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オリバー(麻央侑希)から得た気づき―社会の寛容と、因果応報と、聖なる光│霧深きエルベのほとり

麻央侑希さん演じる船乗りオリバー。
MY初日からずっと気になる存在でした。

なぜ、オリバーが気になるのか?


ぽわんとした喋り方、のんびりした動作、年下の子どもに馬鹿にされてもどこ吹く風。
なにもかも周囲からワンテンポずれている。
最近、エンタメの世界でこういうキャラクターをみることが少なくなりました。

とぼけた味わいで憎めないオリバー。
ひりひりするような恋の物語にあって、一服の清涼剤の役目を果たす彼。
いつの間にかすっかり好きになってしまいました。

ちょっと鈍くて融通のきかないところはあるけれど、オリバーにはそれを補って余りある良さがいっぱいあります。

助けを必要とする人に自然と手を差し伸べること。
人の幸せを素直に喜べること。

「水夫長に頼んでみようよ」
自分を馬鹿呼ばわりするヨーニー(天飛華音)に働き口を与えるため、トビアス(七海ひろき)に取りなしてみたり。

「いいなぁ」
トビアスとベティ(水乃ゆり)の結婚を羨ましがりつつ、祝福してみたり。

純真で無垢な魂。
その言動には聖なる光すら感じます。

ぽわぽわした台詞回しがまったく嫌味にならないのが、まおちゃんの個性。
彼女の根っこにある素直さ、明るさ、邪気のなさが上手く作用しているようです。
(殺無生を演った人とは思えない)

時代の寛容


まかり間違えば、「ぐず」「のろま」「うすのろ」という言葉で片付けられるであろうオリバー。
効率や生産性だけを追い求める社会では、「役立たず」として爪弾きにされそうなキャラクターです。

愚鈍なところはあるけれど、心優しく、朗らかで、いつだって前向きなオリバー。
彼が当たり前に受け入れられていることに、舞台となった1930年頃の「時代のゆとり」を感じました。

以前、似たような話を友人としたことがあります。
落語の世界にもオリバーのような人物が登場します(甚兵衛、与太郎など)。
ちょっと抜けてて、そそっかしくて、いつも騒動を巻き起こす。

『ANOTHER WORLD』の阿呆の喜六(七海ひろき)も同様のキャラクターです。

一見危なっかしい彼らですが、お節介なご隠居さんだったり、面倒見の良い長屋の連中の助けで、自立して生きていける。
「互助」が機能しているんですね。

フランクフルト号の船員たちに、同じ懐の深さを感じました。

海は一歩間違えば死に直面する厳しい世界。
だからこそ仲間との信頼と連携が何より大切。

ともすれば足手まといになりそうなオリバーですが、彼が生き延びてこられたのはカール(紅ゆずる)を始めとする仲間たちのサポートも大きいでしょう。
船は家庭であり、水夫仲間は家族、そして命綱でもある。
心優しき海の男の一員として、オリバーは立派にその役割を果たしているのです。

現代はどうでしょう?
オリバーのような人物や社会的弱者にとって、生きやすい世の中か?

多様性に対する寛容はあるか?
互いの違いを受け入れ、共存できているか?

オリバーを通し、「社会の余裕」について考えさせられました。

善き人が果報を得る


オリバーについて、ひとつ印象的なシーンがあります。
シュラック家近くの水辺で釣り糸を垂れる船乗りたち。

オリバーだけが大魚を釣り上げる。
これには深い意味があるように思います。

善き人が果報を得る。
因果応報に則ったシーンと感じるのは考えすぎでしょうか?
これには何らかの教訓が潜むように思います。

また、ビア祭りの最中、オリバーは女性にモテモテです。
女は男を見抜くのでしょう。

オリバーとムイシュキン、純真と無垢


オリバーに注目するうち、ふと上田久美子先生の『神々の土地』が思い浮かびました。
愛月ひかるさん演じるラスプーチンの取り巻き、聖痴愚の二人(花音舞・瀬戸花まり)を覚えておいででしょうか?

「佯狂者」「聖愚者」とも呼ばれる「聖痴愚(ユロージヴイ/ユロージヴァヤ)」。
ラスプーチンと共に、強い印象を残す役でした。

○関連記事↓
ラスプーチンが動けば、物語も動く―愛月ひかるが果たした役割とは│神々の土地

愚者とされる存在にこそ神が宿る。
私がオリバーに感じた光、聖なる輝きと無関係とは思えません。

同じロシアの物語、『白痴』のムイシュキンにも通じるところがあります。

純粋無垢な魂、オリバー。
彼の存在から得た気づきが沢山ありました。

見る角度により様々な表情が現れる『エルベ』。
観れば観るほど面白さが増す作品です。

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野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
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