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「人材豊富過ぎる」宙組の贅沢な悩み―個人評(芹香/愛月/凛城/澄輝/風馬)│異人たちのルネサンス

若き日のレオナルド・ダ・ヴィンチの淡い恋を、誰もが知る名画の誕生秘話に絡めたストーリー。
着眼点が面白いですね。
MY初日は「そうきたかー」と素直に驚きました。

作者は田渕大輔先生。
デビュー以来、6作品中なんと4作が宙組。
こんなことってあるんですね。

『異人たちのルネサンス』は画家たちのエピソードやパッツィ家の陰謀など史実を上手く織り交ぜ、綺麗にまとまっています。
が、いかんせん若手スターさんたちを活かしきれておらず、もったいないですね。

特に、レオナルドの工房の仲間たち。
ペルジーノ(澄輝さやと)、ボッティチェリ(蒼羽りく)、クレディ(和希そら)、フェルッチ(留依蒔世)、シニョレッリ(瑠風輝)。
全員新人公演主演経験があり、バウホール主演を果たした方もいます。

なのに…もったいない。

率直に言えば、居ても居なくても作品が成立するパート。
物語の大筋に関わり、主人公の運命を動かす役どころではありませんよね?

個々の役をじっくり観れば、それぞれに自分の色を出そうと工夫してらっしゃるのは分かります。
しかしながら、ひとりひとりの役割が薄く、「これ!」という見せ場に乏しい。
演技に優れ、歌唱に優れ、舞踊に優れたスターたちが単なる「賑やかし」に終始するのは、非常にもったいない。

主人公の人生に積極的に関わる人々だけピックアップしても、これだけの役があります。
ロレンツォ、グイド司教、ジュリアーノ、パッツィ、ヴェロッキオ、サライ…
それでもまだ役が行き渡らない。

90分で80人にまんべんなく場を与えるのは難しいにしても、せめて一作品の主役を張った経験のある生徒さんは、もう少しなんとかならなかったものでしょうか?

「人材豊富過ぎる」「層が厚過ぎる」
贅沢な悩みですが、上級生・中堅・下級生に至るまで優秀な生徒さんがひしめき合い、活用しきれてないのが宙組の現状と感じます。

* * *

○ロレンツォ・デ・メディチ(芹香斗亜)
世界を意のままに操るにふさわしい知力と胆力と政治力を持った男。
美を愛し、積極的に芸術を庇護した偉大な支配者。
とても好きなキャラクターです。
キキ(芹香)ロレンツォは、変に情に走らず冷徹・傲慢に徹したのが私好み。

ラストの不死身っぷりには笑いました。
「生きてたの!?」みたいな。

白い貴公子然としながらも、黒く、サディスティックな役を演じると格段に色気が増すキキちゃん。
ロレンツォはハマり役ですね。
カッコよかったです。

○グイド司教(愛月ひかる)
無垢な少女を飼い慣らし、メディチ家を内側から崩壊させようと企む野心家。

主演の『SANCTUARY』を含め、田渕作品の愛ちゃんはいつも魅力的。
得体の知れなさ、底知れない無気味さ、権力への執着。
作品世界を丸ごと飲み込むような存在の大きさはさすが。

黒幕が弱いと作品全体がスケールダウンしますので、愛グイドの起用は正解でした。

○フランチェスコ・パッツィ(凛城きら)
歴史に名高い「パッツィ家の陰謀」の中心人物。
堅実で、実存感のある芝居が舞台全体に厚みを与えます。
佇まいに壮年の色気が漂うのが何より。

見せ場はサライを買収するシーン。
言葉は優しくとも、拒否すればどんな目に遭わせるか分からないと思わせる酷薄さ。
芝居巧者ぶりを遺憾なく発揮しました。

○ペルジーノ(澄輝さやと)
無言でサライの肩を抱き、教会を去る姿にペルジーノという男のすべてが表れていたように思います。
温かく懐の深い、工房の兄貴分。
好きなシーンです。

○酒場の歌手(風馬翔)
エビちゃん(綾瀬あきな)とのアクロバティックなダンスが凄かった!
歌と踊りのインパクトが強すぎて、パッツィとジュリアーノの密談に意識が届きにくいのが玉にキズ。
今回ご卒業の翔さんのシーンですから自然と観客の注目も集まります。
この構成は上手くないです。

* * *

次作『オーシャンズ11』は男役さんの役が沢山ありますが、人材過多の根本解決にはなりません。
一刻も早く、生徒さんひとりひとりが持てる力を存分に発揮できる環境が整うことを切に願います。

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コメント

賛成です

noctiluca様

こんばんは。
「異人たちのルネサンス」は1回しか観劇できなかったのですが、思い出しながら「うんうん」とうなずき同意しながら拝読いたしました。

1回だけでしたので目が足りず、工房の仲間たちなど見逃してしまったところが多かったです。
noctiluca様の仰るようにもったいないですし、お一人ひとりの見せ場があるとよかったと私も思います。

そして愛ちゃんのグイド司教について
>黒幕が弱いと作品全体がスケールダウンします
というお言葉、まったくもってそう思います。
愛ちゃんの存在感は大きく、劇場の空気が変わり緊張感が高まるのを感じました。

「異人たちのルネサンス」は短い中でまとまっていてオリジナル作品としてはよかったと思うのですが、宝塚はスターシステムがあり多くの生徒さんがいて、ただいい脚本を書くだけではダメで、難しいとも感じました。

Re: 賛成です

ヴィスタリア様

こんばんは。
ご賛同いただき、ありがとうございました。

問題なのは、工房の仲間たちが(今回たまたま5人でしたが)5人であっても3人であっても2人であっても大勢に影響がない、という点だと思います。
なぜなら、個々のキャラクターに役割が割り振られていないからですね。

『レオナルドと「その仲間たち」』のくくりなので、何人居ても劇中での役割は同じ。

生徒さんたちがそれぞれにご自分なりの色を出そうと工夫されているのが見て取れるだけに、もったいないなぁ~と思ってました。

私も『異人たちのルネサンス』はテーマがはっきりして、よくまとまった話だと思います。

しかし、お芝居で80人をフルに使うのは難しいですね。
ショーならば人海戦術で豪華に見せることが売りとなりますが。
小劇場公演に佳作が多いのは、時間に余裕があること+人数が適正であることが理由のひとつであると思います。

愛ちゃんの個性は他に代えがたいですね。
『黒い瞳』以降、他組にご出演され、どのような色を添えてくださるか楽しみです。
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プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
◇更新情報はこちら◇
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