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パンセクシュアルなバッディ(珠城りょう)×性別越境者なスイートハート(美弥るりか)が登場する意義とは│BADDY

『BADDY』で驚いたのは、みやさん(美弥るりか)演じるスイートハートの登場シーン。
珠様(珠城りょう)バッディの〽邪魔だ どけ!に呼応する歌詞〽邪魔よ どいて!。
…ん?
女言葉??
スイートハートってどんな役なの?

よく飲み込めないまま場面は進みます。
鮮やかなマゼンタピンクのスーツに身を包み、バッドボーイを引き連れて踊るスイートハート。
妖艶でカッコいい!

クール(宇月颯)、ホット(紫門ゆりや)を始めとするバッドボーイのほとばしる色気。
ぞくぞくするほどカッコいい!
この場面のためだけでもリピートしたい!
宝塚らしからぬテーマを扱いながらも、男役のカッコよさはきっちりみせる絶妙なバランスが嬉しいですね。

おもむろに熱い口づけを交わすバッディとスイートハート。
悲鳴を上げて卒倒する地球国民グッディ(愛希れいか)とポッキー(月城かなと)。

グッディたちがショックを受けたのはなぜ?
理想都市にゲイカップルは存在しないの?

公演解説には『戦争も犯罪も全ての悪が鎮圧されたピースフルプラネット“地球”』とあります。

同性同士(?)のラブシーンに免疫がない様子のグッディたち。
地球では“異性愛以外の愛=悪”として鎮圧(排除)されてきたということでしょうか?

飲酒・喫煙・戦争・犯罪はすべて“ワルイこと”として禁じられた地球。
それらの“ワルイこと”なんでもござれのバッディを理想都市のアンチテーゼとすると、彼の性的指向もまたピースフルプラネットにふさわしくない“ワルイこと”なのでしょう。
しかし、これは上田久美子先生の仕掛けです。

* * *

上に『ゲイカップル』と書きましたが、バッディとスイートハートはゲイの恋人同士とは言いにくいですね。
スイートハートの性自認は女性ですので、『王妃の館』のまこちゃん(澄輝さやと)とクレヨンちゃん(蒼羽りく)の関係に近いです。
しかし、まこクレカップルと決定的に異なるのはバッディの扱い。

まこちゃんこと近藤誠は、肉体と性自認が男性・性指向が女性のヘテロセクシャルですが、葛藤を乗り越えてクレヨンちゃんと結ばれます。

○『王妃の館』関連記事はこちら↓
とびっきり可愛かった!クレヨンちゃん(蒼羽りく)の恋│王妃の館
マコちゃん(澄輝さやと)の恋と、宝塚におけるセクシャリティの表現

かたや、バッディ。
肉体及び性自認は男性(おそらく)ですが、性指向は謎。
スイートハートを愛し、セクシーな美女軍団を侍らせ、グッディをナンパし、更にはオイスターにまで食指を動かす(単なる悪食?)。

バッディの性指向について作中では明言されてませんので不明ですが、公演プログラムにヒントがありました。
『身のこなしは極めて洗練された男性だが、女性の心を持つスイートハート』
やや曖昧な記述ではありますが、どうやらスイートハートはトランスジェンダーのようです。

これにより、バッディは男女双方を恋愛対象とするバイセクシュアルではなく、男女と“それに当てはまらない性”も対象とするパンセクシュアル(むしろオムニセクシュアル?)だと理解しました。
(そして、おそらく複数人を同時かつ同等に愛せるポリガミー)

シチュエーションにより、メンズライクなパンツスーツに身を包んだり、とびきりセクシーなドレスをまとったり。
万華鏡のようにくるくると、自身の男性性と女性性を行ったり来たりするスイートハート。
その軽やかさ。
そんな彼女(彼)を愛するバッディ。
彼らは自由です。

