FC2ブログ

大劇場と東京は別物!?│グランドホテル台詞追加・演出変更点

『グランドホテル』東京版と大劇場版の変更点。
ざっくりですが備忘録的に残しておこうと思います。
[※2017.3.9 追記有り]

東京公演の第一印象は「随分親切になった」。
若干わかりにくかった部分がきちんとフォローされていました。

目立った台詞の追加は以下の箇所。

◇オットー・クリンゲライン(美弥るりか)
宿泊を断られ、ローナ支配人(輝月ゆうま)に詰め寄るシーン。
「私がユダヤ人だからですか?」

予約を無視されたのは、オットーの身なりがみすぼらしく格式あるホテルに相応しくないというのが理由でしょうが、この台詞が追加されたことにより、ナチス・ドイツが目前に迫る不穏な時代の空気がより明確に打ち出されました。

◇フラムシェン(早乙女わかば/海乃美月)
ボーイフレンドに妊娠の可能性を告げるシーン。
「こないのよ!アレが!」

大劇場では「あたし“ミス・スイス時計”だもの」のみでしたが、あからさまに言い切ってしまいました。
スイスメイドの時計のごとく正確な月経が2週間も遅れている。
「時間が無いの」「お願い、お金を送って」
これらの台詞が意味するところは明白ですね。
彼女の人生の混乱っぷりがどう収束するのか…観客もハラハラします。

◇フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵(珠城りょう)
オットーに対して。
「このホテルでは何でも(価格が)倍になる」

この台詞は大劇場でもありましたっけ?
ちょっと定かではありませんが念の為。
ホテルの格を物語るようであり、オットーの懐具合を探るようでもあり。

※[2017.3.9 追記]男爵の台詞は大劇場からあったそうです。
K様、ご指摘いただき誠にありがとうございました。


* * *

細かい言い回しの部分では、フラムシェンから男爵への呼びかけが『あなた』から『あんた』に変わりましたね。
「あんた、あたしが何もかも捨てて、あんたのところに飛んで行くと思ってるのね?」
ちょっと蓮っ葉でチャーミングで自己評価の高い女の子の感じが強まりましたね。

それを受けたフェリックスの「うん…頼むよ」の言い方、さらに色気が増して何よりです。
遊び慣れた風に女の子をあしらう珠様(珠城りょう)って新鮮ですね。
割と無骨で一途な男の役が多かったので。
女性の心を蕩かす甘くソフトな囁きにグッと心を掴まれました。

運転手のとしさん(宇月颯)は、より崩れた感じが増しましたね。
登場時からものすごいガニ股でぐいぐい回転扉をくぐってくるのですよ。
煙草をふかしつつ盛大に肩を揺すりながらのガニガニ歩きで、どういう階層のどういう人格の男か如実に語ります。
男爵の運転手でなかったら確実につまみ出されていますね。
「○○しちゃいなさいよ」の言い方も、ねちっこさ倍増「しちゃいなさーいよ」と語尾伸ばし。

としさんはいかにも舞台らしいお芝居をされますね。
TVや映画のそれではなく、劇場という広い空間へ向けての演技。
きりやん(霧矢大夢)や、からんちゃん(千海華蘭)にも同じ匂いを感じます。
娘役さんだと、すーちゃん(憧花ゆりの)や、さちかちゃん(白雪さち花)。
個人的に「月組らしいなぁ」と思う生徒さんたちです。

エリザヴェッタちゃぴちゃん(愛希れいか)が、また進化しています。
彼女はどこまでいってしまうのか。
“Bonjour,Amour”は『グランドホテル』の白眉ですね。
もちろん、他にも名シーンは沢山ありますが(むしろ全てが名シーン)、この場面ひとつだけを抜き出しても小品として十分成り立つ完成度。
恋の喜びが溢れ出すさまを鮮やかに印象づけます。

フェリックスがエリザヴェッタの部屋へ忍び込むシーン。
首飾りを盗みに来たことをごまかすため、とっさにフェリックスの口から飛び出た言葉。
「あなたが呼吸する空気を呼吸するためなのです!」
しどろもどろな棒読みっぷりが悪に徹しきれないフェリックスの不器用さを表します。

