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珠城りょう×愛希れいか、魂を分け合ったトートとシシィ│エリザベート

非公開コメントをくださったw様へ
本記事コメント欄にお返事を差し上げました。お手数ですが、そちらよりご確認くださるようお願い申し上げます。

* * *

数えるほどしか宝塚版『エリザベート』を観たことのない私ですが、回数を重ねるごとに、奥深い迷路に足を踏み入れたような思いが深まります。

知れば知るほど「解らない」。
「トート(Tod)」って何?

言葉通りならば「死」ですね。
「死」の概念の具象化・擬人化は定番の手法ですので理解できます。
問題はその先です。

「死」は誰にでも平等に訪れるもの。
人間の事情にはお構いなし、粛々とその命の灯を消し去るもの。

ところが、舞台上のトートは一歩踏み込んで、人間に「恋」をし、「愛」を抱いてしまう。
なぜ?

初演雪組の映像を観たときは、舞台を覆う緊迫感に、ただただ圧倒され。
初観劇となった2016年宙組では、「生の『エリザベート』を観ている」という興奮で物語を噛み砕くところまで至らず。
今回ようやく腰を据えて、この迷宮を攻略する足がかりを掴むことができたのです。

* * *

仮死状態に陥った少女シシィ(エリザベート)の命を永らえさせたトート。
本来、平等であるはずの「死」が、人間の寿命に手心を加える。

どうして、トートはあのままシシィを連れ去らなかったのか。
彼女の命の煌きが、あまりにまばゆかったから?
「死」が「生」に魅入られるなんてことがあるのでしょうか。

「ただの少女のはずなのに」
トート自身が述懐する通り、いままで無慈悲に命を取り上げてきた「人間」のひとりに過ぎないシシィに、なぜ心を奪われたのか。

そもそも、「死神」に「心」や「感情」はあるのか?
「恋」や「愛」や「情」の源となる「心」が。

トートが「死」の擬人化であることは理解していましたが、あまりに「人間臭い」トートに違和感を拭えなかったのです。
万物の「命」と「死」を司るべき「死(トート)」が、たったひとりの人間の女にかかずらってる。

絶対的な支配者である「死」の存在が矮小化されたような。
あえて卑俗な言い方をすれば、「黄泉の帝王ともあろう者が女の尻を追っかけ回してる」という感じがするのですね。

私自身『エリザベート』という作品を観始めてから日が浅く、思い入れが少ない分、好き勝手言えるのですが。

もちろん、実際に観た『エリザベート』の舞台の出来とは、まったく別の次元の話です。
トートとシシィの恋愛関係に重きをおいた宝塚版の設定についての考えです。

* * *

エリザベートマニアの連れ合いに訊いてみました。
「トートってなんなの?」「なんなの?ってなんなの?」という問答の末。

・長く欧州を支配したハプスブルク帝国の象徴がエリザベートであること。
・ハプスブルクを終焉へ導く時代の空気、それがトートの姿を借りて表されていること。

ざっとこんな風に教えてくれました。
この構造は、すっと腑に落ちます。

舞台は先入観なしで観たいので、極力情報から目と耳を遠ざけている私。
そのため小池修一郎先生がどのような思惑で宝塚版のトートを描かれたのかは知りません。

いままでの『エリザベート』の観たままの印象は以下の通りです。

初演雪組は「死」の大いなる翼でシシィを包み込み、黄泉の国へ連れ去るトート。
トートとシシィの間には一定の距離を感じました。
あくまでも「異質」な者同士という関係が透けて見える。
それが舞台に鋭く張り詰めた空気をもたらし、結果、作品全体の完成度を高めていたように思います。

2016年の宙組は、人間に近い感情の動きを強く感じるトート。
熱く激しい愛でシシィを求め、彼女を巡ってフランツ・ヨーゼフと争う『最終答弁』のシーンは見応え充分。
宝塚的スタンダードな三角関係のドラマを観る面白さがありました。

* * *

では、今回の月組公演のトートは?
これは前述の2作品とはまったく異なるトート。
愛希れいか演じるシシィと非常に「近い」トートという印象を受けました。

物質的な距離ではなく、「似ている」感じ。
双子のように、もともとひとつだったものが分かれてしまったような。
シシィが綱渡りに失敗して木から落ちたとき、はずみで飛び出してしまった彼女の魂の一部みたいなトート。

イマジナリー・フレンドというのでしょうか?
彼女の心が生み出した「何か」が珠城りょうのトートであるように思えたのです。

シシィが辛いとき、苦しいとき、そっと現れ、手を差し伸べてくれる。
生きることがあまりに難しいとき、彼女の心が砕け散らないように、支えてくれる存在。
シシィの心の自己防衛機能とも言えるかもしれません。

救いであり、ここではないどこかへ連れて行ってくれる。
彼女の心が自由の空へ羽ばたくとき、翼となるのが珠城トートなのではないか?

もちろん、トートはトートとしてしっかり存在しており、彼の感情、思惑で動いてはいるのですが。
シシィの姿を通して見る方が、より明瞭に像を結ぶトート。
より密接にシシィの心に沿ったトート=珠城トート、と感じました。

今回の公演のメインヴィジュアルである、鏡越しに触れ合うトートとシシィは、まさにこのふたりの関係がよく表されています。
半身、分身、鏡像、同志、盟友、運命共同体…
さまざまな言葉が浮かびます。

珠ちゃぴコンビ演じるトートとシシィの関係は、恋人同士を越えた「魂の伴侶」または「ベター・ハーフ」という表現がふさわしいのかもしれません。
一度は分裂した魂の片割れ同士が再び一つになる。
純白の世界に昇天していくふたりの姿は限りない安らぎに満ちているように思えました。

演者が違えば、仕上がりもまったく違ったものになる。
再演を繰り返してきた作品ならではの面白さですね。

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コメント

はじめまして

noctiluca様、
はじめてコメントさせていただきます。
いつも楽しく拝読しています!
今回エリザベートを初めて観劇することになり、この記事を読んで益々楽しみになりました。
また感想等、記事を楽しみにしております!

Re: はじめまして

>まるみと様

はじめまして。
いつもご訪問ありがとうございます。
コメントまで頂戴し、嬉しい限りです。

まるみと様の初エリザベートが素晴らしいものとなりますように!
役者と音楽と舞台機構が一体となったエネルギー、特にコーラスの厚みには圧倒されました。

ありがとうございます。
よろしければ、またどうぞお寄りくださいませ。

エリザベート、楽しんでらしてくださいね。

Re: No title

w様

こんばんは。いつも素敵なコメントをありがとうございます。
私も初日翌日とその翌日に観劇しておりました。劇場内ですれ違っていたかもしれませんね。
『エリザベート』開幕と同時に咲いた月組ゆかりのお花…素晴らしい偶然ですね。

たくさんの『エリザベート』をご覧になられたw様にとっての今回の月組公演のご感想、とても心に響きます。
お芝居の力を強く感じる舞台でしたね。
歌がセリフのように聴こえるような、そんな感じがいたしました。

千秋楽、そして東京公演へ向け、どのように進化していくか。
私もとても楽しみにしております。

嬉しいお言葉をありがとうございます。
またどうぞお越しくださいませ。
非公開コメント

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noctiluca(ノクチルカ)

Author:noctiluca(ノクチルカ)
宝塚歌劇と共に30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
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