2018/05/11/Fri
上田久美子先生、“珠城りょう”をぶっ壊してくれてありがとうございます!│BADDY
毎公演、新しいカッコよさを提示してくださる珠様(珠城りょう)。そのたびにキャーキャー言ってる私ですが、今回のバッディのカッコよさは格別!
やんちゃでワイルドでセクシーで…
パッカーーーン!!と音を立てて殻が破れたみたい。
「こんな一面もあったのか!」と新鮮な驚きを感じています。
* * *
良くも悪くも「優等生」のイメージが強い珠様。
オフステージの言動からは比較的さばけた、やんちゃなお人柄が窺えますが、芸風は真面目・誠実・温厚…そんな言葉が浮かびます。
もちろん、それが悪いのではありません。
しかし、トップ就任から丸一年が過ぎ、良きパートナーであるちゃぴちゃん(愛希れいか)の卒業が発表された今、もう一枚その身を覆う鎧を脱げるのではないかと感じていたのです。
今こそ、変わるとき。
その絶妙なタイミングで当てられたのが『BADDY』。
偶然か必然か。
作者が珠様とご縁が深い上田先生であることを考えると、意図的であったのだと思います。
宝塚は生徒との距離が近いだけに、生徒個人の色と、舞台上の役を重ねて観てしまいがちです。
真面目・優等生・誠実・温厚・健康的…
そんな“珠城りょう”のパブリックイメージを覆した役、バッディ。
「あの珠城りょうが!」という客席の驚き。
これこそ“究極の当て書き”でしょう。
ただし、これは宝塚ファンが珠城りょうという生徒に抱く共通認識あってこその反応です。
「宝塚は初めて」という方が『BADDY』を観たら?
ショーのお約束も知らず、生徒の見分けすらつかない。
そんな方がこのショーをご覧になったら、一体どのような感想を持たれるのか?
珠様の姿はどんなふうに映るのか?
とても興味深いですね。
* * *
コメディタッチな前半から一転。
バッディ覚醒後の『ビッグシアターバンク式典舞踏会』からフィナーレに至る流れは神がかってます。
オールバックに黒燕尾、胸に紅薔薇を差したバッディの美しさ。
匂い立つばかりの男役の色気を振りまきながら、軽やかなステップで銀橋を渡る珠様。
一挙一動が切ないほどに素敵で、毎回息を詰めて見守りました。
手が届きそうな距離なのに現実味が感じられなくて…
華麗な舞踏会の裏側、甘く謎めいた宇宙人の歌声に導かれて進む悪事。
ふわふわした不安と、掴みどころのない美と、異様なかぎろいに覆われた舞台。
悩ましげに眉をひそめて踊るバッディの額にきらめく汗。
妖しく美しい白昼夢の中にいるようでした。
『Bandito』のタキシードと、『BADDY』の黒燕尾。
どちらも珠様の男ぶりが際立つ、大好きなスタイルです。
粗野な男が一転してドレッシーに装う。
そのギャップに心惹かれるのですね。
身にまとうものが変われば、仕草や佇まいも変わる。
しかしエレガントな皮一枚の下から覗く、隠しきれない雄の香りに魅了されるのです。
* * *
“珠城りょう”の“バッディ”か。
“バッディ”の“珠城りょう”か。
境界が曖昧となり、まさに混沌(カオス)。
“珠城りょう”に嵌められた枷を打ち壊したのが“バッディ”ならば、そのような役に巡り合えたことは役者冥利に尽きます。
創っては壊し、壊してはまた創る。
役者稼業はその繰り返しですが、バッディの破壊っぷりは過激。
ひとつひとつ積み重ねていくはずのところを一気に何段もぶっ飛ばしてしまったかのような。
ドカンと開いた大穴から覗く青空、清々しい風が吹き抜けていくような思いがします。
当たり役を経て、さらに大きく美しく成熟されていく珠様。
次に待つのは『雨に唄えば』のドン、そして『エリザベート』のトート。
重たい鎧を脱ぎ捨てて、どのような軽やかさで羽ばたいてゆかれるか、楽しみにしています。
○BADDY関連記事はこちら↓
>【BADDY公演デザートレビュー】頬張ってぃみたよ!GOODなお味でした!+珠ちゃぴリフトの話
>善か悪か?白か黒か?の世界に潜む「グレー」―千海華蘭のシェフ│BADDY
>世界よ、宇月颯色に染まれ―炎のデュエットダンス│BADDY
>自分にとっての“ワルいこと”を探せ!―BADDYからのメッセージ
