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愛する男(伊佐次)を失った卯之助とおしまの行く末は?│長崎しぐれ坂

ちゃぴちゃん(愛希れいか)出演作、掘り起こし感想の続き。
ずいぶん長い間寝かせていたので、改めて読み返すと当時はこんな風に感じていたのか、と新鮮な気持ち。
昨年5月の博多座公演『長崎しぐれ坂』のDVDを観た感想です。

* * *

改めて映像で観ると面白いですねー。
もちろん劇場で観た時も面白かったですが、初博多座+月組+珠様(珠城りょう)のトリプルコンボで浮かれ過ぎ、物語に集中してたかというと怪しい…

基本的に舞台の感想と大差ないですが、じっくり腰を据えてストーリーを追っていくと、気づかなかったことが見えてきて、じわじわ面白さが沁みてきました。

私、この作品かなり好きかもしれません。
むしろ『好きな演目ランキング』上位に入るかも。

物語を覆うやるせなさ、登場人物たちが抱える閉塞感。
言い様のない幕引きの虚しさ。
こう書くと陰鬱なイメージですが、不思議と後味は悪くないのですよね。
すべて浄化されるというか…

一から十まですべて説明し尽くされる芝居は好みではありません。
さまざまな解釈の余地を残す幕切れ、その余韻が『長崎しぐれ坂』にはありました。
そんなところが、この作品を好きな理由のひとつなのかもしれません。

* * *

とりあえず思いつくままに。

まず、伊佐治(轟悠)と卯之助(珠城りょう)が同い年の設定で、おしま(愛希れいか)が4歳下の設定でしたが、これは卯之助が最年少の方がしっくりきたかな?と。
卯之助の人物像からして、年上のお姉さんに憧れる少年像がハマるように感じたので。
とはいえ、子どもの頃は女の子の方がませているので、年齢より大人びた伊佐次とおしまに対して憧憬を抱く卯之助の図も悪くないのですが。

卯之助という男について、もう一度考えてみましょう。
思いきり穿った見方をすれば、こいつはとんでもない男です。

底の見えない男、矛盾だらけの男、卯之助。
行動原理がいまいちつかめない。
伊佐次に対する行動は、友情なのか愛情なのか、献身なのか憐憫なのか。

「こうあるはず」のタガを外して自由に考えてみると、とどのつまりは「伊佐次を死なせたくない」「自分の手の内に収めたい」。
そんな男じゃないことは百も承知ですが、卯之助の行動に整合性を求めると、どうしたってそこへ行き着くのです。

幼い頃の憧れだった男が、地に落ち、泥にまみれている。
伊佐次を救う道が断たれたならば、せめて自分の手で縄をかけたい。
しかし、卯之助が選んだ手段は…

相手を閉じ込めて離さない愛。
危うい境界をさまよう卯之助の心と、裏腹の結末。
これまでの珠城りょうの男役像に無い役で、新たな魅力を開花させました。

* * *

伊佐次を演じたトド様(轟)。
頭抜けて鮮やかな所作が目を引きます。
パッと裾をまくる、懐手をする、洋物芝居には無い動きの鋭さはさすが。
「色悪」という言葉がぴったりの男盛りの色気がこぼれんばかり。
これは女たちが放っておかないでしょう。

トド様本来の無頼の味が活きましたが、もうひとつ江戸を揺るがす大悪党っぷりが伝わる演出が欲しかったですね。
殺しや盗みを重ね、長崎まで流れ着いた男。
捕まれば死罪を免れない、崖っぷちな男。
伊佐次が抱えるヒリヒリした切迫感が、物語を彩るエッセンスとなるのです。

手下や李花(憧花ゆりの)を殴るだけじゃ、自分より弱い立場の者にしか手を上げられないちんけな男になってしまいます。
殴った後に抱いて慰めるようなクズっぷりもまた、伊佐次という男の凋落ぶりを示しているのかもしれませんが。

「女を殴る」そんな最低な男に成り下がった伊佐次。
そこには幼い頃、男としての生き方を教えてくれた伊佐次の面影はありません。
そんな男であっても救いたい卯之助。
かつての輝き、優しい思い出。
伊佐次を見殺しにすることは、卯之助自身の過去をも殺すことなのです。

伊佐次、おしま、卯之助。
彼らは誰ひとりとして前を向いていません。
ただ過去の中に光を求め、今に背を向けている。
息詰まるような関係です。

夏の終わりの生暖かい湿り気を含んだ重苦しい空気。
単調でもの悲しい『精霊流し』の「ドーイ、ドーイ」の声。
ゆるゆると、やるせない哀しみが胸に満ちる物語でした。

それぞれ違った形で伊佐次を愛した卯之助とおしま。
シーソーのように危ういバランスで運命は変わり、嵐の海に浮かぶ小舟のように翻弄されるふたり。
残された彼らがその後どのような人生を歩んだのか。
ふたりをつなぐかすがいであった伊佐次を失った彼らは二度と相まみえることはなかったように思えるのです。

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宝塚歌劇と共に30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
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