2018/06/15/Fri
星風まどかさんについて、組の名刺代わりのショー『シトラスの風』について
『天は赤い河のほとり』の感想。かなりスピーディーな展開でしたが、原作を知らず予習もせずに観た私にも分かりやすく、楽しむことができました。
自分の頭の中の知識と、劇中の出来事がパズルのようにサクサク当てはまっていくのも快感。
ネフェルティティの胸像が隻眼である理由など、エピソードを上手く取り入れてるなぁと感心したものです。
小柳奈穂子先生の脚本は気取ったところがなく、平易で親しみやすいのがなにより。
物語の流れの見せ方が巧みで、原作ファンも多く訪れる『天河』の演出に彼女を起用したのは正解だったと思います。
原作ファンの友人も「ヴィジュアル再現度が高く、よくまとまったストーリーだった」と話していました。
とはいえ、膨大な原作を90分に圧縮した弊害はいたるところに。
多少の駆け足感は否めません。
「これはこういうことかな?」「原作ではきちんと描かれているのだろう」と適当に補いつつ観ましたが、少々不親切ですね。
せめて一本物だったら良かったのですが、宙組誕生20年で『シトラスの風』を併演する都合上、仕方なかったのでしょうか?
さて、記念すべき宙組20周年。
真風涼帆さんと星風まどかさんの新トップお披露目も重なり、二重の喜びとなりました。
まどかちゃんは初の生え抜きトップ娘役でもありますね。
私が宝塚を観始めた頃はまだ4組制で、しばらくお休みして戻ってきたら5組に増えていて驚きました。
そこから、大空祐飛さん、凰稀かなめさん、朝夏まなとさんと歴代トップの舞台を拝見してきましたが、常に変わらないイメージは「大人っぽくて、ゴージャスで、スタイリッシュな宙組」。
真風君が就任されてからも、その印象は引き継がれ、むしろ一層強化され、嬉しい限りです。
面長で体格の良い真風君と、丸顔で小柄なまどかちゃん。
ゆったり鷹揚で頼もしい芸風の真風君と、可愛らしく三拍子揃った実力の持ち主まどかちゃん。
見た目も中身のバランスもぴったり。
素敵なトップコンビ誕生に、心よりおめでとうを申し上げます。
* * *
前回の記事は男役さん中心でしたので、今回はまどかちゃんについて。
お芝居のユーリ役は、ショートカットがよく似合う活発なヒロインで、フレッシュな魅力を振りまきました。
賢くて、意志が強く、思いがけない状況に陥っても、前向きに進もうとする姿が印象的。
現代に残してきた家族や友人、ボーイフレンドに未練はないのかな?と思いましたが、原作ではもっとページが割かれているのでしょうね。
むしろ、カイル(真風)と共に戦いに身を置くことで次第に「自分が過去に呼び寄せられたのは意味のあること」「自分に課せられた使命は、カイルと共に平和を実現すること」と悟っていきます。
特に、「自分が享受していた平和は、過去の誰かの犠牲の上に成り立っている」という、物語の最も大切な部分がきちんと伝わってきたのがなによりでした。
ショーは「ノスタルジア」が秀逸。
クラシカルで美しく、これぞ宝塚という場面。
優しくリリカルなまどかちゃんの“O mio babbino caro”で幕を開けます。
数年前に観た全国ツアーでは、同じシーンでみりおんちゃん(実咲凜音)の歌声を堪能しました。
透き通るように繊細なみりおんちゃん、柔らかくまろやかなまどかちゃん。
代替わりしても美声を楽しめるのは嬉しいことです。
組を象徴するような作品、名刺代わりになる作品を持っていることは幸せですね。
宙組の『シトラスの風』しかり、花組の『EXCITER!!』しかり。
世代を超えて受け継がれ、観客もまたその時々のスターさんの輝きと、組の伝統を味わえる。
とても素敵です。
閑話休題。
ひとりの女性を巡る恋の鞘当て。
定番のシチュエーションながら、非常にドラマティックな盛り上がりを見せる場面です。
“Nessun Dorma”に乗せて対立する男ふたり。
ふたりの間を揺れ動く女。
胸元を開けたシルバーのサテンシャツのキキちゃん(芹香斗亜)は華やか。
襟元の詰まった純白のシャツの真風君は禁欲的。
異なる色気がぶつかり合って、めちゃくちゃカッコいいですね!
やがて、キキちゃんが真風君に手袋を投げつけ…
結末は誰にも分かりません。
決闘はどちらが勝ったのか?それとも相討ちだったのか?
“若さ”ゆえの美と無謀。
“青春”の儚さや虚しさ。
「ロマンチック・レビュー」の粋を集めたような名シーンです。
また長くなってしまいました。
続きは改めて。
○『天は赤い河のほとり/シトラスの風 -Sunrise-』関連記事はこちら↓
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