2018/11/13/Tue
「新しい珠城りょう」の出現│エリザベート
まもなく大千穐楽を迎える月組『エリザベート』。初日明けてすぐの土曜日、幕が開いたときのただならぬ緊迫感は鮮明に覚えています。
「『エリザベート』とは、こんなにも演者に緊張を強いる演目なのか」と。
一分の隙もなく張り巡らせた糸。
わずかでも触れれば、ぷつりと切れてしまう。
息をするのもはばかられる静けさの中で、ゆるゆるとトートが歌い始めます。
珠城トートはどんなアプローチで攻めてくるのか?
どきどきしながら待つ私の前に意外な姿が現れました。
一音一音、慎重に当ててくるような歌い方。
作品の持ち味と相まり、厳粛な雰囲気をもたらします。
繊細なガラス細工のようでありながら、重厚な奥行きを感じる舞台。
登場人物の心情に沿うメロディー。
BGMであり、セリフであり、ときには装置にもなる、楽曲が果たす役割の大きさ。
つくづくよく出来た演目です。
* * *
翌週、風間ルドルフを観に、再び大劇場へ。
幕開きで感じたのは「こなれ感」。
演者が作品世界に馴染んでる。
月組の『エリザベート』に血が通い、舞台が生き生きと動き出した。
なによりも珠城トートの変化に驚きました。
トートがものすごく大きく見える!
舞台を覆うほどの存在感は、回数を重ね「珠城りょうのトート」が確立された自信の表れでしょうか?
トートを自分のものにし、トートとして生きている。
そんな印象を受けました。
* * *
シシィへの恋に身を焦がす若き黄泉の帝王。
氷の中に燃え立つ炎。
トートの姿に「私の知ってる珠城りょう」が感じられず、それが新鮮でした。
今までと違う「新しい珠城りょう」の出現。
様々な役を演じてこられた珠様ですが、まだこんな顔も持ってらしたのかと。
珠様本来の男役のバリエーションにあったのか、それともトートによって新たな一面が引き出されたのか。
「死」そのものであるトートを演じた経験が、「死」と背中合わせの剣豪宮本武蔵を演じるのに、どのように活きてくるのか。
次回作『夢現無双』が一段と楽しみになりました。
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