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恐怖の寿限無地獄!キックリさん(凛城きら)は救世主│天は赤い河のほとり

『異人たちのルネサンス』で、ピリリと芝居を引き締める色悪っぷりを発揮する、りんきらさん(凛城きら)。
「人材豊富過ぎる」宙組の贅沢な悩み―個人評(芹香/愛月/凛城/澄輝/風馬)│異人たちのルネサンス

前作『天は赤い河のほとり』でも、ぐっと目を引く働きをされていました。
そのときの感想です。

* * *

幼い頃から落語好きで、子ども向けの落語本を読み漁っていた私。
まんじゅうこわい、目黒のさんま、ねぎまの殿様、千早振る…
なかでも『寿限無』は言葉遊びの面白さが抜群でお気に入りでした。

先日観た宙組公演『天は赤い河のほとり』で、久々に寿限無が脳内を駆け巡りました。
ジュゲムジュゲム ゴコウノスリキレ カイルムルシリ ユーリイシュタル ウセルラムセス ウルヒシャルマ シュッピルリウマイッセイ サリアルヌワンダ…

これは生徒さんもスタッフさんも大変だったでしょうねー。
お互いの役名を覚えるのも一苦労です。

観る方もなかなか大変。
「新鮮な気持ちで観たい」との思いから、新作はいつも予習せずに挑む私。
次から次へと登場人物が姿を現し、名乗りを上げる前半部は海馬フル回転!
続々と襲ってくる情報を片っ端から取り入れ、消化せねばなりません。

ラムセスやネフェルティティなど、実在の人物はまだ良いのです。
固定のイメージがあるのでキキちゃん(芹香斗亜)や、あっきーさん(澄輝さやと)とすんなり結びつきました。
しかし、初めて耳にする名前(原作のオリジナルキャラクター)は大変!

ロシア語通訳の米原万里さんの著書に、そんな状況にぴったりな文章がありました。

通訳が大変悩まされるものに、固有名詞の羅列がある。
固有名詞というものは、実はそれを知っているときには、とても思い入れがあったり、特別な意味があったりするのに、まったく初耳の知らない固有名詞となると、意味のない音の羅列にすぎなくなる。


「それを知っているときには、とても思い入れがあったり、特別な意味があったりする」
原作ファンの方の頭の中でキャラクターと役者がすぐに結びつくのは、このためですね。

一方、私は。
「まったく初耳の知らない固有名詞となると、意味のない音の羅列にすぎなくなる」
脳みそを汗だくにしながら、必死に生徒さんと役名を結びつけたり、地図を思い浮かべてみたり。
原作ファンのヅカ友さんには「読まなくても大丈夫」と言われましたが、やっぱり読んでおけば良かったかな?

万里さんはこうも書いています。

無意味なものは覚えにくい。記憶のキャパシティーを食う。
それを知覚し記憶するために、他の重要な要素、たとえば文章全体の流れなどをつかむための注意力や記憶容量が減ってしまう。


問題はここ。
「それを知覚し記憶するために、他の重要な要素をつかむための注意力や記憶容量が減ってしまう」
固有名詞に翻弄され、肝心のストーリーや登場人物の心の動きを追うのがおろそかになっては本末転倒です。

過度な固有名詞の集中は、しばしば通訳をいたずらに苦悶させ、疲労困憊させ、通訳不能に陥れる。
親が長寿を願ってつけた寿限無のフルネームがあまりにも長ったらしかったために、救援が間に合わず、井戸で溺れ死んでしまった悲劇のようなことになりかねない。


「過度な固有名詞の集中は、しばしば観客をいたずらに苦悶させ、疲労困憊させ、理解不能に陥れる」という状況でしたね。
ちなみに私はカイルの兄弟全員集合シーンでギブアップ!
固有名詞を追うことを放棄。
このうえラムセスの姉妹までが名乗りを上げたらどうしようかと思いました。

しかしながら、こんな私でもなんとかストーリーについてゆき、楽しむことができたのは、ひとえに小柳奈穂子先生のお力。
20巻以上に及ぶ原作を一本物ならまだしも、わずか90分の一幕に仕上げる。
無茶な要求にも屈せず、よくまとめたなーというのが私の思いです。

とはいえ、ツッコミどころは多いし、足りないところは観客の脳内補完に委ねる箇所も見受けられましたが、まずまずの仕上がりでした。
芝居の組み立てが巧みでツボを押さえているので、説明的な台詞が多くてもストレスを感じないのが何よりですね。

MVPは怒涛の寿限無(固有名詞)地獄の唯一の救い、狂言回しのキックリを演じた凛城きらさん。

涼やかで明晰な語り口。
聞き手の耳にするする染みとおる水のような味わい。
観客に寄り添うように的確な彼の導きで、煩雑なストーリーが整理されました。

キックリ様様です!
彼が口を開くたび、謎の安心感を覚えました。

原作でのキックリはどのような役回りなのでしょうか?
やはり物語の語り部なのでしょうか?
もしそうではなく、あえてりんきらさんにこの役目を与えたのだとすれば、小柳先生グッジョブです!

※抜粋はすべて米原万里著『不実な美女か貞淑な醜女か(新潮文庫)』より

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野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。

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