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「トート(死)」とはなにものか?-珠城トートとギリシャの神々│エリザベート

宝塚版『エリザベート』に関する3つの疑問。
(1)「黄泉の国」とはどこか?
(2)「トート」とはなにものか?
(3)トートとエリザベートはどこへ行くのか?

今回は(2)の「トート」とはなにものか?について書きます。

* * *

(2)「トート」とはなにものか?

今まで10人のトップスターが演じた宝塚版トート。
通常の作品と違い、概念である「死」の役には実体と生活を伴う「人間」には当然備わっているべき情報が一切ありません。
(トートの役作りについて、詳しくはこちら→「父なるトート、母なるトート」圧倒的な力強さと包容力を併せ持つ珠城トート│エリザベート
つまり、いかようにも作り込むことができる。
演じ手の解釈により十死十色のトートが生まれます。

観客も「私は○○さんのトートが好き」。
好みの差こそあれ、優劣・正誤はありません。
ちなみに私は(映像で観たのみの)一路トートの在り方が一番好みです。

「どのトートが好きか」は、その方にとっての「“トート”とはなにものか」の答えでもあります。

今回の月組『エリザベート』のトート(珠城りょう)から受けた印象は「シシィの魂の伴侶」でした。
(詳しくはこちら→珠城りょう×愛希れいか、魂を分け合ったトートとシシィ│エリザベート

それはさておき、観劇しながら絶えず頭の中に浮かんでは消える思いがありました。
すなわち、「“トート”とはなにものか?」

宝塚の舞台で「死」の概念そのものを主役に据えることはできません。
(少なくとも大劇場公演では。バウホールなら可能かも)
したがって、便宜的に「トート」にヒトの形を与えた。

では、トートはどこまで「人間」に近づけてよいものなのか?

超自然的な「死」が、たったひとりの人間に心乱される図が不思議で…
「死」が生き生きと(?)「愛(生)」を謳い上げるのが、いまいちピンとこず。

「死」は静かに迫りくるもの、または激しく奪うものというイメージから抜け出せなかったのですね。
「死」は人間と親しいものではなく、超越するものである。

結局、私がトートという役に対し抱えていた長年のわだかまりは、ここに尽きるように思います。
違和感の一番の原因はトートの「人間らしい感情、ぬくもり」だったのです。

もちろん、トートを演じる生徒さんの熱演は素晴らしい、楽曲も最高、無駄のない筋運びは面白い。
しかし、トートをどう捉えればよいのか自分の中で迷いがあったのです。
作品そのものは楽しみつつも、なんとなく釈然としないまま『エリザベート』の舞台を観ていた私。

* * *

前回の記事で「“黄泉の国”はどこか」と考える内に、もうひとつの考えがひらめきました。

キーワードは、ギリシャ神話。
『新約聖書』の中の「ハデス」という言葉が「黄泉」と訳される場合がある。
「ハデス」はギリシャ神話の冥界神ハデスに由来するものである。
このことから新たな連想が働いたのです。

ご存じの通り、神話の神々はとても人間臭いですね。
(一部の神に限った話ですが)わがまま、嫉妬深い、好色、怒りっぽい、理不尽…
人間の女に横恋慕して騒動を巻き起こしたりして。
子どもの頃は「これが神様??」と思いつつ、児童向けの本を読み進めたものです。

神話の神々は何かに似ています。
そう、トートです。

『エリザベート』における「死(トート)」の在り方に対する疑問が氷解したのは、このとき。
ハデス神がトートに近しいものであった場合、宝塚版『エリザベート』のトートの人間臭さは納得がいく、と。
(ハデスは冥界を統べる神であって、「死」そのものではありませんが)

人間の女(エリザベート)に魅入られたトートが、彼女を手に入れるため積極的に人間界に関与する。
であれば、トートは若々しい美青年の姿をし、感情を露わに人間に迫ってもよいのです。

ギリシャ神話でいえば「レダと白鳥」「エウロペと牡牛」のように、超自然的な存在が姿を変えて人間と恋をする。
そうか、こういう観方をすればよいのか、と腑に落ちました。

さらに進んで、こんな考えもできます。
全能の神は人間の女に近づくため鳥や動物に姿を変えた。
しかし、『エリザベート』の場合、主体は彼女にある。
トート(死/安息/自由/解放)は、エリザベートが欲したから出現した。
その望む姿で。
であればこそ、トートは恐怖を呼び起こすような死神ルックや獣などの姿ではなく美青年の姿として現れた。

シシィの心に共鳴するトート。
するとやはり、珠城トートと愛希シシィは「分身」「鏡像」であるとの結論に落ち着きますね。

黄泉がどーの、ギリシャ神話がどーの、あちこち回り道をしましたが…
どの道筋を通っても、結局同じゴールにたどり着いたことに我ながら驚いています。

もちろん、結論ありきではなく、思い浮かんだことを芋づる式に引き出したら、最終的に同じところに着地したのですが。
山梨側から登っても、静岡側から登っても、富士の頂上はひとつ、という感じでしょうか。

ともあれ、トートに対する疑問「“トート”とはなにものか?」に決着がついて、すっきりしました。

※(3)トートとエリザベートはどこへ行くのか?に続く。

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