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この世で一番怖いものって何だろう?│『怖い絵』展感想

前回まさかの210分待ちで挫折した『怖い絵』展に再挑戦しました。
あまりの人気っぷりに、とうとう平日を含む毎日20:00まで開館時間が延長されたみたい。
img-20171124_1.jpg
多少は空いたかな?と思いましたが甘かったですね。
祝日の昨日、朝から冷たい雨にも関わらずまたもや210分待ち!
ゆっくりランチして遅めの時間に入ろうと思いましたが、待ち時間100分を下回ることはなく…
覚悟を決めて行列に並びました。

17:35に私たちが並び始めた時点では110分待ち表示でしたが、館内に入れたのは18:45。
70分ほどで済んだようです。
状況により変動はあるかと思いますが、ご参考までに。
会期末に近づくにつれ、ますますの混雑が予想されますので、ご興味のある方はお早めに。

20:00の閉館まで1時間15分。
普段なら3~4時間かけて観る私にしてはかなりの駆け足でしたが、気になる作品はじっくり鑑賞でき、おおむね満足でした。

お目当ては、オーブリー・ビアズリーの『サロメ』。
オディロン・ルドンのお気に入りの作品も観られ、嬉しかったですね。

今回、特に心に残った作品はこちらの2点。
ポール・セザンヌ『殺人』。
ウィリアム・ホガース『娼婦一代記』。

まずは『殺人』。
不遇をかこっていた若き日の作品。
セザンヌと言えば、『サント・ヴィクトワール山』や『リンゴとオレンジのある静物』のように、抜けるように温かな光のイメージが強かった私。
二人がかりで押さえつけた被害者の体へ、今まさにナイフを突き立てんとする瞬間の、むき出しの暴力を描いたこの作品は衝撃でした。
印象主義と出会う前、しかし、確実に後年の作品群へのつながりを思わせる、初期の荒々しいタッチ。
画家の心の変遷の一端に触れられたようで、胸を打たれました。

そして、最も強く脳裏に焼き付いたのは『娼婦一代記』。
ロンドンへ出稼ぎにやって来た少女モルが娼婦に身を落とし、若くして亡くなるまでを描いた連作です。

仕事を求めて都会にやって来たモル。
女衒に騙され、金持ちの商人の愛人となった彼女。
浮気が発覚して商人の家を追い出され、自宅で身を売りますが、治安判事により逮捕されます。
感化院に入れられたモルが強いられた奉仕労働は、絞首刑に使う麻縄を作ること。
釈放されたモルは男児を産み落としますが、食い扶持が増えたことにより、貧困に拍車がかかります。
やがて、梅毒に冒され死の床に着くモル。
享年23歳。

展覧会テーマの“怖い”絵。
不気味、不安、グロテスク、暴力、災害、病気、死…
“怖い”にも様々ありますが、この作品が孕む“怖さ”の正体は何でしょう?

貧困、無知、自堕落、女性の地位の低さ。
感化院を出ても、身を売る以外に日々の糧を得る手段を知らず、更に救いのない道に足を踏み入れる。
搾取され、誰にも顧みられず、ボロ布のようになって死んでいく彼女。

女性が生きていくための選択肢の少なさ、食べていくための手段として選んだ仕事で死の病に罹患する。
モルのような女性は他にも数多くいたでしょう。
ジョージ・フレデリック・ワッツの『発見された溺死者』にも、その影を見て取ることができます。
逃げ場のない不幸の連鎖。
これこそが“恐怖”です。

最も弱き者に最大の犠牲を強いた当時の社会情勢を切り取った『娼婦一代記』。
彼女がどんな思いで世を去ったのか、やりきれなく、重苦しい気持ちになる一枚でした。

実は、この作品を観始めた時点で閉館20分前。
まだ展覧会の目玉『レディ・ジェーン・グレイの処刑』に辿り着いていません。
申し訳ないけど、このコーナーは飛ばして先に進みたいなぁ…なんて思っていたのですが、銅版画好きの連れ合いにその気配なし。
諦めて(?)一緒に並んだのですが、これが大正解!
観て良かった!
この作品が一番心に残ったのです。
連れ合いに感謝しなければ…

閉館時間を過ぎ、出口へ向かいながら横目で観た『レディ・ジェーン・グレイの処刑』。
目隠しをされ、自らの首を据える台へ伸ばされた左手の反対側。
不安そうに、何かすがれるものを探すように、宙へ浮かされた右手。
まだあどけないような肉付き、頼りなく、冷たく、心細げなその手をぎゅっと握りしめたくなるような気持ちに襲われました。

展覧会メインビジュアルに添えられた「どうして。」(画像参照)
秀逸なキャッチコピーです。

たった9日間の在位。
陰謀によって、わずか16歳で処刑されたジェーン。
どうして。
彼女が何をしたというのか。
どうして。

会場の外の壁に並べられたパネルで作品の背景が説明されています。
ジェーンの夫で、別々にロンドン塔に囚えられたギルフォード・ダドリー。
彼が牢獄の壁に刻んだ「JANE」の文字に、ふたりの愛と無念を感じました。
こちらも是非、お見逃しなく。

もうひとつだけ。
19世紀末ロンドンを震撼させた連続猟奇殺人の“切り裂きジャック”。
未だ未解決の事件ですが、犯人と目された人物は大勢います。
最も有力な容疑者のひとり、画家のウォルター・リチャード・シッカート。
彼が描いた『切り裂きジャックの寝室』も展示されています。
先入観を持って観るせいか、なんとも陰鬱で閉塞的。
禍々しい空気が画面から漂ってくるようです。

余談ですが、切り裂きジャック事件に新説を上げたこちらの本、お勧めです。
島田荘司著/切り裂きジャック・百年の孤独/文春文庫

100年の時を経て、「切り裂きジャック事件」がついに解かれる
1988年、西ベルリンで起きた謎の連続殺人。5人の娼婦たちは頚動脈を掻き切られ、腹部を裂かれ、内臓を引き出されて惨殺された。19世紀末のロンドンを恐怖の底に陥れた“切り裂きジャック”が、100年後のベルリンに甦ったのか? 世界犯罪史上最大の謎「切り裂きジャック事件」を完全に解き明かした、本格ミステリー不朽の傑作。[文藝春秋公式サイトより抜粋]


お時間に余裕のある方は音声ガイドをお使いになった方がいいかもしれません(閉館が迫っていたので私は借りませんでしたが)。
そのまま観ても面白い展示ですが、歴史背景や構図やモチーフに関して説明を聴きながらご覧になれば、より深く楽しめると思います。

○怖い絵展
会場/東京会場:上野の森美術館
会期/2017年10月7日(土)~12月17日(日) ※無休
開館時間/10:00~17:00 ※11月16日(木)以降、曜日に関わらず毎日9:00~20:00

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野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共に30年(ブランクあり)。全組観劇派。美丈夫タイプの生徒さんが好み。谷正純・酒井澄夫・木村信司・大野拓史作品が好き。観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。

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