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無私の愛、そして献身―フロリアン(礼真琴)の愛の形│霧深きエルベのほとり

礼真琴演じるフロリアンについて気になること。

前回の記事で「フロリアンがよく分からない」と書きましたが、その原因のひとつは「マルギットへの愛の形がどんなものか分からない」ことなのです。
「役者冥利に尽きる役」礼真琴のフロリアン│霧深きエルベのほとり

本当にマルギットを愛してる?


フロリアンに問いかけたい。

本当にマルギットを愛してる?
あなた、カール(紅ゆずる)に嫉妬していないでしょう?

愛していたら嫉妬にさいなまれるはず。
シュザンヌ(有沙瞳)と共に行方不明のマルギットを探し回る最中も、どこか諦め半分のような。

「マルギットがそう望むなら仕方ない」
そんな心の声が聞こえてきそうなフロリアン。
妙に老成した態度。

なりふり構わず騒ぎ立てるのは自分らしくない態度だ。
騒ぎを大きくしては、マルギットやシュラック家にとって不利益だ。

もしもカールが同じ立場ならば狂ったようにマルギットを探し回るでしょう。
フロリアンには愛する女を「何が何でも探し出す」という執念が見えないのです。
それはなぜか?

なぜならば、マルギットの心に自分は住んでいないことを悟っているから。

マルギットを愛しているから、縛りたくない。
彼女が自由を望むなら、叶えてやりたい。

激しい自制と、無私の愛、そして献身。
これもまたひとつの「愛」ではありますが、しかし、あまりに苦しい想いです。
生身の人間がそのような愛の形に耐えられるのか?
いつか崩折れてしまうのではないか?

あまりに辛いから、マルギットがカールと幸せになることを望んでしまう。
愛する人が幸福ならば自分もまた幸福であるという、苦行者のような愛。
フロリアンは自己の愛を「聖なる愛」に昇華させようとしているのか?

激しく求めるだけが愛ではありませんが、彼の若さには不釣り合いな愛の形に思えます。

フロリアンがいつもこんなふうにマルギットに接していたのだとしたら、恋に恋する年頃の彼女にとって、ちょっと物足りなかったのではないでしょうか?
もっとちゃんと自分と向き合って欲しい。
もっと激しく求めて欲しい、と。

フロリアン、爆発する


フロリアンに関しては終始、若いのだからもっと感情をあらわにしなさいよ、と歯がゆく思っていました。
それとも、真正面からぶつかって傷つくのが怖いのか?とも。

しかし、あることをきっかけに彼の印象が変わりました。
シュラック家でのカールの愛想尽かしのシーンです。

口汚くマルギットを罵りながら、手切れ金の束で彼女を打ち据えるカールに、フロリアンの拳が飛びます。

あるいは、女性が辱められているのに傍観することはできない、という騎士道精神の表れかもしれませんが。
冷静沈着なフロリアンが唯一、感情をむき出しにする場面です。

これは今まで抑えに抑えてきた思いが爆発したのだと考えたいですね。
理性より感情が勝る瞬間。

フロリアンは気づいていたのでしょう。
ヨゼフすら気づいていない、カールの本心を。

「カールが身を引くのはマルギットのため」と察してなお、カールを殴る。
殴らずにはいられない。

これは激情です。
マルギットのために怒る。
これこそ「愛」です。

「良かった、これなら大丈夫」と思いました。

カールが本気で痛がるほどの渾身のパンチ。
聖人君子の仮面が外れ、活き活きと血が通い出したフロリアンは、明らかに何かが変わりました。

未熟ゆえに揺れる心が愛おしい


若さゆえ、経験値の低さゆえ、己の心を鎧っていたフロリアン。
感情のタガを外し、カールを殴ったことで、本来の自分を取り戻したようにも思えます。

彼は決して完璧な男ではありません。
カールと出会い、成長したのはマルギットだけではないのです。
フロリアンもまた、違う世界に住む男と濃密に関わることで変わった。

いみじくもカールが言った「マルギットには俺よりふさわしい相手がいる」。

「俺よりマルギットを幸せにする」ではなく、「俺よりマルギットを愛する」でもなく、「ふさわしい」なのがミソです。
確かにフロリアンはマルギットの夫(保護者/庇護者)にはふさわしいかもしれません。

しかし、あの激情に駆られたフロリアンならば、マルギットともう一歩踏み込んだ関係を築いてゆけるのではないか、と淡い期待を抱いてしまいました。

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