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第三の男、ロンバルト(輝咲玲央)│霧深きエルベのほとり

2019年の幕開きと共に始まった『霧深きエルベのほとり』。
いよいよ最終週に突入しました。

小雪のちらつく大劇場から、梅香る早春の東京へ。
数え切れないほど観ましたが、そのたびに新鮮な感動があり、飽くことがありません。

紅さんを始めとする星組と専科の皆さまが魂を込めて作られた舞台。
日々変わるお芝居をつぶさに追えたことは幸せです。

第三の男、ロンバルト


物語の構成上、ロンバルトはかなりの重要人物と言って差し支えないでしょう。
ストーリーへの関与の度合いからいくと、フロリアンに次ぐ位置と考えます。

主人公カールを頂点とするピラミッドなら、第二層にフロリアン、第三層にトビアスとロンバルトが並ぶ感じ。
img-20190222_3.jpg
カール(紅ゆずる)のかつての恋人、アンゼリカ(音波みのり)。
アンゼリカの現在の夫、ロンバルト(輝咲玲央)。

つまり、ロンバルトは「主人公と同じ女を愛する」ことで物語に積極的に関わる男なのですね。
役柄としての重要度の高さからいくと、ロンバルトは『霧深きエルベのほとり』における「第三の男」と言えます。

…との感触を舞台から得た私。

なぜ、結婚披露パーティーでロンバルト夫妻に台詞が無かったのか?


ところが、ある方に「過去公演でロンバルトはシュラック家の結婚披露パーティーにはいなかった」と教えていただき、驚きました。
(S様、貴重な情報をありがとうございます)

するとかつては「湖のレストラン」と、カールと別れたアンゼリカを迎えに来る「白樺の道」のみの登場だったということでしょうか?

「シュラック家のサロンでのロンバルト夫妻の芝居が凄い」
何度も書いていますが、本当に凄いのです。

カールとお歴々の攻防と、同時進行で繰り広げられるロンバルト夫妻の心理劇。
「かつての恋人を見つめる妻」を見つめる夫。
舞台の下手と上手では、動と静、正反対の戦いが繰り広げられているのです。

このシーンの凄いところは、ロンバルト夫妻が終始無言なこと。

身振り手振り、視線、息遣い、相手との距離…
ノンバーバルなコミュニケーションを駆使して、すべての感情を表すのです。

あまりの濃密さに、私など何度めかの観劇でようやく「そういえば、ふたりとも一言も喋ってなかったな~」と思い至った次第。
過去の公演では結婚披露パーティーにロンバルトがいなかったと考えれば、すべてが腑に落ちます。

舞台鑑賞は自分の心の写し鏡


なぜ、このシーンに台詞が無いのか?
完成されたひとつの作品の一部に手を加えれば、全体のバランスが崩れる恐れがある。
ならば、台詞をいじることなくロンバルト夫妻のパフォーマンスに任せれば良いではないか。

この采配は思いがけない効果を生みました。
言葉なくして、言葉以上の情報を観客に届けることができたのです。

無言劇ならば自由度が高い。
なぜなら、役者の身体表現のみの演技は言葉に依存しない分、観客の解釈に委ねられるから。

たとえば…
わざと粗暴に露悪的に振る舞うカールの姿を見るに堪えず、背を向けるアンゼリカ。
そんな妻の様子を目にし、そっと寄り添うように手を差し伸べ、何か言いかけようと口を開くが言葉にできず、力なく下ろした拳をぐっと握りしめるロンバルト。

かすかに歪む彼の表情から何を読み取るか?
それは観客の感性に委ねられます。

物語は自分のフィルターを通してしか観られません。
どんな作品を好むのか?好まざるのか?
舞台の評価は、自分の経験や常識や価値観と照らし合わせることでしか下せません。

誰かの視線、仕草をどう捉えるか?
それは自分のボキャブラリーの範囲でしか想像できないのです。

すなわち私が延々書き散らしている観劇ブログも、まるっきり的はずれな可能性があるのです。
それを全世界に発信するのは、とてつもない蛮勇です。
自分の感覚が丸裸になるわけですから。

無言劇は上田久美子先生の狙い的中か?


閑話休題。
蓋を開けてみれば、最も見ごたえがあった沈黙劇。

万事塞翁が馬。
何が幸いするか分からないものです。
上田久美子先生が狙った効果か。
それとも偶然の産物か。

上田先生の筋書き通りだとしたら、玲央×はるこへの信頼の厚さを感じますね。

細かいことですが、前後のつなぎから言っても「アンゼリカ、パーティーは遠慮しても構わんのだよ」は新しく追加された台詞なのでしょうか?

早く36年前の映像と観比べたいですね~~
タカラヅカ・スカイ・ステージ 番組詳細│霧深きエルベのほとり(’83年花組・宝塚)

炎の愛、水の愛


愛情表現の奥深さでは、カールに匹敵するロンバルト。

カールの愛が激しく燃え立つ炎ならば、ロンバルトの愛はひたひたと静かに心を満たす水。

傷つき疲れたアンゼリカの心を、優しく労り、潤す愛。
このように辛抱強い愛を相手に注ぐには、それなりの人生経験が必要です。

ロンバルトにあって、カールやフロリアンにないもの。
それは「年輪」。
年齢を重ね、場数を踏んできたからこそ分かることもある。
ロンバルトは玲央さんの包容力が存分に活きたお役です。

一方、紅カール。
「旦那に可愛がってもらって、幸福に暮らせよ」
マルギットをフロリアンに託したように、アンゼリカをロンバルトに託す。
愛した女たちを、最もふさわしい相手のもとへ送り出すカールの愛。
カールの目は確かであり、自分の心を殺してまで相手の幸せを願う不器用さがことさら悲しく感じられます。

愛に聡く、敏感であるがゆえに、先を見通してしまうカール。
人一倍繊細な紅さんに重なる部分があります。

何度観ても飽きずに面白いのは、第一の男カール、第二の男フロリアン、第三の男トビアスとロンバルトの愛が複雑に絡み合い、物語に奥行きが出ること。
その日の役者の呼吸、観客の反応により違った仕上がりとなることでしょうか。
演劇は生の芸術ですから、すべての舞台作品に言えることですが、エルベはこの点が顕著です。

全身全霊の紅カールに引きずられるように熱を帯びていく星組の芝居。
千穐楽に向け、さらに深化するエルベの世界を最後まで楽しみたいと思います。

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野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
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