>一発芸か?至高の傑作か?―『BADDY』について真面目に考えてみた
>完璧なピースが揃った“月組ジグソーパズル”│BADDY
>宝塚屈指の美女、ザリガニになる―バルタン星人な月城かなと│BADDY小ネタ集(2)
>紫門ゆりやの役名は『エレガント』だったかもしれない説│BADDY小ネタ集(1)
>「あなた」でも「おまえ」でもなく、恋人を「きみ」呼びするスイートハートに心ときめく│BADDY
>YATTYのいないBADDYなんて気の抜けたビールでしょ!輝月ゆうまの宇宙人力│BADDY
>『退屈』を打ち破れ!「眠られないんだ」が意味するもの―覚醒する暁千星│BADDY
>おやつが月からやって来た!│カンパニー/BADDY公演メニュー
>なんてタイムリー!STAR JEWELRY Girlの“BADDYすぎる”アクセサリー☆彡
>パンセクシュアルなバッディ(珠城りょう)×性別越境者なスイートハート(美弥るりか)が登場する意義とは│BADDY
>月組の新しい扉が開いた。もう『BADDY』を知らなかった頃には戻れない
>ハッハッハ!なんだ、こりゃ!?めちゃくちゃ面白いじゃないか!│BADDY
>今しか書けない!?BADDY妄想―月よりの使者“バッディ(珠城りょう)”は地球の救世主となるのか?
>BADDYさーん!!3週間ぶりの珠様が想像を超えるカッコよさ!
>サラリーマンだって、宇宙人だって、珠城りょうならば成立するのです!
>「いまの月組だからこそできる」珠様率いる月組の無限の可能性にわくわくする!2018年演目発表
- 関連記事
-
- すーさん、寂しくなります│憧花ゆりの組長ご卒業
- 飄々と、軽やかに―『雨に唄えば』のブースター、美弥るりかについて
- 「甘い珠城りょう」という新境地を拓いたドン・ロックウッド│雨に唄えば
- 歌える!踊れる!芝居ができる!輝月ゆうまの超絶技巧が光る『雨に唄えば』
- ドンとキャシーの甘酸っぱい恋にぴったり!『雨に唄えば』公演デザート「マンゴープリン」
- 珠様のファッション+炸裂する月組子の芝居心→『雨に唄えば』は1粒で4度おいしい!
- お芝居が、私たちにくれるもの│雨に唄えば
- 上田久美子先生、“珠城りょう”をぶっ壊してくれてありがとうございます!│BADDY
- 『カンパニー』大好き!―手練れの演出家、石田昌也先生
- 「華麗VS実直」るりたまコンビが相性抜群な理由を探る│カンパニー
- 「早乙女わかばのキスでヒキガエルも王子様になる」生粋のお姫様、花園を去る│カンパニー
- 【BADDY公演デザートレビュー】頬張ってぃみたよ!GOODなお味でした!+珠ちゃぴリフトの話
- 『緊張』と『緩和』入り乱れる、これこそファンを操るBADDY心理学│BADDY小ネタ集(3)
- 善か悪か?白か黒か?の世界に潜む「グレー」―千海華蘭のシェフ│BADDY
- 世界よ、宇月颯色に染まれ―炎のデュエットダンス│BADDY
スポンサーサイト
コメント
S様へ
温かいコメントをありがとうございました。
過去の記事を読んでくださる方がいらっしゃると、かえって嬉しく励みになります。
どうぞお気になさいませんよう…
初宝塚が『カンパニー/BADDY』とは凄いですね!
特に『BADDY』はいわゆる“宝塚らしいショー”のイメージとは異なる作品ですので、これで初めて宝塚をご覧になる方のお声を是非伺ってみたいと思っていたのです。
このショーがきっかけで宝塚がお好きになったとのこと。
同じ宝塚ファンとして何より嬉しいお言葉です。
輝月ゆうまさん、私も大好きです。
どんな作品でも常にハイレベルな芸を見せてくださって…
彼女が演るなら面白くなるに違いない、と思わせてくれる役者は貴重ですね。
(ビッグシアターバンク舞踏会のソロは絶品でした!)
身に余るお言葉をいただき、本当にありがとうございます。
ほんのわずかでもS様のお役に立てたと思うと光栄です。
どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
2019/02/02 10:26 by noctiluca(ノクチルカ) URL 編集