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ちゃぴちゃん、やっぱりあなたは最高!│グルーシンスカヤのイノセンス

ちゃぴちゃん(愛希れいか)、あなたはやはり最高です!

珠様(珠城りょう)のお披露目が『グランドホテル』と知った時、一瞬「えっ?」と思ったのです。
初演のカナメさん(涼風真世)オットーのイメージが強かったので。

しかし今回は原作通り、ノンちゃん(久世星佳)が演じられたガイゲルン男爵が物語の中心になると聞き、腑に落ちました。
とは言え、正直、若いトップさんのお披露目としては重厚に過ぎる演目だなぁ…
しかも、男爵って○○で△△で挙句に□□しちゃうしなぁ…
なんて、あれこれ考えていたのです。

しかし、蓋を開けてみれば、私のつまらない心配は完全に杞憂でした。
素晴らしいじゃないですか!新生月組の『グランドホテル』!
言葉・動き・装置・音楽…お芝居を構成する要素の全てが複雑に絡み合い、ひとつでもタイミングを外したら何もかもが崩れてしまう緊張感に満ちた舞台。
世界恐慌前夜のベルリン、高級ホテルに集う人々の様々な人生を切り取った物語。

久々に上質な芝居らしい芝居を観た!と、満たされた気持ちで劇場を後にすることができました。

新しい『グランドホテル』がここまでの完成度をみせたのは、主な出演者たちの個性がグランドホテルの住人たちのそれに、ずばりハマったことが大きいのではないでしょうか。
美しく快活な青年貴族、フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵(珠城りょう)。
不治の病に冒された簿記係、オットー・クリンゲライン(美弥るりか)。
特に、引退間近のバレリーナ、エリザヴェッタ・グルーシンスカヤを演じたちゃぴちゃんの存在の重さは計り知れません。

彼女がいたからこそ、男爵主演(=エリザヴェッタがヒロイン)の再演が叶ったと言っても過言ではありません。
それほどのインパクトを、私は彼女から受けたのです。

傲慢で享楽的、しかしどこか虚ろな男爵。
踊りがすべて、しかし踊ることへの情熱を失いかけているエリザヴェッタ。
人生の一瞬にすれ違い、愛を交わした二人は互いを知ったことにより、それぞれの魂を甦らせます。

登場時の彼女は、思うように事が運ばないもどかしさから自信なさげで不安定な態度。
ややヒステリックでわがままな振る舞いが目立ちました。
率直に言うと「嫌な女」の印象を受けました。
声色や仕草で、もう決して若くはない女の風情を醸し出す彼女。

しかし、ひとたび純白のチュチュをまとい、踊り始めると、そんな印象は消し飛びます。
ほの暗い舞台の中央でスポットを浴びて舞う彼女の静謐な美しさ。
どこか違う世界に生きる人間のように遠く見えるのは、彼女がひたすら踊ることにのみ人生を費やしてきたことの表れなのかもしれません。

ちゃぴちゃん、あなたは最高!と強く感じたのは、男爵と愛を交わした翌朝のシーン。
男爵の万感の想いがこもった「エリザヴェッタ、朝だよ、Bonjour」を受けての彼女の言葉。
「Bonjour…おはよう」
そして、続く“Bonjour,Amour”の歌。
ここはもう、ちゃぴちゃんの独壇場。
両手を上げ、脚をばたつかせ、溢れ出る感情のままに振る舞う彼女。
生き生きと明るく、弾けるような愛の喜びに満ちたこのナンバー。

信じられますか?
彼女はここで一瞬にして瑞々しい華やぎを取り戻すのです。
39歳と39ヶ月、バレリーナとしても女性としても夏の盛りを過ぎ、秋の季節に足を踏み入れた女性が、春の光を浴びたように輝き出します。
拭いきれない疲れを滲ませていたような彼女が、少女のように頬を染め、弾むように明るい笑顔を見せるのです。
そこには、前夜までのどこか乾いた女の面影はありません。

ちゃぴちゃんの実年齢は20代半ばくらいですよね?
つくづく役者に年齢は無いと感じます。
歌舞伎でも還暦を過ぎた役者がお姫様を演じたりもしますが…
演じることで、少女にも老婆にもなれる。
それが芸の力なのでしょう。