「I'm free…」

バッディのテーマソングの一節にすべてが示されています。
対して、地球国民はなんだか窮屈そう。
月からやって来た男たちの奔放さに真っ先に魅入られるのが、曇りなき目の持ち主(暁千星)なのが面白さを増してますね。

月組メンバー各々の個性にぴたりとハマった今回の配役。
パンセクシュアルな珠城りょうと、性別越境者の美弥るりかも当て書きなのでしょうか?
これは「YES」だと思います。

とりわけ、みやさんが居たからこそ実現したキャスティングと断言できます。
中性的な作り込みでも、どこか骨太な男らしさが滲み出るみやさんの男役像あってこその“スイートハート”。
とびきり美しい男であり、女でもあるが、そのどちらでもない。
かと言って、両性具有というありがちなファンタジーに逃げず(※)、下世話なギャグに走らず、きちんと正面切って一人の魅力的な人物として描ききっている。
それを実現したみやさんの個性と力量、それを引き出した上田先生の手腕に賛辞を送ります。

対する珠様。
立役ならお任せ!100人乗っても大丈夫!な逞しさがウリの男役さん。
みやスイートハートとは正反対の個性の“バッディ”。
「パンセクシャルってこういう人」と定義するのは難しいですが、珠様の男役像に見られる懐の深さ、こだわらなさ、ある種の無頓着さは彼女の男役としてのひとつの特性だと感じます。
それが、物事にタブーを設けず本能に従って生きるバッディの在り方と上手く溶け合っているように思えるのです。

「I'm free…」

自身の在り方に何の疑問も抱いていないように振る舞うバッディやスイートハートはとてつもなくセクシー。
かつてない新しい魅力を放つ彼女らにクラクラしています。

その魅力の根源は“自信”。
自分を信じ、真っ直ぐに己の道を貫く人物は魅力的です。
それが男であれ、女であれ、それに当てはまらない性であっても。

「I'm free…」と主張するバッディやスイートハートは“ジェンダーフリー”ですらあるのです。

女性が男性役を演じる宝塚歌劇団においてこのような人物を登場させる試みは、宝塚歌劇の存在意義に揺すぶりをかけるものと言えるかもしれません。

“善”と“悪”が入り乱れ、混乱する『第6場 カオス・パラダイス』は、まさに混沌。
たったひとつの価値観“善”を行動原理としていた地球国民たち。
月の民からもたらされた新しい価値観“悪”に翻弄され、ぐちゃぐちゃグルグル…

カオス(混沌)からコスモス(宇宙)が生まれたように、無秩序(カオス)から秩序(コスモス)が生まれる。
『カオス・パラダイス』は、ピースフルプラネット“地球”の新たな価値観と秩序の芽生えを捉えたシーンなのです。

同時に、観客である私たちは『BADDY』という作品が宝塚歌劇の作劇の在り方に一石を投じた瞬間を目撃したとも言えます。
“ホモ”“オカマ”“オネエ”で安易な笑いを取るのはもう終わりにしませんか?
彼らが単なるお笑い要員でないことは、バッディやスイートハート(クレヨンちゃんも)が証明したのですから。

* * *

ところで、珠様演じるバッディは手練手管で周囲を魅了する伊達男というより、野生のフェロモンで男も女もそれ以外も惹きつけてる感じがしますね。
新境地を開拓した珠様、東京公演が千秋楽を迎える頃には一体どんなバッディさんになっていることやら…

ちなみに、好きなシーンBest3はこちら。
3位→酔ってアジトへ帰って来たバッディに「その人(ポッキー)誰!?」とヤキモチを焼くスイートハート(可愛い)。
2位→銀橋でお互いの煙草を突き合わせて貰い火する二人(エロティック)。
1位→「俺のスイートハート」呼び(キュンとしますね)。

※あくまでも“ファンタジーとして描かれる両性具有”を指します。性分化疾患について言及したものではありませんのでご了承ください。

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プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
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