東京ではさらに「スーッ、ハーッ」と深呼吸が追加されました。
エリザヴェッタどん引き、観客もどん引き。
『アーサー王伝説』の「あーっ!心の臓が!!」のような、むず痒い気恥ずかしさと居たたまれなさが客席を覆います。
「フロントを呼ぶわ」というエリザヴェッタに同情しますが、むしろここでそつなく振る舞えるような男なら、あんな末路をたどることはなかったですね。

ちなみに先日は、解せない表情を浮かべつつフェリックスに合わせて深呼吸するエリザヴェッタが観られました。
「どんな空気なのかしら?」といった風に。
これは良いフォローですね。
相手の言葉に素直に反応してしまうエリザヴェッタの可愛い一面が垣間見えるようで。

* * *

さて、東京版『グランドホテル』。
全体的には、よりこなれて厚みが増した印象です。
特に個々の芝居が素晴らしい。
役者の芸名を忘れ、絵空事を観ている感覚が消え失せ、舞台と一体化する瞬間が多々あります。
千秋楽を迎える頃には、どれだけ進化しているのか?
もはや大劇場版とは別物ではないかという気すらします。

しかしながら、大劇場版と東京版、どちらの演出が好みかと問われれば、大劇場版に軍配が上がります。

理解を助ける説明的な台詞や演出が追加されたことにより、ヴェールが剥ぎ取られたと言いますか。
琥珀色の薄明かりと紫煙の中でおぼろに霞んでいた何かが白日の下にさらされたような。
東京版は空気清浄機をかけられスカッとクリアになった感じです。

わかりにくい箇所をわかりやすくするよう手を加えることは大切ですが、観る側の想像や考察の余地を奪い取ってしまうのは味気ないですね。
特に、オットーの人種とフラムシェンの月経に関する台詞は蛇足感が否めません。
すべてに模範解答を示されるのは興ざめです。

* * *

逆に、観客の目から隠すことで面白みが薄れたのがフェリックスとエリザヴェッタの愛の夜。
大劇場版では、薄明かりの中での恋人たちの動作がほのかに見えたのです。
ひざまずいてエリザヴェッタのシューズを脱がせるフェリックス。
薄闇にぼんやり浮かぶエリザヴェッタの白い体の美しかったこと。
彼女を優しく長椅子に横たえ、そっと隣に滑り込むフェリックス。

別室で煙草をふかしながらエリザヴェッタへの積年の想いを吐露するラファエラ(朝美絢/暁千星)の横で、そんなシーンが繰り広げられていたのです。
愛の明暗がくっきり際立つ場面でした。

年上の女性を優しくリードし、労りながら愛を捧げるフェリックス。
先に目覚め、眠る彼女をふんわり包み込むようにショールをかぶせるシーンに、彼の想いが十分深まったと感じ取ることができました。

が、なんと東京ではこのシーンの照明がほぼ落とされてしまっているのです。
事前に教えていただいてましたのでショックは薄かったですが、これは改悪と言わざるを得ません。
この場面の存在が、その後の物語の奥行きに大きな影響を与えると思うのですが…

暗転から、いきなり朝。
ふたりの間に何があったかは明らかで、それこそ想像で埋めるよう要求されればそれまでですが。
ちょっと潤いに欠ける気がしますね。

すみれコードに抵触したのでしょうか?
プライジングとフラムシェンの方がよほどすみれコードアウトな気がしますが。
あからさまな性行為を想起させるシーンはNGなのかしら?
あれ?でも『激情』は?
まあ、決まったことは仕方ないのでせいぜい心の目で補うことにします。

ちっともざっくりじゃなかったですね。
大劇場からはだいぶ経っていますので曖昧な部分が多々あるかと思います。
「ここはこうだったよ」という箇所がありましたら是非教えてくださいませ!

