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立てば巨木、座れば巨岩、歩く姿は百獣の王―カラフに求められる資質を満たす珠城りょう│鳳凰伝

早いもので、もう師走。
街のイルミネーションも美しく、せわしなくも心浮き立つ季節の到来です。
クリスマスの準備をし、年賀状を発注し、年末旅行の手配をし…
諸事に追われ、気づけば月組の全国ツアーも残すところ最終の市川のみとなりました。

さて、この『鳳凰伝』について。
宙組初演は未見の私。
MY初日の第一印象は“けれん味たっぷり、いかにも芝居らしい芝居を観た”でした。

現代の常識や倫理観に照らし合わせて理解しようとすると、なかなか感情移入しにくい物語ではありますが、頭と心を空っぽにして真正面から舞台に向き合ってみると、するりと古代中国の世界に飛び込めたのです。

物語が伝えるのは普遍的な愛のメッセージです。
愛は何ものにも勝る。
プリミティブで力強いテーマを、確実に観客に届けるのに大きな力を発揮したのは、主人公のカラフ王子(珠城りょう)でした。

幕開き、岩場でまどろむゼリム(蓮つかさ)の向こう側で背中を見せて座り込むひとりの青年(カラフ)。
その肩の広く、頼もしいこと。
その声の太く、まろやかで、温かいこと。
さっと振り向き、立ち上がる姿のおおらかで、ゆったりしていること。

シンプルかつモダンな装置の中で、悠然と立つカラフ。
大地に根を張る巨木のように、雄々しく、逞しく、威風堂々たる佇まい。
“生まれながらの王”であることが一目瞭然であるその姿に、まずは心惹かれました。

「お前の男はここだ!」
銅鑼を打ち鳴らし、高らかに宣言するカラフ。
トゥーランドットへの呼びかけであると同時に、観客へのメッセージでもあるのです。

私の愛の力で氷のような姫の心を解かし、その身を必ずこの胸に抱く、と。
その有様を、とくと聞け!見よ!感じよ!と命じるのです。

「“ドラマ”が観たい」と望む観客の本能に訴えかける、圧倒的な熱量。
舞台に根を下ろしているかのような不動の存在感こそが、カラフに求められる資質でしょう。

謎かけ、首切り、血、また血。
不安と理不尽に暗く閉ざされた北京の街を覆う暗雲を切り裂き、明るい光を取り戻すのは絶対的なヒーローでなければならないのです。

明日への“希望”。
野蛮な殺戮により流される血ではなく、活力をもたらす熱い“血潮(情熱)”。
そして、“トゥーランドット(愛)”。
カラフが導き出した謎解きの答えは、人間が根源的に求めてやまないものばかりです。

* * *

話はそれますが、プログラムに記載された木村信司先生のご挨拶文がいいですね!
春日野(八千代)先生とのエピソードは貴重なお話が伺え、楽しく拝読しました。

白井先生と春日野先生が生み出した宝塚の『トゥーランドット』を、木村先生と宙組が『鳳凰伝』として再構築し、そして今また月組によりブラッシュアップされた。

伝統を受け継ぎつつ、新しい時代の価値観に即した作品として生まれ変わる。

まさにタイトル通り、寿命が尽きれば自ら火に飛び込み、再び蘇るとされる鳳凰(火の鳥/不死鳥/phoenix)の名に相応しい演目だと言えます。
また、カラフとトゥーランドットによる新しい時代の幕開けを象徴しているとも考えられます。

今回、初演時には無かったラストの台詞「先ずは、」が追加されたと教えていただきました。
まずは無慈悲に命を落としていった者たちを弔い、祝辞はそれから受けたい。
物語序盤、バラク(月城かなと)に対し「民は信なくんば立たず」と語ったカラフの内面とよく呼応する言葉です。

この一言がなければ、物語全体の印象がガラリと変わってしまうほどに意味ある台詞だと思うのですが…
初演はどのような幕引きだったのでしょうか?
全国ツアー終了後、改めて確認したいと思います。

「しもべとして仕えます」とかしづくトゥーランドットに対し、「仕えるなどと言うな、これからはふたり共に歩んでいこう」と返すカラフ。

冒頭に“現代の感覚で捉えようとすると感情移入しにくい”と書きましたが、このラストシーンが挿入されたことにより、登場人物たちへの共感と、爽やかな余韻が与えられました。

「愛を巡る戦いは終わった」
“支配・被支配”の構図を脱却した若き恋人たちの姿。

愛を奪うだけの女だったトゥーランドットが初めて愛を与えた男、カラフ。
その愛は、タマル(海乃美月)が命を賭してトゥーランドットに教えたもの。
さまざまな人の愛と命が、他の誰かの愛と命に引き継がれ、循環していく物語『鳳凰伝』。
またひとつ、好きな演目が増えました。

千秋楽の舞台がどのように変化しているか、楽しみに出かけてまいります。

○『鳳凰伝』関連記事はこちら↓
全国ツアーご当地ジェンヌ紹介+月城かなとの四次元ポケット│鳳凰伝
『現し世は夢、夜の夢こそまこと』トゥーランドットの淫夢│鳳凰伝

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野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
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