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“永遠の命”がもたらすものとは?ふたつの不死の物語“ポーの一族VS不滅の棘”│不滅の棘感想

まずは、『不滅の棘』というミステリアスなタイトルに惹かれた私。
作者は木村信司先生。
そして、主演は愛ちゃん(愛月ひかる)。
これはもう「観る!」一択ですね。

大好きなのです、木村先生の作品が。

劇中にひとつでも心に染みる台詞があれば作品そのものが好きになってしまう単純な私。
たった一言の台詞が心に残り、忘れられない作品になる。
そんなことってありませんか?

例えば、同じ木村先生の『太陽王~ル・ロワ・ソレイユ~』のフランソワーズ(妃海風)の台詞。
「長生きしてくださいませね」
最初の夫を早くに亡くした彼女が、後に出会ったルイ(柚希礼音)に告げる言葉。
唐突に発せられるのではなく、台詞が導き出される道筋が物語にはあります。
点がつながって線になる。
この温かな言葉が育まれた土壌としての作品全体を好きになるのです。

『不滅の棘』で言えば、エロール(愛月)の「疲れ果てた」が、それにあたります。

“不老不死”は“幸せ”だと思いますか?

愛する人が皆、日々老いていき、自分を置きざりに逝ってしまう。
どんなに嘆いても為す術もなく、ただ呆然と見ているだけ。
不老不死であっても、他者の命を司ることは出来ないのです。

目覚めても目覚めても、朝の光の中にたったひとりぼっち。
想像を絶する孤独です。
不死の、身の置き所のない寂しさの結晶「疲れ果てた」。
その引きずり込まれるような重さ。

見かけこそ瑞々しく美しい若者でも、心はカサカサに乾ききったミイラのようなエロール。
不老不死の秘薬の影響で、自ら死を選ぶことも許されない。
愛する者の後を追うことも出来ず、ひとり永遠の時をさまよい続ける。

無限の命など何の意味があるのでしょう?
自分の無力を噛みしめるだけの300年。

ただ死なない、ただ老いない。
そんな力、あなたは要りますか?
私はまっぴらごめんです。

「疲れ果てた」
置いてけぼりにされ、ただ永らえることだけに倦んでしまったエロールの心が、ただただ哀しく胸に刺さりました。

花組の『ポーの一族』と宙組の『不滅の棘』。
東西同時に不死の物語が上演されたのは偶然でしょうか?
耐え難い寂しさに、エドガーは道連れを作ることを選びました。
「君もおいでよ、ひとりでは寂しすぎる」
アランを誘う言葉の、甘美な罪深さ。

愛する人に不死を贈る。
最も残酷なプレゼントです。
エリイ(エロール)はフリーダ・プルスに不死を与えませんでした。
それがどれだけ過酷なことか、誰よりも知っていたエロール。
愛も、命も、限りあるからこそ尊いのだと、身を持って示したエロール。

ラストシーンの静かな美しさ。
フリーダ・ムハの手によって灰燼と化した秘薬のレシピ。
不死のエロールに死が与えられた一瞬、彼の身に生の輝きが宿ったように思います。

長きにわたる苦しみからようやく解放されたエロール。
砂となり、音もなく崩れ落ちる肉体。
彼の魂はどこへ還ったのでしょう?

エロールの胸をチクチクと疼かせ続けた“不滅の棘”。
それは、愛するフリーダ・プルスと息子フェルディナントへの想いでした。
願わくば、エロールの魂が彼らの待つ世界へたどり着けますように。

薄青がかった白一色の世界に、音もなく滑り落ちる一握の砂。
しかしながら、私はこぼれる砂の中に、エロールの安堵のため息を聴いたような錯覚を覚えました。

やはり、命には限りがあるべきなのです。
どのように生き、どのように愛するか。
不死の物語の中で、有限の生命の輝きを示したエロール。

余談ですが、木村先生作品の『鳳凰伝』の劇中歌“されど夢”も「砂」がモチーフとなっています。
〽すべてこの世は夢 人は砂 我もまた砂
悠久の時の中で、人の命は砂漠に紛れた一粒の砂のように儚く、取るに足らないもの…
しかし、その限られた命を全うすることこそが尊いのだと。
木村作品の底を流れるテーマに触れたように思います。

何はともあれ、またひとつ大好きな作品が増えました。
エロールを演じた愛ちゃんを始め、宙組メンバーの熟練のパフォーマンスにより、優れた芝居を観る喜びを存分に味わうことが出来ました。
そして、何より『不滅の棘』という作品を通して、「不死とは?命とは?愛とは?」を世に問うた木村信司先生。
素晴らしい舞台をありがとうございました!

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野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
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