↓ブログランキングに参加しています↓
よろしければ応援クリックお願いします

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

↓Twitter(ブログ更新情報)↓
‎@noctiluca94

○グランドホテル関連記事はこちら↓
タカラジェンヌ×煙草=???
グランドホテル備忘録│細々あれこれ、気になるシーン
ありがとう!素晴らしい舞台でした│グランドホテル
私・僕・俺、一人称に隠された男爵の心とは│グランドホテル
衝動のままに!『グランドホテル』2階席観劇記(2)+東京版舞台写真がどれも素敵!
人生はチェスのように│全く新しい景色が広がった『グランドホテル』2階席観劇記
まゆぽん支配人はロシア語で何と言っているの?│グランドホテル
大劇場と東京は別物!?│グランドホテル台詞追加・演出変更点
【ラファエラ役替り】剛の暁千星、柔の朝美絢│グランドホテル
1ヶ月ぶりの『グランドホテル』に胸がいっぱい!取り急ぎ感想(1)
過去最高のカッコよさ!グランドホテル東京公演プログラムの珠城りょうがすごい!
ダジャレに期待!公演デザートネーミング予想│グランドホテル/カルーセル輪舞曲
『グランドホテル』屈指の難役ラファエラ・オッタニオ│変化する愛の形
3枚選ぶならどれにする!?どの珠様も素敵な月組舞台写真
金で幸せは買えないが、金で手に入る幸せはある│グランドホテル
「○○しちゃいなさいよ」不気味な存在感が光る宇月颯│グランドホテル
“珠城りょう=美丈夫(顔や姿の美しい立派な男性)”な『グランドホテル』
たった一日半に生きる喜びを凝縮した男爵│グランドホテルに感じる無常
ちゃぴちゃん、やっぱりあなたは最高!│グルーシンスカヤのイノセンス
観れば観るほど、また観たくなる│グランドホテル/カルーセル輪舞曲
“運転手=宇月颯”にガッツポーズ!そしてダメンズ(?)珠様の魅力―『グランドホテル』配役発表
ゴールデントリオ誕生の予感!?『グランドホテル/カルーセル輪舞曲』制作発表会
トップページが美しすぎて…『グランドホテル』に高まる期待
珠様カッコよすぎ!『グランドホテル』ポスター
トップページが美しすぎて…『グランドホテル』に高まる期待
関連記事
スポンサーサイト



コメント

No title

え、男爵とグルーシンスカのラブシーンって暗転してましたっけ??
なんか私、ずっとふたりの姿見てた気がするんですが、
もしやあれは私の妄想が見せた幻影だったのかしら?
心の目??笑

それにしても大劇場と東宝では結構違いがあるんですねー!
お芝居って本当生き物みたいですね。

Re: No title

ラブシーンの途中で暗転するんです。
男爵とグルーシンスカヤのデュエットソング“Love Can't Happen”の後に暗転して、隣の部屋(?)でラファエラが煙草をふかしながら『私は強くないし賢くもない』とボヤくんです(ラファエラが青に赤いラインの入ったチャイニーズテイストの部屋着を着ているシーン)。
暗転の間、珠ちゃんがちゃぴちゃんの服やシューズを脱がせたりしています。
そして、再びライトがつくと、ちゃぴちゃんが“Bonjour,Amour”を歌う、という流れです。

黒猫さんはきっと心の目でご覧になってたんですよ!

そうですね、演出も変わるし、演技も日によって変わるし…面白いですよね!
ちなみに今日の昼公演は、ちゃぴちゃんの「スーハー」はなかったですね。
割とすぐ通報しようとしてたような…
※任意
※任意
※任意
※任意
※任意
非公開コメント
※必須

プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共に30年(ブランクあり)。全組観劇派。美丈夫タイプの生徒さんが好み。谷正純・酒井澄夫・木村信司・大野拓史作品が好き。観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。

◇更新情報はこちら◇
Twitter‎@noctiluca94

ブログ内検索とタグクラウド

最新記事

カレンダー

07 | 2021/08 | 09
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

カウンター

宝塚歌劇団人気ブログランキング

にほんブログ村ランキング

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
13位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
演劇
2位
アクセスランキングを見る>>

ブロとも一覧

ブロとも申請フォーム

noctilucaにメッセージを送る

お名前:
あなたのメールアドレス:
件名:
本文:

QRコード

QR

**