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台詞からひもとく、フロリアン(礼真琴)の揺れ動く心│霧深きエルベのほとり

珠玉の言葉がそこかしこに散りばめられた『霧深きエルベのほとり』。
MY初日観劇後は友人とお気に入りの台詞について延々ヅカトークしました。

とくに心に残るのは、礼真琴演じるフロリアン・ザイデルの言葉。
婚約者を他の男に奪われた彼。
台詞の端々に揺れ動く心が映し出されて興味深いですね。

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台詞からひもとくフロリアンの心


自制の塊みたいなフロリアン。
頑なに心の内を覗かせない彼から、ぽろりぽろりこぼれる本音。

フロリアンの台詞のいくつかをピックアップし、巧みに押し隠された彼の内面をひもといてみたいと思います。

1. 一度散った木の葉を再び元の枝につけて緑に輝くと、君は思うかい?


失われた時は二度と取り戻せない。
愛の無慈悲を鋭く捉える言葉に、彼の達観が読み取れます。

2. ほんとうはカールなんて、僕にはどっちでもいい


フロリアンの目に映るのはマルギットだけ。
カールという人間は単に「マルギットの心を捉えた男」という記号に過ぎない。
フロリアンの中では、カールは同じ土俵に乗っていないのです(この時点では)。

3. あるいは君を愛するかもしれない


愛は変化するもの。
1.同様、愛の真理を表す言葉ですが、使いどころがまずいですね。

『エルベ』を潤色された上田久美子先生の『金色の砂漠』でも同様の台詞があったことを思い出しました。
芹香斗亜さん演じるジャーの言葉です。
「かつて激しく燃えた愛情も、時を経れば穏やかに、兄弟や家族へ向けるようなものに変化することもある」
そんなニュアンスでした。

しかし、これはいけません。
「もしかしたら君を愛するかもしれない」
自分を慕う少女にかける言葉としては不適切にも程があります。

貴乃花と宮沢りえの婚約破談会見を思い出しました。
婚約破棄の理由を聞かれ、「愛情がなくなった」と答えた貴乃花。

そう言われては引き下がるしかありません。
一片の未練も残させない、ある意味優しいかもしれませんが残酷な言葉です。
あまりに人の心の機微に疎い物言いです。

「愛情がなくなった」とは真逆の「君を愛する“かもしれない”」。
これまた酷な言い草です。
真摯な愛の告白に対する返事ではありません。

大人の女性なら「いつか、は来ない」「もしも、は無い」と諦められますが、うら若い少女には思わせ振りすぎます。

シュザンヌ(有沙瞳)を縛り、先へ踏み出させない言葉。
フロリアンがどういった思惑で口にしたかは分かりませんが、彼の青さを露呈する台詞です。

4. 皆で話し合おうじゃないか


フロリアンの「分かってなさ」がモロに出た台詞ですね。
ボロボロに傷ついた女にかける言葉ではありません。
カールやロンバルトならこんなとき、黙って女の肩を抱くでしょう。

シュザンヌも「よくお話をすれば、マルギットはあなた(フロリアン)を愛するようになるかもしれない」と言いますが、一体どういう心理からこの言葉が浮かぶのか、さっぱり分かりません。
「話せば分かる」「心を打ち明け合えば気持ちは通じる」というのでしょうか?

「愛」が心のどこから湧いてくるのか?
「愛」の不思議さ、不確かさを、まだ自分のものとして感じたことがないのかもしれません。

フロリアンを「分かっていない」と書きましたが、正解はないのですよね。
皆が正しいことばかり言ってたら、そもそもドラマは生まれない。
そもそも「正しい愛」などあるのでしょうか?

様々な考えの人間がいて、違う考えの人間と交わるから面白いのです。
「話し合おう」という言葉が刺さる相手もいるかもしれません。
そう言い合ってるフロリアンとシュザンヌの心が結びつかないのも面白いところですが。

揺れ動くフロリアン


4つの台詞からはフロリアンの迷いが見て取れます。
彼もまた、愛に惑い、混乱しているのです。

同じ台詞でも、観る回によって正反対の印象を受けることもあります。
しかし、琴ちゃん(礼)の演じ方が不安定なのではありません。

ちょっとしたコンディションの差、芝居相手との呼吸。
生身の人間が演じるのですから、日々違う人物が生まれるはず。
その日生まれたフロリアンは、前日のフロリアンではありません。

観る側の体調や心理状態にも左右されます。
芝居は役者と観客のコール&レスポンスであり、捉え方に正解などないのです。

フロリアンの台詞ひとつとってみても、『霧深きエルベのほとり』は生の舞台の面白さを存分に味わえる演目です。

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Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
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