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美しいものを見ることは価値がある-麗しの伶美うらら│神々の土地

“美しいものを見ることは価値がある”

『神々の土地』で繰り返される印象的な台詞。
美しいもの=伶美うらら演じる大公妃イリナ。

彼女が居なければ、この舞台は成立しなかったと言っても過言ではないでしょう。

ヒロインが“文句なく美しい”ことで成り立つ舞台。
冷静に考えると凄い話ですね。

女性の美醜の評価は、時代性や宗教観、個人の好み等の条件により左右されます。
しかし、大多数が認める圧倒的な“美”は、確かにその瞬間、存在するのです。

“美”とは何か?
難しい問題ですが、この場合の“美”は端的に言って“心地よい”ことであると思います。

初めて、うららちゃん(伶美)を至近距離で観た時。
銀橋の上から、そっと微笑みかけられた瞬間。
舞台の喧騒も、華やかな衣裳も、周囲にきらめく何もかもが消え、ただただ、その優しい眼差しばかりが私の視界を埋め尽くしたのです。
昔の人は“魂が憧れる”と言いました。
魂が肉体を抜け出て、ふらふらさまよう、まさにそんな感じ。

“まばゆいばかりに美しい”という言葉がありますが、“美”は“光”なのかもしれません。
温かく、きらきらした何かが降り注ぐような感覚。

人を幸福にするものが“美”だとすれば、間違いなくうららちゃんは“美しい”のでしょう。
それはひとつの才能であります。
しかし、不思議とご本人の印象は控えめ。
うららちゃん自身は意外と、自分の“美”に対して無頓着なのかもしれません。
(宝塚の生徒として、美しく在るよう努力することとは別に)

己の“美”に驕らず、謙虚。
それこそ、彼女の美しさが観る者の心へ真っ直ぐに届く所以でしょう。

ロシア語通訳者の米原万里さんの対談集(言葉を育てる 米原万里対談集/ちくま文庫)に、ロシアには『才能は神様からもらったもので個人のものではないという考え方』があると書かれています。
いわゆる『天賦の才能』ですね。
それでいくと、“美”という才能も神からの授かりものである、と言えます。

自分の所有物ではないからこそ、慎ましやかでいられる。
うららちゃんの濁りない美しさの秘密を紐解く鍵はここにあるのかもしれません。

* * *

“美しいものを見ることは価値がある”とは面白い台詞ですね。
“美しいものには価値がある”ではなく“それを見ることに価値がある”というのがミソ。

“才能を持っている人と同じ空間に生きていることを純粋に喜び、そのことを祝福するのです”とは米原さんの言葉。
神々しいばかりに美しいうららちゃんの舞台姿に触れる感覚は、まさにこれ。

ジナイーダ・ユスポワ(純矢ちとせ)とフェリックス・ユスポフ(真風涼帆)。
この唯美趣味の母子が象徴するように、作品全体を貫くのは“美は絶対的に尊い”とする価値観。

侵し難い“美”という軸を中心に、物語が回るのです。
“美”という幹から生え出るのは、愛・聖・醜・喜・怒・哀・悲・怖・畏…の枝葉。

しかし、イリナに関して言えば、中の人同様、己の“美”に対する無関心が彼女の性格を形成していると考えて差し支えないように思います。

イリナは単にみめかたちが美しいだけのヒロインではありません。
気高く、慈悲に溢れ、愛に対して誠実なひとりの女性です。

看護師となった彼女の手肌の荒れ。
どきりとするような生々しい描写です。
ドミトリーの心が完全に奪われたのは、この瞬間かもしれません。
“美の器”イリナの内面が、豊かな水に満たされているのを覗き見ることができる場面です。

* * *

話は変わりますが、美に淫するフェリックスをオリガがなじるシーンがありますが、エルミタージュを擁する国の皇女の言葉としては少々頷けない部分がありました。
財産を持った支配階級が文化の保持に務めるのは当然の義務とするフェリックスの弁明には溜飲が下がりましたが、これはオリガの目覚めの発端の一部であったと考えてよいのでしょうか?
ご覧になった方はどう感じられましたでしょうか?

(超余談ですが、せーこちゃん(純矢)を真風君が「ママ」呼びするのは、なんとも言えない淫靡な響きがありますね)

何はともあれ、「麗しの」という枕詞がぴたりとハマる娘役さんは稀です。
ご卒業にあたり、このような当たり役を観ることが叶い、観客としては大きな喜びです。

「うららちゃん、綺麗!綺麗!」だけで記事が埋まってしまいました。
中途半端で申し訳ございませんが、続きは後日。

○『神々の土地』関連記事はこちら↓
ある朝夏まなとファンの話│神々の土地

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野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共に30年(ブランクあり)。全組観劇派。美丈夫タイプの生徒さんが好み。谷正純・酒井澄夫・木村信司・大野拓史作品が好き。観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。

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