2017/06/26/Mon
ザ・因果応報!源氏物語ダイジェスト│花組 新源氏物語
過去のテキストデータを整理しましたら、ブログを始める前の2015年の花組公演観劇記が残ってました。今更感満載ですが、備忘録として残しておきます。

[2015年10月7日(土)15:00公演]
週末は宝塚観劇&神戸観光のため、羽田から大阪へひとっ飛び。
午前中に伊丹空港に着き、阪急電車で兵庫県宝塚市へ移動。
マルーンカラーの車体がホームに滑り込んでくると、おのずと観劇気分が高まりワクワクします。
演目は『新源氏物語』、併演のレビューは『Melodia―熱く美しき旋律―』の二本立て。
最古の長編恋愛小説として親しまれてきた『源氏物語』54帖を扱った今回の作品。
帝の第二皇子として生まれ、美貌と才能に恵まれながらも満たされない愛を求めてさまよった光源氏(明日海りお)の生涯。
美しさもドラマ性も、これを舞台化できるのは宝塚歌劇以外には無いとの期待通り、華麗な王朝絵巻の世界を堪能しました。
幕開き一斉にライトが点った瞬間、目に飛び込んできたのは大階段に敷き詰められた緋毛氈にずらりと並ぶ、狩衣姿も凛々しい公達、色とりどりの十二単をまとった美女たち。
生きた雛人形のように鮮やかで、この瞬間を観るだけでもチケット代の価値はあるというもの。
ストーリーは“ザ・因果応報!源氏物語ダイジェスト”といった趣。
100分で54帖を網羅するのは不可能に近いですが、原作のエッセンスを上手くすくい上げ、初めての人にも分かりやすく仕上げていたように思います。
源氏を取り巻く女人たちも大胆に割愛され、すっきりしています。
登場するのは、藤壺の女御(花乃まりあ)・紫の上(桜咲彩花)・葵の上(花野じゅりあ)・六条御息所(柚香光)・朧月夜(仙名彩世)・女三の宮(朝月希和)のみ。
空蝉も夕顔も花散里も玉鬘も誰かのセリフで触れられるだけ、もしくは全く出ない。
源典侍や末摘花のエピソードは盛り込んだ方が、源氏の懐の広さが表せられていいんじゃないかなーと思うのですが…(※後述参照)
いかんせん100分では厳しいでしょうか?
個人的には明石の方すらカットされたことが驚き(明石の入道[夕霧らい]は登場する)。
登場人物を絞った分、源氏の罪と因果応報の関係性にスポットが当てられ、これはこれで良かったかも?
源氏物語にはあまり詳しくない連れ合いも終演後「面白かった、来て良かった」と喜んでいました。
* * *
※2017年6月26日(月)加筆
>源典侍や末摘花のエピソードは盛り込んだ方が、源氏の懐の広さが表せられていいんじゃないかなーと思うのですが…
上記について、ロシア語会議通訳・作家の米原万里さんと、イタリア語会議通訳・翻訳者の田丸公美子さんの対談に、ちょっと面白い解釈がありましたのでご紹介。
米原:男にとって誰でも見境なくくどくことはすごく大切なの。光源氏やドン・ファンやカサノヴァがなぜこれほど愛されているかというと、老若美醜にかかわらずあらゆる女性とやったからなのよ。
田丸:つまり功徳を施しているのよね。
米原:そう。狭い自分の好みに縛られていると、愛されないのよ。
[言葉を育てる 米原万里対談集/ちくま文庫 より抜粋]
現代の感覚からすると、源氏っていまいち共感を得られにくいキャラクターだと思いますが、一度関係を持った女性は最後まで面倒を見るところは評価できます。
だからこそ、時間が許せば単なるダイジェストに留めず、源氏の多面的魅力がしっかり描かれたフルバージョンで観たいと思うのです。
個人的には、須磨から戻り、六条に邸を構え、政治家としての手腕を発揮し、この世の栄華を一身に集めながらも、若き日の過ちの因果応報を味わう、壮年期の源氏に魅力を感じます。
繰り返しになりますが、やはり源氏と女人たちの生涯を100分に収めるのは難しいと感じます。
せめて一本物。
または、青年期と壮年期に分けて、組をまたいだ連続公演でも面白いのではないかと。
四半世紀ほど前、TBSの特別番組で『源氏物語』が放送されました。
青年期は東山紀之さん、壮年期は片岡孝夫(現:仁左衛門)さんが演じられましたが、その美しかったこと。
いまでも忘れられません。
藤壺女御と紫の上は大原麗子さんの二役。
他のキャストも超豪華、セットも素晴らしく、まさに動く王朝絵巻そのものでした。
放送時間は一部二部合わせて、なんと8時間。
源氏の壮大な一代記を描くには、これくらいのボリュームが欲しいところです。
3時間×2公演、休憩時間を除くと正味約5時間。
語り手として紫式部を配し、専科さんに特出いただいたら、連続公演が成り立つのではないかと。
宝塚歌劇110周年の節目に実現しないかなぁ…なんて密かに期待しています。
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