「女の子は何人か知っているけど、女性に出会うのは初めてだ」
29歳と29ヶ月の男爵は、エリザヴェッタの瞳の中に彼女が経てきた歳月と経験の確かさを見出します。
(肉体的な)若さだけでない、成熟した女性の価値を計ることができるのは、彼もまた生きることの重みを知っていたからでしょう。
今は投げやりに日々を送る彼ですが、エリザヴェッタに触れ、もう一度立ち上がる気が起きたのだと感じました。

まさに“Bonjour(おはよう)”。
男爵もエリザヴェッタも、思いがけない愛の一夜から人生の目覚めを共に迎えたのです。
フェリックスもまた人が変わったように生き生きと輝き出します。
今までのように見せかけの快活ではありません。
生きることに真摯に向き合うようになった男の、こぼれんばかりの愛嬌が彼から発せられます。
彼らは互いを救い合ったのでしょう。

しかし、それも束の間。
男爵を死の影が覆います。
フェリックスに生きる喜びを与え、与えられたエリザヴェッタが、幻想の中では彼に死の口づけを授けます。
男爵の人生に予想外に飛び込んできた彼女。
彼女の登場が男爵の突発的な死の引き金になったと考えると、非常に暗示的なシーンとも言えます。
『Death/Bolero』の流れるこのシーン、美しく激しく切なく、忘れられません。

何も知らないエリザヴェッタがロビーで男爵を待つ間、フロント係のエリックに息子が生まれたことを知り、また少女のように笑うのです。
男爵は死に、入れ替わりに新しい命が生まれる。
赤ん坊もまた人生の朝を迎えたばかり。
男爵の愛により生まれ変わったエリザヴェッタの心も、リトル・エリックのように初々しい希望でいっぱいなのでしょう。
彼女の無垢な笑顔に胸が締め付けられるようでした。

「あの方は駅でお待ちですよ」
ラファエラの言葉に、顔を輝かせる彼女。
弾むように回転扉をくぐる彼女の動きがぴたりと止まります。
扉の向こう側から男爵の幻影が姿を現すのです。
エリザヴェッタには彼の姿が見えているのでしょうか?

何かの気配を感じたように、不思議そうな、少し怯えたような表情を浮かべる彼女。
彼女の胸に去来したものは何だったのでしょうか?
恋する者の直感で瞬時にすべてを悟ったかもしれません。

彼女はこの後、どのような人生を送ったのでしょうか?
「踊らないと駄目なの」と語った彼女。
やがて訪れる激動の時代、フェリックスが灯した胸の炎を消さずに生き延びられたでしょうか?

一瞬のうちに燃え上がる愛によって、男爵に束の間の命を吹き込んだエリザヴェッタ。
彼を甦らせることにより、自分もまた情熱を取り戻した彼女。
男爵とエリザヴェッタから発せられるエネルギーがイーブンでないと、この演目の見応えは半減すると思うのですが、その意味では珠男爵と同等の力で渡りあえるちゃぴエリザヴェッタを観られたことは本当に幸せでした。

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コメント

私も早く観劇したいー!

こんばんは。

noctilucaさんの感情こもった素敵なレビュー読んだら、私も早く観たくなっちゃいました!
2月後半までお預けなのですが、
チケット買い足したくなっちゃいましたー!
むしろ遠征??
衝動と闘ってます。。。

Re: 私も早く観劇したいー!

こんばんは!
コメントありがとうございました!

ちゃぴちゃんファンの黒猫さんがご覧になったら彼女のことが益々好きになると思いますよ!
普段のあどけなさから一体どのようにあれほど化けられるのか…

もし、買い足しor遠征が可能でしたら是非そうされることをオススメします!
観れば観るほど、みどころが増えていく不思議な演目なんですよ。
しかも、ステージの両端で重要なシーンが演じられているので目が足りないという…
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プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共に30年(ブランクあり)。全組観劇派。美丈夫タイプの生徒さんが好み。谷正純・酒井澄夫・木村信司・大野拓史作品が好き。観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。

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