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子犬の顔をした狼、愛希れいかの巧すぎて怖いマイムに戦慄『アーサー王伝説』

突然ですが、私、操り人形というものが怖いのです。
特に、大道芸でヴァイオリンを弾いたりするような、わりと大きくてリアルな造形のものが。
命が宿っているような表情が怖いのか。
意思に反して動かされてる(操られてる)ぎこちなさが怖いのか。

芸を見せていない時の、糸の張力を失ってぐんにゃりしている姿、虚ろな目やあり得ない方向にねじれた関節も怖い。
服従し、操られる素振りを見せながらも、腹の中では何を考えているかわからない。
心の底が覗けない感じに恐怖を覚えるのかもしれません。

とは言え、所詮人形は人形です。
『チャイルド・プレイ』ではあるまいし、まさか夜中に動き出すはずもなく。
なんとなく薄気味の悪さを感じながらも、そこまで大仰に怖がるわけではありません。

ところが、居たのです!
夢に見そうな怖ろしさを秘めた生き人形が!
『アーサー王伝説』の舞台上に!

アーサー王(珠城りょう)と、カリメルドの姫グィネヴィア(愛希れいか)の婚礼の祝宴。
アーサーの異父姉モーガン(美弥るりか)が旅芸人の一座に扮し、狂言を披露します。
演者として出演を請われるアーサーとグィネヴィア。

狂言の内容はアーサー本人すら知らない彼自身の生い立ち。
アーサーの父、ウーサー王は部下の美しい妻に懸想し、犯してはならない罪を犯します。
マーリンの魔法で家来に化けて、その妻を奪ったのです。
その家来とはモーガンの父でした。
やがてモーガンの母はアーサーを産み落としますが、絶望した彼女は自ら命を絶ちました。

孤児となったモーガンは孤独と辛酸を嘗めます。
自分の愛も家族も奪った男、ウーサー王の息子こそアーサーであると満座の中で暴露するのです。
幸福の絶頂で信じがたい出生の秘密を明かされ、取り乱す若き王。
モーガンを牢に押し込めろと命ずるアーサーを止めたのはマーリンでした。
モーガンをキャメロットに住まわせなければならないと進言するのです。

まっさらな気持ちで初日に臨みたくて一切の情報をシャットアウトしていた私。
ただし、振付家のパーツ・イシバさんのツイートで、劇中にマイムが導入されることだけは知っていました。
宝塚でマイム?どんな感じだろう?と楽しみに劇場へ向かいました。
一部にちょっこっと取り入れられる程度かな?と思っていたら結構ガッツリで。
何よりその完成度に驚かされました!
一部のみの演出かな?と思っていましたが、ほぼ全編にわたり採用されていましたね。
特に、アーサーの兄ケイを演じたやすちゃん(佳城葵)が素晴らしくて!
↓詳細は別記事にて
劇場中の愛を一身に集めたアーサー王の兄ケイ(佳城葵)

私の中の潜在的な人形への恐怖心を掘り起こしたのは、ちゃぴちゃんでした。
寸劇で、モーガン(とアーサー)の母役を割り当てられた彼女。
モーガンの号令で、人形と化します。
言葉通りのことが舞台で起きたのです。
体は棒と化し、呼吸すら止まったように生気を失うちゃぴちゃん。

目から光が消え失せ、一切の表情を失い、ギクシャクと動き回ります。
硬直した関節、カクンカクン動き、ぶらりと垂れ下がる四肢。
まさに等身大の人形が、見えない糸に操られているようです。

体を重ねた相手が夫ではなかった絶望。
無表情からにじみ出る狂気が確かに感じられました。
声なき叫びを上げ、自らの首を掻き切る仕草を見せ、糸が切れたように崩れ落ちた瞬間、恐怖が頂点に達します。
怖い!
怖すぎる!
でも目をそらせない!
ちゃぴちゃん、あなたは一体何者なの!?
このシーンは彼女の独壇場と言っても過言ではありませんでしたね。
不吉で怖ろしい、しかし不思議な美しさに満ちたシーンでした。

ちゃぴちゃんはラストシーンで見せた狂気も凄まじかったですが、このマイムでは何か振り切れたような気迫を感じました。
衝撃の結末!珠城りょうの愛と、愛希れいかの凄み『アーサー王伝説』

子犬のような愛らしい容姿に惑わされがちですが、彼女の本質はもっとむき出しの獣性にあるのではないかと感じます。
彼女の内部に、表現者として抑えきれない獰猛な何かが巣食っているのではないか。
もっともっとホリゾントいっぱいに自由に踊り、翔び、吠え、叫ぶ彼女が観たい。
いわゆる宝塚の娘役に求められる枠からは外れるかもしれませんが、彼女なら軽々と飛び越えてしまいそうな気さえします。

『GOLDEN JAZZ』のアフリカの場面の鮮烈さは記憶に新しいところですが、肉体そのものが持つ力を存分に発揮できるシーン、赤裸々な彼女を堪能できるシーンを観せてくれないかと思ってしまうのです。

今更ながら、カルメンの「あたいは狼なのさ」という台詞が腑に落ちてきますが、彼女の稀有なところは男を喰い物にするヴァンプを演じても失われない不思議な少女性を持ち合わせていること。
グィネヴィアは二人の男性の間で揺れ動く役。
生々しい台詞や描写もありましたが、えげつなくならなかったのは彼女の清らかさによるところが大きいと思います。
グィネヴィア、素晴らしかったです。

まだまだ未知なる可能性を秘めているちゃぴちゃん。
グルーシンスカヤではどのような姿を見せてくれるでしょうか?
お正月公演が楽しみです。

余談ですが、マイムの場面ではモーガンの父に扮した珠様(珠城りょう)も凄かったですね。
頭を下げ、肩は床と平行に、肘から先はぶらりと垂らし、膝下はハの字。
出番を待つ操り人形のようなポーズでピクリとも動きません。
このポーズ、相当キツイのではないでしょうか?
私だったらぷるぷるしちゃいます。
動くのも難しいですが、微動だにしないのも難しいこと。
短いお稽古期間でここまで仕上げてくるジェンヌさんたち、本当に尊敬します。

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プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共に30年(ブランクあり)。全組観劇派。美丈夫タイプの生徒さんが好み。谷正純・酒井澄夫・木村信司・大野拓史作品が好き。観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。

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