事」とばかり、火に巻かれる蝦夷をそっちのけで『国記(くにつふみ)』を持ち出した恵尺。
蝦夷は覚悟の自死ですから、ここで救いの手を差し伸べては歴史が変わってしまう。
あくまでも「傍観者」の立場を崩さない恵尺。

聖徳太子と蘇我馬子が編纂したとされる歴史書『国記』。
しかし、現在には残されていません。
『国記』はどこへ行ったのか?何が書かれていたのか?
真実を知るのは恵尺だけ。

『国記』の一部は恵尺が編んだ歴史書に残されたかもしれない。
または残されなかったかもしれない。

「あなたも消されたくはないでしょう?」
誰かのさじ加減ひとつで、生きたことも愛したことも、存在すら消されてしまう。
“書かれた歴史”の曖昧さ、危うさが垣間見える場面です。

「過去はこんなにも力強い」が意味するもの


権力を手にした者が、自らに都合の良いように歴史を操作する。
勝者によって残された歴史が、現在、私たちが知る「歴史」である。

「歴史とは何か?」の問いかけ。
単なる歴史ロマンにとどまらず、重層的なメッセージが込められた意欲作として、面白く拝見しました。

「歴史」に喜びや悲しみ、希望や絶望は必要ない。
人間らしい愛や志が描かれれば、それは「物語」である。
僧旻が語った中臣鎌足の物語をバサリと切り捨てる恵尺。

物語世界の住人でありながら、物語を否定する矛盾。

煉獄で毎夜裁判に臨むルキーニのように、時の流れの外にある異空間を永遠にさまよいながら歴史を編み続ける恵尺。
彼は何者なのか?
彼が誰かを何かを愛したことはあったのか?

恵尺が愛したのは人々の営みが形作る「歴史」。
いま生きて、愛して、何事かを成したこともすべて過ぎてしまえば、ひとしく「過去」。

歴史を紡ぐ者の手によって濾過され、残ったものが「過去=歴史」なのです。
いわば「結果の連なり=歴史」と言ってよいでしょう。
「結果」を得るには、原因や過程がなければ始まらない。

つまり、歴史を愛することは、その奥に隠された人々の営みを愛することに他ならない。
とすれば、やはり恵尺は人間そのものを愛しているのでしょう。
「過去はこんなにも力強い」のは、不純物が取り除かれた“志”や“希望”の結晶だからかもしれません。

『鎌足』MVPは天寿光希


鎌足と中大兄皇子(瀬央ゆりあ)の邂逅を「出会ってはならない二人が出会ってしまった」と評した僧旻。
「出会うべき二人が出会った」と高らかに宣言する恵尺。

二人が出会えば、歴史が大きく動く。
書き残すべき“何か”が起こる。

恵尺の興奮と昂ぶりが、まざまざと伝わる瞳の輝き。
偏執狂的に甲高く、隠しきれない狂気をにじませる声色。
どこか現実感に欠ける、するするなめらかな身のこなし。

底知れない力で観客をぐいぐいと作品世界に引っ張り込んだ恵尺。
みっきーさんのおかげで『鎌足』を何倍も面白く楽しむことができました。
天寿光希を本作品のMVPとさせていただきます!
素晴らしいお芝居をありがとうございました!

↓ブログランキングに参加しています↓
よろしければ応援クリックお願いします

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

↓Twitter(ブログ更新情報)↓
‎@noctiluca94

○『鎌足』関連記事はこちら↓
鎌足遠足(2)―「明日香村」中臣鎌足(紅ゆずる)は、ここで生きて、愛して、星になった
鎌足遠足(1)―中臣鎌足(紅ゆずる)と中大兄皇子(瀬央ゆりあ)が作戦会議をした談山神社へ
物語せよと言へ。我、汝の耳を魅する話をせむ│鎌足
生田大和、会心の一作!紅ゆずる率いる星組に新たなる傑作誕生!│鎌足
蘇我入鹿(華形ひかる)と中大兄皇子(瀬央ゆりあ)の2つの「なぜ?」―『鎌足』ストーリー予想第3弾
入鹿の妹そっくりさん(綺咲愛里)はどこへ消えた?―「鎌足のあらすじが別物になっちゃったよ事件」
紅ゆずるの中臣鎌足―生田大和は藤原氏1200年の繁栄の礎を築いた男をどう描くか?│鎌足
『鎌足』相関図を作りました―有沙瞳、新たなる挑戦/天寿光希はストーリーテラー?
紅ゆずる×綺咲愛里×瀬央ゆりあの三角関係が観られる!?│鎌足
そう来たかー!!星組振り分け 鎌足&アルジェの男
2019年GW!星組が梅田芸術劇場をジャックする☆彡
関連記事
スポンサーサイト

コメント

※任意
※任意
※任意
※任意
※任意
非公開コメント
※必須

プロフィール

noctiluca(ノクチルカ)

Author:noctiluca(ノクチルカ)
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
◇更新情報はこちら◇
Twitter‎@noctiluca94

ブログ内検索とタグクラウド

最新記事

カレンダー

06 | 2019/07 | 08
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

カウンター

宝塚歌劇団人気ブログランキング

にほんブログ村ランキング

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
24位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
演劇
1位
アクセスランキングを見る>>

ブロとも申請フォーム

noctilucaにメッセージを送る

お名前:
あなたのメールアドレス:
件名:
本文:

QRコード

QR

**