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パブロ(暁千星)とフェリックス(風間柚乃)―当たり前に存在するひとつの愛の形│I AM FROM AUSTRIA

パブロ(暁千星)とフェリックス(風間柚乃)の結末。
宝塚における愛の表現のターニングポイントと言ってよいでしょう。

男と女が出会って恋に落ちるのと同じように、男と男が出会って恋が始まる。
そこに何のエクスキューズもないことに新鮮な感動を覚えました。

暁千星と風間柚乃の芝居に唸る


「大切な人を見つけた、セニョール・フェリックス・モーザー」
満場の中、高らかに宣言するパブロ。
一瞬のためらいをみせつつ、やがて彼を受け入れるフェリックス。

印象的だったのは、パブロが真正面からフェリックスを抱きしめる瞬間。
力強い抱擁に息を呑むフェリックス。
彼が感じた胸の高鳴りが、私の心にもしっかり届きました。

この時点でふたりの仲はどのくらい深まっていたのでしょうか?
舞台から受ける印象では、ある程度までは進んでいたように思います。
少なくとも「フェリックスの気持ちもパブロに傾いている」と言えるほどには。

しかし、それからどうなるか?
フェリックスの心を想像してみました。

パブロが自分に一目惚れをした。
自分も満更ではない。
でも、この先はどうなる?
自分たちはどこへ向かうのか?
パブロは何を考えているのか?どうするつもりなのか?

その答えが出たのが舞踏会のシーン。
パブロの宣言により、恋の方向性が定まりました。

人気サッカー選手であるパブロが、世界に向けて「フェリックスを愛している」と発信する。
これは彼自身のカミングアウトでもあります。
その決断と覚悟。

パブロの愛は真実であり、フェリックスはそれを感じ取った。
だから、フェリックスはパブロの気持ちに応えた。

フェリックスの不安や迷いをひとつひとつ解きほぐそうとするように根気強く愛撫を続けるパブロ。
固かった表情が次第にほどけ、おずおずとパブロに応えるフェリックス。
しっかりと受け止め、さらなる熱量で返すパブロ。
その姿勢に、この先ふたりの間に何が起ころうとも真摯に向き合い、問題を乗り越えていくだろうことが容易に想像できました。

この間、台詞は一切なし。
しかし、ふたりの間にどんな感情の動きがあったかは、互いに向ける視線や表情、仕草を見れば明らかです。

愛のキャッチボールの中、ふと、何かの確信を得たように明るい笑いを浮かべるフェリックス。
ふたりの心が溶け合い、ひとつの愛が生まれる瞬間が余すところなく伝わる、こまやかな愛の表現に唸りました。

特に、幕が下りきるまでの短い時間でフェリックスの心の変化をきちんと表したおだちん(風間)の芝居には恐れ入りました。
巧い!

パブロの宣言が意味すること


魅力的なキャラクターいっぱいの『IAFA』。
なかでも心惹かれたのが、ありちゃん(暁)演じるパブロ・ガルシア。

フェリックスをリードするパブロ。
ここまで強く、匂い立つような男役の色気を、ありちゃんに感じたのは初めてです。
いつの間に、こんなにもエレガントな紳士を演じられるようになったのか?
男役の色気=包容力であると再認識しました。

以前の記事にも書きましたが、パブロの人柄を示すふたつの台詞が好きです。
「エマ、好きな人がいるんでしょ?」
「僕は君の味方だよ」
美園さくら、満開になる!+キャスト個別感想(光月/鳳月/風間/夏月/輝月/暁)│I AM FROM AUSTRIA

他人を包み込む優しさはあるが、決して必要以上に踏み込まない。
繊細な心の持ち主、パブロ。
また、非常に怜悧な一面も魅力です。

パブロは舞踏会の宣言で三つの目的を果たしました。

ひとつめは、愛する人を守ること。
サッカー界の花形である自分は常に人目にさらされている。
フェリックスとの関係を「スクープ!」という形で汚されるのは避けたい。
ならば、先んじて自分の口から宣言してしまおう。

ふたつめは、エマの恋の後押し。
自分には愛する人がいるので、エマとは結婚しない。
ジョージとお幸せに。

みっつめ、これはパブロにとって最も重要な意味を持っていたかもしれません。
先程も書いた“カミングアウト”です。

ひとつめとも通じますが、望まぬ形でアウティングされるより、自らの手でクローゼットの扉を開けることを選んだ。
これは彼の尊厳の問題です。

ナブラチロワの頃とは時代が変わったとはいえ、スポンサーへの配慮などもあったでしょう。
パブロほどの選手ならば、あの宣言は彼の一存ではなく、エージェントらと協議を重ね、慎重に行われたことと思います。
決して一時の激情にかられての行為ではないのです。

その決断の重さ。
だからこそ、フェリックスが「否」と言わないほどに自分に気持ちが傾いているという確信を得ていた、と推察できるのです。
そして、パブロは一世一代の公開告白に踏み切った。

断られない保証があったから愛を告げる。
これは決してパブロの保身ではありません。
すべてはフェリックスを守るためです。

フェリックスの答えが「否」だった場合、心ならずも彼が世間の好奇にさらされてしまう。
そもそもフェリックスが「否」を告げようにも、衆人環視の中、意志薄弱の傾向がある彼にそれができるはずがない。
愛する人に無用な苦しみを与えるのはパブロの本意ではないでしょう。

当たり前に存在するひとつの愛の形


聞くところによると、ウィーン版では彼らはカップリングされないとか。
パブロとフェリックスのエピソードは宝塚版独自の設定なのですね。

ふたりの描き方についてはウィーンサイドからかなり細かい要求があった、とも。
それが真実ならば、表現の繊細さに合点がいきます。

同性同士であることに取り立てて言及せず、当たり前に存在するひとつの愛の形として描写する。

これはありちゃんとおだちんの力によるところが大きいですね。
彼女らは自分たちが演じる役をよく理解しています。
宝塚という特異な集団の中で、どのように演じるか、どこまで演じるか。
緻密な計算の上に成り立つ、パブロとフェリックスだったのです。

目に見えぬ制約をクリアし、ひとりの人間として舞台に息づかせる。
作品と役への敬意が為せる業でしょう。
それゆえ、深く観客の心に刻まれたのです。
いいお芝居をみせていただきました。

ありちゃん、おだちん、月組の皆さま、齋藤吉正先生。
ありがとうございました!

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Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
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宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
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