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ファッションからひもとく『エルベ』の世界(1)―おしゃれ番長・ロンバルト(輝咲玲央)│霧深きエルベのほとり

演劇において、登場人物のパーソナリティを表すのに欠かせない衣装や装飾品。
前回の記事ではトビアス(七海ひろき)の結婚指輪について触れました。
トビアス(七海ひろき)の指輪―男役の儀式│霧深きエルベのほとり

彼のファッションは独特で、テンガロンハットやガンホルダーを思わせるベルト、ボトムスの裾をインしたロングブーツ。
海の男というより、西部劇のガンマンのような出で立ち。
ある方に「主演作『the WILD Meets the WILD』のオマージュではないか」と伺いましたが、まさにそんな風情です。

今回は、労働者階級であるトビアスとは相対する資本家階級に属するロンバルト(輝咲玲央)のファッションについて頭に浮かんだことを。

おしゃれ番長・ロンバルトのファッションが語るもの


ロンバルトの右手薬指にも結婚指輪が輝いています。
さらにカール(紅ゆずる)とマルギット(綺咲愛里)の結婚披露パーティーでは左手人差し指に大きな石つきの指輪も。

彼の財力、そして、彼が属する階級の証ですね。
カールやトビアスが宝石で身を飾ることは生涯ないでしょう。

正装のお歴々の中でも、ひときわ豪華な装いのロンバルト。
マルギットの父ヨゼフ(一樹千尋)とロンバルトのみ、燕尾服に色の入ったウエストコートを合わせています。

燕尾の中はオールホワイトでまとめるのがお約束ですが、ふたりが選んだのは高級感あふれるゴールドのウエストコート。
タイとポケットチーフも共布です。
当然、おあつらえでしょう。
成金趣味でなく、あくまで上品。
大人の余裕を感じさせるコーディネートです。

ロンバルトに至ってはウエストコートの打ち合わせがダブル。
恰幅の良さ、大人の色気を演出するチョイスですね。
彼はなかなか洒落者のようです。

妻のドレスを選ぶ男


ロンバルトの妻、アンゼリカ(音波みのり)のイブニングドレスも非常に凝ったデザインです。
金襴を施した赤のドレスに、黒の縁取り。
一歩間違えばケバケバしくなりがちな配色ですが、絶妙な生地選びで品の良さが際立ちます。

華やかさの中に女盛りの色香が匂う装いは、「エスコートする夫と並んで完璧な一対になるように」との計算が感じられます。
妻のドレスもロンバルトが選んだのだろうと想像が膨らみます。

(ここまでくると想像を通り越して妄想ですが、脚本外の物語を想像させる『エルベ』の奥深さゆえということで)

仕立て屋を呼び、妻のドレスをあつらえさせるロンバルト。
生地選びから口を出す姿が想像できます。

アンゼリカが悩んだら、さりげなく一番似合うものをアドバイスする。
TPOにかない、なおかつ妻を最も美しく輝かせる一着を。

赤(+金)×黒。
この配色のキモは「黒」。

単に赤×金襴のドレスでは印象に残らないでしょう。
胸元から肩を通る黒いリボンが、背中でV字を描いて長く垂れ下がることにより、縦のラインを強調し、すらりとした印象を与えます。
黒にはデコルテのまばゆい白さを引き立てる効果もあります。

黒に対する白の効果といえば、ロンバルトの白手袋。
傷心の妻の背中をそっと抱き寄せる彼の白い手が、黒いリボンに映えて美しいのです。
この視覚効果は見逃せません。

懐中時計とシガレットケース


燕尾服の胸元に懐中時計の金鎖を覗かせているのもヨゼフとロンバルトのみ。

時計は実用品ではありますが、持つ人の好みが如実に表れる趣味性の高い品でもあります。
ロンバルトの時計がどのようなものか、気になりますね。
凝ったムーブメント、質実剛健に見せかけて、さりげなく宝石が散りばめられているかもしれません。

ロンバルトの懐中時計と対をなすのが、アンゼリカのシガレットケース。
これもロンバルトの財力を示す贅沢品です。

10年以上前、東京都庭園美術館で催された『世界を魅了したティファニー 1837-2007』を訪れました。

アメリカの宝飾界を代表するTiffany&Co.の歴史をたどる展覧会。
目眩を覚えるほどのきらびやかさに、時を忘れて見入ったものです。

「たしか喫煙具の紹介もあったはず」と図録をめくったところ、やはりありました。
18金にダイヤモンドやサファイアで葡萄の房を象嵌した品。
14金にエメラルドやルビーで幾何学模様をあしらったアール・デコ調の品などなど…

同じ美術館で行われた『アール・デコ・ジュエリー -宝飾デザインの鬼才シャルル・ジャコーと輝ける時代-』はデザイン素描中心の展示で、これまた興味深いものでした。
こちらで紹介されたシャルル・ジャコーやブシュロンのデザインの方が、アンゼリカの持ち物(=ロンバルトの趣味)としてはしっくりくるかな?

ジュエラーの技術の粋を凝らした造形。
「手のひらに収まる美術品」を妻に与えられるのはロンバルトの甲斐性でしょう。

(1920年代のティファニーのカタログによると、金に貴石をあしらったシガレットケースは485ドルから販売されていたようです)

愛ゆえにこそ


ロンバルトは決して「自分の身を飾るアクセサリーのひとつ」として妻を磨き立てているのではありません。

愛する人がますます美しくなっていく姿を見たい。
愛する人に美しいものを贈って喜ぶ顔が見たい。
その一心でしょう。
彼の気持ちの底に流れるのは、常に「愛」であることは確かです。

マルギットも本来、こちら側の人間なのです。
その彼女が「年に2枚の着物がやっと」の暮らしに飛び込めばどうなるか。

ロンバルト夫妻を始めとする上流階級の人々の装いを見るにつけ、目に見えぬ「階級」という壁に阻まれたカールとマルギットの悲劇を思うのです。

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野口 留香 noctiluca

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宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
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