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珠玉の台詞が光る『あかねさす紫の花』-大海人皇子(明日海りお)編:「来てしまった」の破壊力

大海人皇子(明日海りお)の「来てしまった」。
中大兄皇子(鳳月杏)の「こんなに私は震えている」。

美しい言葉が並ぶ『あかねさす紫の花』でも双璧。
短い台詞に込められた想いの深さ。
演技巧者の二人が放つ言葉は、千の口説よりも雄弁。
恋する男の繊細さが深く心に染み入り、忘れられない余韻を残します。

ふたつの台詞を通して、Aパターンの個別感想をまとめました。
まずは、大海人皇子(明日海りお)から。

* * *

「あの虎に翼がついたときが恐ろしい」
みりおさん(明日海)演じる大海人皇子の人となりは、中臣鎌足(瀬戸かずや)の台詞に集約されています。
歴史が証明する通り、やがて兄をも凌ぐ力を持つことになる大海人(天武天皇)。
優しげなマスクの下に計り知れない大きな爪を秘めた虎。
「天翔ける猛虎」、これこそ明日海大海人の本質なのです。

優しく温かく、良き夫、良き父であった大海人。
彼を取り巻く状況が一変するのは、最愛の妻を兄に奪われたとき。
尊敬し、慕っていた兄からの酷い仕打ち。
絶望し、苦しみ、のたうち回る姿はみりおさんの真骨頂。

「来てしまった」の切なくも柔らかな響き。
万感の想いがこもった台詞に胸を締め付けられます。
“あの頃から私の心は何ひとつ変わっていない”
そんな言葉が聞こえてくるようでした。

ふと、大海人の肩に乗った紫草の花びらをつまんだ額田女王(仙名彩世)。
出会った日と同じ仕草を見せるかつての妻。
思わずその手を取り、頬を寄せる大海人。

何気ない動作が二人を隔てるわだかまりを押し流したのでしょう。
二人で慈しみ育んだ愛、誰にも汚されていなかった頃の愛が、時空を飛び越えて二人のもとへ戻って来た。
そんな印象を受ける場面でした。
二人の心が手に取るように伝わってきて、息をするのも忘れるほど見入ってしまいます。

束の間、通じたかに思える二人の心。
しかし、もはや額田が大海人と共に生きることはありません。
二人はあまりに遠く離れてしまった。

ぎりぎり張り詰めていた大海人の心の糸が切れたのは、十市を抱き締めた瞬間だったと思います。
額田と歌ったわらべ唄。
決して取り戻すことの叶わないぬくもり。
尊敬し愛していた兄に、愛する妻と娘を奪われる理不尽。
己の幸せを守れなかった不甲斐なさ、自責の念。

大海人の心は、水がいっぱいに満ちた水盤のよう。
最後の一滴が滴り落ちた瞬間、かろうじて保っていた理性がとめどなく溢れ出てしまう。

額田を求めてさまよう大海人が歌う『紫に匂える花』は絶品。
歌というより、魂の発露とも言うべき咆哮。
感情が乗ったときのみりおさんの劇中歌は素晴らしいですね。
虚空に吸い込まれるような「…額田!」の叫び。
ひたひたと蝕まれていく心が、身の内側から溢れ出すような。
ここから一気呵成に攻め上げる終盤までの流れは息つく暇もありません。

「狂ったか、大海人!」を受けての虚ろな笑い。
嘆き、崩折れる額田女王。
呆然と立ちすくむ中大兄皇子。

狂気に囚われたかに見せかけて、毛一筋ほども乱れていない大海人の心。
乱れ髪の隙間から覗く、冷徹なまでに澄んだ瞳。
虎が翼を得たのは、この瞬間だったかと思わせる幕切れでした。

* * *

美貌・実力・キャリアいずれも申し分なく、今や押しも押されもせぬトップ・オブ・トップのみりおさん。
満を持して取り組まれた大海人皇子役で「男役の美」を極められたように思います。
華・色気・佇まい・舞台での居方…
お芝居・ショー共に圧倒的な存在感と輝くような美しさで舞台を牽引するみりおさん。

新鮮なヴィジュアルに期待が高まる次回作『MESSIAH −異聞・天草四郎−』。
さらに年末には舞浜でのコンサートが発表されました。
花組のみならず宝塚全体を引っ張っていく御立場のみりおさん。
次もまた、どのような驚きと喜びを与えてくださるのか…楽しみは尽きません。

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宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
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