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七海ひろき、ダンケシェーン!―「足るを知る者は富む」トビアスとベティの愛の形│霧深きエルベのほとり

『霧深きエルベのほとり』は、これ以上ないほど単純な物語です。
複雑な人間関係もなければ、大事件が起こるわけでもない。
ビア祭りの一週間に男と女が出会い、恋に落ち、ある者は成就し、ある者は別れる。

マルギットを挟んだカールとフロリアンの三角関係。
アンゼリカを挟んだカールとロンバルトの三角関係。
そこにもう一組のカップル、トビアスとベティが加わります。

トビアス(七海ひろき)はカール(紅ゆずる)の恋愛模様に直接関わることはありません。
しかし、『エルベ』の物語において非常に重要な役割を果たします。

トビアスとベティ(水乃ゆり)は、カールとマルギット(綺咲愛里)の合わせ鏡なのです。

足るを知る者は富む


珠玉の言葉が観客を魅了する『エルベ』。
とりわけ好きな台詞は、カールの妹ベティの「あたしは貧乏でも、兄さんや友達が元気で笑っとって、気兼ねのいらん人のお嫁さんになって、今と同じぐらいで暮らせたら幸福だ」。

「結婚は生活レベルが同じ相手と」と語るベティ。
マルギットとの対比が鮮やかです。

ベティの素朴な言葉の内には、ひとつの真実が潜んでいます。
価値観、社会常識、金銭感覚…
生まれ育った環境が同じならば、さほど乖離はないでしょう。

自分たちを取り巻く社会への共通感覚、共通認識。
他人と共同生活を送る上で、これらの一致は重要です。
「愛さえあれば」と言いますが、「愛だけ」では長続きしません。

ベティは地に足の着いた、賢い女の子です。

足るを知る者は富む。
(満足を知る者は、金銭的に貧しくても精神的には豊かである)

身の丈に合った幸せをごく自然に求められるベティとならば、温かく心安らぐ家庭を持てるでしょう。
トビアスが早々にモーションをかけるのも納得です。
「そんな相手がいるのかい」
「いないさ!」

カールとマルギットが出会い別れたのと同じ一週間で、出会い結ばれたトビアスとベティ。
愛の明暗をくっきり描き出す脚本が見事です。

トビアスとベティはきっと幸せに暮らすでしょう。

七海ひろき、ダンケシェーン!


女のために生き方を変えたトビアス。
その軽やかさ。
カイちゃん(七海)の飄々とした持ち味にぴったりです。

男役ラストステージにちゃんと相手役がいて、あまつさえ結婚式まで挙げられる。
男役冥利に尽きますね。

そして、晴れ晴れとした銀橋ソロ。
「ダンケシェーン!」
なにひとつ思い残すことなくやりきった。
男役を全うした。
そんなカイちゃんのタカラジェンヌ人生に重なる愛の歌です。

「それでは、諸君の安全な航海を祈る!じゃあみんな、あばよ!」
なんて温かな餞の言葉でしょう。

「トビアス、おめでとう!」
組子たちの祝福の声に送られ、舞台を後にする。
座付き作者ならではの粋な演出。
ファンの方も嬉しいでしょう。

男役への愛、宝塚への愛、ファンへの愛。
今まさに完全燃焼しようとするカイちゃんは、どこまでも爽やかな男役さんです。

まだ「卒業おめでとう」は言いません。
カイちゃん、千穐楽までめいっぱい男役を楽しんでくださいね!

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宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
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