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6つの台詞でひもとく、ロンバルト(輝咲玲央)の心│霧深きエルベのほとり

『霧深きエルベのほとり』面白いですねー。
なにしろ台詞がいい。
噛めば噛むほど味わいが深まる言葉たちに夢中です。
日頃紙媒体を買わない私が、思わず『Le CINQ』を手に取ったほど。

6つの台詞でひもとく、ロンバルトの心


なかでもお気に入りは、輝咲玲央さん演じる上流階級の男、ロンバルト。
主人公カール(紅ゆずる)のかつての恋人アンゼリカ(音波みのり)の夫です。

わずかな登場シーン、わずかな台詞から役の人生を浮かび上がらせる玲央さんの手腕に惚れ込み、ロンバルトの台詞から彼の心をひもといてみようと試みました。
今回はシリーズ第2弾となります。
どうぞお付き合いください。

○ロンバルト編 第1弾はこちら↓
100の台詞よりも雄弁―ロンバルト(輝咲玲央)の芝居力│霧深きエルベのほとり

○フロリアン編はこちら↓
台詞からひもとく、フロリアン(礼真琴)の揺れ動く心│霧深きエルベのほとり

ロンバルトの台詞は全部で6つ。
湖のレストランで交わされた3つ(妻をご存知ですか/アンゼリカ、今日はここでの食事は取りやめにしよう/船乗りと同席するわけにはいかん)は第1弾で取り上げましたので、残りの3つを。

【リューネブルクの白樺の道】
4.アンゼリカ、パーティーは遠慮しても構わんのだよ

【シュラック家のサロン(結婚披露パーティー)】
・なし

【リューネブルクの白樺の道】
5.忘れ物は見つかったのかね
6.よかった。さあ、いつものレストランで食事をしようね

「パーティーは遠慮しても構わんのだよ」に見る、ロンバルトの怯え


湖のレストランでカールと出会い、茫然自失したアンゼリカ。
そんな妻の様子を見て、ロンバルトが心穏やかでいられるはずはないでしょう。
妻の過去の男の結婚披露パーティーに招かれた夫の心中やいかに?

カールと対面したときの妻の動揺。
妻の心はまだ、あの男にあるのではないか?
疑心暗鬼と、妻を信じたい気持ちの板挟みになるロンバルト。

しかし、あくまでも妻へのいたわりの態度を崩さない。
「パーティーは遠慮しても構わんのだよ」
本心を押し隠して、傷つき狼狽する妻を優しく包み込むのです。

“気が進まないなら無理しなくていいんだよ”
“昔の恋人と顔を合わせたくないなら欠席していいんだよ”

妻をいたわる言葉のようでいて、実はロンバルト自身の思いでもあるかもしれません。
自分の眼の前で、これ以上アンゼリカが傷つくのを見たくはない。
なにより、涙をためた瞳で、自分以外の男を見つめる妻を見たくはない。

パーティーの欠席をうながす言葉の裏には、ロンバルトの怯え、不安、そしてカールへのほのかな嫉妬が潜んでいるのです。

「無言」に見る、ロンバルトのためらい


ロンバルト夫妻、最大の見せ場はシュラック家での無言劇です。
沈黙こそ雄弁なり。
ひとつも台詞がないのに、観客は多くの情報をロンバルト夫妻から受け取ります。

似合わない正装で露悪的に振る舞うカール。
アンゼリカにとって、一度は愛した人のそんな姿を目にするのは辛いものです。

カールを見つめ、ときに背を向け、涙を流すアンゼリカ。
そんな妻の姿を見るロンバルトも苦しいでしょう。

夫婦の視線が交わることはありません。
アンゼリカの視線の行く先はカール。
一度も現在の夫へ向けられることはないのです。

しかし、ロンバルトの視線はただひたすら妻に向いている。
これは愛です。

妻の動揺、悲しみ、苦しみ。
すべてを分かち合おうとするように、じっと向けられる視線。

“なにか言葉をかけるべきか?”
“いや、今はそっとしておこう…”

他のシーンではどっしり構えているロンバルトですが、ここではそわそわと落ち着きがありません。
視線はカールとアンゼリカの間を行ったり来たり。

かぼそい背中を震わせ、吹き荒れる嵐をじっと耐えるアンゼリカ。
その痛々しい姿を、そっと見守るロンバルト。
しかし、このときロンバルトの心もまた激しい嵐に翻弄されているのです。

ふたりが見せる無言のドラマは、『エルベ』のハイライトのひとつです。

「忘れ物は見つかったのかね」「よかった」に見る、ロンバルトの安堵


「忘れ物をした」と嘘をつき、カールのもとへ行ったアンゼリカ。
もちろん、ロンバルトにはお見通しだったでしょう。

忘れ物はシガレットケースではありません。
宙ぶらりんになったカールへの愛なのですね。

「よかった」に込められた想い。
文字にすればたったの4文字。
しかし、万の気持ちがこもった4文字。

アンゼリカの苦しみは、カールに誤解を与えたまま別れてしまったことでしょう。
わだかまりが解ければ、アンゼリカの心の中のカールの占める場所が、ロンバルトに取って代わられるのは時間の問題です。

「旦那に可愛がってもらって、幸福に暮らせよ」
カールの言葉通り、アンゼリカはしっかり前を向いてロンバルトと幸福に暮らすでしょう。

「よかった」
吐息混じりにささやかれる安堵。
妻の内で過去が清算されたのを知った男の、心からの声なのです。

「さあ、いつものレストランで食事をしようね」に見る、ロンバルトの優しさ


すべてを見通した上で、妻にかける言葉「いつものレストラン」。
嵐が去り、柔らかな木洩れ日が差すように穏やかな愛の台詞です。

“いつだって自分がそばにいるよ”
“安心して「日常」へ戻っておいで”
「いつものレストラン」には、そんなメッセージが秘められているのです。

ロンバルトの言葉はアンゼリカにとってどれほど心安らぐものだったことでしょう。
「しようね」の「ね」に込められた限りない優しさ。
この瞬間、ふたりはようやく「夫婦」になったように思います。

『霧深きエルベのほとり』に登場する男たちは一様に優しいですね。
カールの無骨な優しさ、フロリアンの献身的な優しさ。
そして、ロンバルトのおおらかな優しさ。

男たちのさまざまな優しさがあふれる台詞の数々。
どうぞ耳を傾けて聴いてみてくださいませ。

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野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。

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