2019/10/18/Fri
綺咲愛里のヒロイン力―紅ゆずると二人三脚でたどり着いたゴール│食聖
私が初めて宝塚を知った頃、星組トップ娘役だったシギちゃん(毬藻えり)。華やかで大人っぽい美貌。
豪華なドレスにも負けない抜群の存在感。
子ども心に、なんて美しい人かと憧れました。
以来、シギちゃんが私の中の「宝塚のトップ娘役」のひとつの規範となったのです。
舞台のきらびやかなイメージに反して、内面はごく控えめでおとなしい方だったようで、そのギャップも魅力でした。
「守ってあげたい娘役」として、星組の男役さんの間で「シギちゃんを守る会」があったほど。
今は専科でご活躍のハッチさん(夏美よう)もメンバーのひとりでした。
余談ですが、私の恩師のかつての教え子がシギちゃんだったそうで「当時から綺麗だった」と聞かされました。
ですよね~~
あーちゃん(綺咲愛里)も私の「理想の宝塚の娘役像(のひとつ)」を体現する娘役さんです。
黙っていても「あの人がヒロイン」と思わせる華。
万人に受け入れられる愛らしさ。
何より必要なのは、隣に立つ男役(トップスター)を、よりカッコよく輝かせる力。
シギちゃんにしろ、あーちゃんにしろ、この点が抜群。
いわゆる「姫役者」と言いますか…
ずば抜けた「ヒロイン力」が魅力なのです。
紅ゆずると綺咲愛里、二人三脚でたどり着いたゴール
あーちゃんの舞台姿を初めて意識したのは『ダンサ セレナータ』のカロリーナ。
真風涼帆さん演じるルイスと駆け落ちする両家のお嬢さん役ですが…
第一印象は、ちょっと頼りない…?
(役柄には合ってましたが)
『太陽王~ル・ロワ・ソレイユ~』のマリーも、可愛いけど、お芝居が不安定という感想。
そんな印象を一気に覆したのは『桜華に舞え』のヒサ。
それまでの可愛らしいイメージとは一転、どっしり地に足のついた、生々しい感情をあらわにする大人の女。
「あーちゃんのお芝居、すごくいい!」
短いシーンですが、深く印象に残りました。
>歌よし、踊りよし、芝居よし!男役、礼真琴が発する色気と凄み│桜華に舞え
そして、お披露目の『THE SCARLET PIMPERNEL』。
満を持してコンビを組んだ紅ゆずるさんとの並びは最高!
以後、公演を重ねるごとにピタリピタリと足並みを揃えてくるのが素晴らしかったですね。
紅さんが心からあーちゃんを可愛がってらっしゃるのが伝わるし、あーちゃんも紅さんを慕っているのが分かる。
ファンが宝塚のトップコンビに求めるものって、やはりこれなんです。
トップスターの孤独や重圧は計り知れませんが、心通じる相手役の支えがあればこれほど頼もしいことはない。
『Éclair Brillant』のデュエットダンスで、互いに向けられた嘘のない笑顔。
愛しげにあーちゃんを抱きしめる紅さんから思わずこぼれる幸せなため息…
生徒さんの心は観客に通じます。
宝塚っていいな、トップコンビっていいな、って思います。
二人三脚でゴールまで駆け抜けたふたり。
素晴らしい「愛」をありがとうございました。
仁義にあつくていい女
あーちゃんのスタンダードなお芝居は『鎌足』で見納めかと思ったら…
予想に反して『食聖』がめちゃ深くていい話で大喝采でした。
直近の『エルベ』も『鎌足』も『食聖』も、根っこはすべて「愛」。
紅あーコンビが描く多彩な「愛」の物語。
どれもそれぞれに魅力です。
当代屈指の姫役者、あーちゃんのラストヒロイン。
ピンクのへそ出しジャージに健康サンダルで現れたときは、ぶったまげましたけど…
アンチヒーローの紅孩児に憧れ、家族や仲間を守るため率先して戦うアイリーン。
真っ直ぐで瑞々しく、繊細で柔軟な心。
「仁義にあつくていい女なんだよ」
当て書きに優れた小柳先生が贈る言葉。
これが娘役・綺咲愛里への評価なのですね。
自分の足で歩き、ときには誰かを救うヒーローにもなれる。
時代が要求する新しいヒロイン像を確立して花園を去る。
とても素敵です。
「いい答えが見つかるよ」
「あなたは冒険の途中なのね」
タン・ヤン(有沙瞳)やエレノア(音波みのり)とのシーン、いいですよね。
娘役さん同士ががっぷり四つに組む芝居、好きなんです。
青い小さな花から、ピンクの大輪の薔薇へ。
堅いつぼみがみるみるほぐれ、あでやかな変貌を遂げたあーちゃん。
その変化は唯一無二の相手役、紅さんと共に歩み、組を引っ張っていくなかで育まれたものと思います。
ご卒業おめでとうございます。
これからはふたり揃って客席から星組の舞台を観てくださることを楽しみにしています。
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