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「義」の人、鈴木重成(綺城ひか理)に称賛を惜しまず│MESSIAH −異聞・天草四郎−

『MESSIAH −異聞・天草四郎−』。
とりわけ心に残った人物は、山田右衛門作(柚香光)、松平伊豆守信綱(水美舞斗)。
そして、綺城ひか理演じる鈴木重成。

己の欲望や心のままに振る舞う人物よりも、本心を押し隠し、葛藤を抱えながら生きる人物に惹かれる傾向のある私。
鈴木もそんなひとり。

幕臣でありながら、圧政に苦しむ民の心を解し、陰ながら寄り添った男。
かと言って、民の側に肩入れしすぎることなく、己の職分を全うする。

板挟みの苦しみもあったでしょう。
しかし、その時々で己の為すべきことを探り、悩みながらも確実に為す。
清廉でまっすぐな人柄がうかがえます。

「義を見てせざるは勇なきなり」
そんな言葉が浮かびました。

清廉、実直、篤実…
あかちゃん(綺城)には、義侠心あふれる役がよく似合います。

口数は少ないけれど、控えめな笑顔の奥に優しいぬくもりを感じさせる。
穏やかさと、落ち着きと、知性が同居する男。
決して派手ではないけれど、いつの間にか心の深くにじわりじわりと入り込み、忘れられなくなる。
不思議な魅力の男役さんです。

なにしろ声がいい。
太く、まっすぐ、よく通る声。

声に「正しさ」があります。
清潔で、確乎たる意志を感じさせる声。
彼の行いは「信念に起因するものであろう」と観客を納得させうるだけの力を持った声。

声がいいのは役者にとって大きなアドバンテージです。
良しにつけ悪しにつけ、その行動が「揺るぎない信念に基づくものである」と受け止められれば、観客は登場人物に感情移入できます。
静かなる炎を燃やす鈴木の姿に、胸打たれた方は多いのではないでしょうか?

* * *

実のところ、鈴木の登場シーンはさほど多くはありません。
しかし、なぜこれほどまでに彼の姿が私たちの心に焼き付いているのか。

他者の口から語られる彼の姿。
原城の焼け跡で折り重なるように倒れていた男女の下から一枚の絵を持ち帰ったこと。
身の危険を顧みない行動に、島原の民へ寄せる想いがうかがい知れます。

一番の衝撃は、天草四郎(明日海りお)により伝えられた「矢文」の一件でしょうか。
その瞬間、ぶわっと鳥肌が立ちました。
鈴木!あなたって人はどんだけ…!

さまざまな立場の人の証言により、立体化する鈴木の姿。
淡い色彩の層が幾重にも折り重なって、次第に鈴木重成という男の実像が浮かび上がってくる。
そんな思いがいたしました。

* * *

四郎ら一揆軍の蜂起により、いよいよ深まる鈴木の煩悶。
山田を通して、農民に棄教を迫り、投降を促す伊豆守。
おとなしく従えば、悪いようにはしない。
ただし、条件は「四郎の首級」。

そうでもしなければ場が収まらない。
鎮圧の証として形に残るもの、幕府への手土産が必要だ。
伊豆守の言外のメッセージは、その場にいる誰にも届いたでしょう。

山田の苦しみ、伊豆守の苦しみ、鈴木の苦しみ。
それぞれの思惑が静かに煮え立つこの場面。
観客の胸に、ずしりと重くのしかかります。

刻限の3日目。
「来なかったな」
来るはずがありません。

3万7千の民の生命と、ただひとりの生命を天秤にかけさせる。
人に強いるには、あまりに非道な決断です。

伊豆守と鈴木の胸三寸は、たがうことはないでしょう。
彼らの務めは、キリシタンを鎮圧し、幕府の威信を守ること。
情に流れることは許されません。

* * *

いよいよ総攻撃。
民を救わんとする文を書いたその手で、民を斬らねばならぬ無情。
落城の瞬間、光に包まれ天へ昇る四郎と、闇に溶け地に崩れ落ちる鈴木の対比。

己の無力を嘆くように濡れた顔を歪め、食いしばった歯の隙間から声なき叫びを上げる鈴木。
憤激、憎悪、絶望、哀惜…さまざまな想いがないまぜになった表情。

タカラジェンヌがこんなにもむき出しの感情をさらけ出すことがあるなんて。
全身から苦悶の炎が立ち昇るような無言の慟哭に圧倒されました。

この場の修羅をすべて背負わされた鈴木。
その重いシーンを彼に担わせること。
原田諒先生の鈴木重成という人物への思い入れと、演じ手であるあかちゃんへの深い信頼を感じました。

* * *

忠、義、信、篤、仁、徳…
鈴木に対して浮かぶ言葉の数々。

先に「義を見てせざるは勇なきなり」と書きましたが、己を顧みず、進むべき正しい道を選ぶ彼の姿には、とりわけ「義」の文字がふさわしいように思います。

「義」の人、鈴木重成。
期待に応え、与えられた役を自分のものにして演じきったあかちゃんには称賛を惜しみません。

○関連記事はこちら↓
父と子の物語、芹香斗亜と綺城ひか理について│MY HERO観劇記(2)
そこにあるのは、ただ「美」のみ│BEAUTIFUL GARDEN−百花繚乱

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