FC2ブログ

ここが好きだよ!エルハポン―大野拓史、ロマンの結実│El Japón

すっかり『El Japón -イスパニアのサムライ-』がお気に入りの私。
わーっと話が広がって、ガーッと(半ば強引に?)めでたし!めでたし!
誰も泣かず傷つかず、恋の花もひとつふたつ咲き…

肩肘張らずに観られる娯楽作品はいいですね!
きらびやかなショー『アクアヴィーテ!!』とのコンビネーションも◎
(酒場のシーンで「生命の水」って台詞もありましたね)
(一幕と二幕をつなぐ遊び心、好きです)
(『BADDY』の「月が綺麗なんてとんでもない」とか)

「楽しかったね」と言い合いながら劇場を後にできる。
お正月から、そんな作品に出会えて嬉しいです。

お芝居と旅する心


お芝居を観る楽しみって何でしょう?
私にとっては、旅に出たり、本を読んだりするのと一緒。
お芝居を通して、新しい世界を知り、新しい自分に出会うことなのです。

大野拓史先生は、学校で習う歴史を、別な側面から描いてくださるから好き。
慶長遣欧使節や伊達政宗、支倉常長…
「知識」として知っていた彼ら。

しかし、蒲田治道という人物を主人公に据えることにより、物語はグンと自由度を増し、活き活きと血の通った「芝居」として生まれ変わるのです。

恥ずかしながら、この作品で初めて蒲田治道の存在を知った私。
大野先生のインタビューにありますが、和賀の反乱で亡くなったとされる治道。
しかし、前後の状況から「生き延びていた可能性を創りだす余地がある」と考えられたそう。

宝塚歌劇団│宝塚ミュージカル・ロマン 『El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-』の見どころ<前編>

スペイン南部の町コリア・デル・リオに「サムライの末裔」を自認する「ハポン(日本)」姓の人々がいる。
なぜ遠い異国の地に日本の侍の伝説が残ったのか…。
[公式サイトより抜粋]

この不思議なエピソードが、作家のイマジネーションを大いに刺激したことは想像に難くありません。
なぜ、ハポン姓を名乗る人々が現れたのか?
もしも、生き残った治道がハポンの祖だったとしたら?

バルトロメ・ハポンって誰?


「バルトロメ・ハポンとして生きろ」
物語の最終章でアレハンドロ(芹香斗亜)が治道に告げます。

蒲田治道→バルトロメ・ハポン。
忘れられない過去を負った治道が同じ境遇にあったカタリナ(星風まどか)と出会い、文字通り「生まれ変わる」。
そう来たかーーー!!!という感じですね。

ところでバルトロメって誰?の疑問にはカタリナが答えます。
「亡くなった夫の名前よ」

ふーん、そうなんだーと、深く考えずにいた私。
帰宅後、なにげなく物語の舞台となったコリア・デル・リオを調べたら、驚きの記述が!
Wikipedia│コリア・デル・リオ

1647年の町の徴兵記録にはバルトロメ・ハポンの名があり、コリア・デル・リオにおけるハポン姓の現れはじめと見られるが、同時に彼は36歳とも書かれている。徴兵記録において年齢のかさ上げは常態化していたとされるが、記録に従えば使節団の日本出発以前に生まれていたことになる。


バルトロメ・ハポンがいた!?

ちなみに、町の教会の洗礼台帳に残る最古のハポン姓の人物の記録は1667年のものだそう。
慶長遣欧使節がコリア・デル・リオを訪れたのは1614年。
日本への帰路についたのは1617年。
計算が合わないですね。

ただし、「1604年から1665年までの洗礼記録は失われており、この間の手掛かりはない」とのこと。
失われた60年に何があったのか?
想像の翼を広げる余地はあります。

たとえば、1647年のバルトロメは“治道バルトロメJr.”だった可能性もある…かも?
(アレクサンドル・デュマやヨハン・シュトラウス的な同名父子だったと仮定)
歴史の空白を巧みに「治道=ハポンの祖」につなげたのが上手いですね!

大野拓史、ロマンの結実


二回目の観劇では「バルトロメ・ハポンとして生きろ」で、遥か昔、遠く離れた異国の地に根づいた慶長遣欧使節の人々の息遣いが身近に感じられ、わぁーっ!と鳥肌が立ちました。

過去と現在、現実と物語が一気に溶け合う感覚。
これぞ物語!
これぞフィクション!

どうやって治道を動かそうか?
アレハンドロやエリアス、ドン・フェルディナンドはどう絡める?
脚本を執筆中の先生の胸の内を想像すると、私までわくわくします。

歴史の空隙を埋め、物語に作り変えるのは夢や憧れ、そして想像力です。
それらを媒体にノンフィクションからフィクションに生まれ変わった「ハポン」の物語。
スペインと日本を結ぶ壮大な大野ロマンが時空を超えて結実したのです。
やっぱり大野先生の作品が好きだなぁとしみじみ感じた『エルハポン』でした。

↓ブログランキングに参加しています↓
よろしければ応援クリックお願いします

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

↓Twitter(ブログ更新情報)↓
‎@noctiluca94

○『El Japón/アクアヴィーテ!!』関連記事はこちら↓
君こそヒーロー!アレハンドロ(芹香斗亜)はいい男☆彡│El Japón
真風涼帆は大野拓史のミューズか?+個人評(和希そら/瑠風輝/星風まどか)│El Japón
わーかーるーよー!藤井大介先生の「真風涼帆評」に完全同意│アクアヴィーテ!!
スポンサーサイト



君こそヒーロー!アレハンドロ(芹香斗亜)はいい男☆彡│El Japón

キキちゃん(芹香斗亜)の魅力大爆発のアレハンドロ。
『エルハポン』でキキちゃんがますます好きになりました。

キキちゃんの愛すべき男役っぷりが際立って、本っ当ーにカッコいい!
見た目もカッコいい(おヒゲがセクシー)けど、中身はもっとカッコいい!!

大野拓史先生は男役さんをカッコよく魅せるのが本当にお上手。
最高にカッコいいキキちゃんを引き出してくださり、ありがとうございます!

○『エルハポン』感想・前編はこちら↓
真風涼帆は大野拓史のミューズか?+個人評(和希そら/瑠風輝/星風まどか)│El Japón

芹香斗亜はいい男!


『El Japón -イスパニアのサムライ-』は主人公の蒲田治道(真風涼帆)がカッコいいのはもちろん、登場人物それぞれにドラマがあり、物語として面白いのがお気に入りのポイント。
フィクションならではの面白さと言いますか。

特にキキちゃん演じるアレハンドロがいい味を出しています。
昼日中からブラブラ、というか夕方近くにようやく目覚める無精者&胡散臭い風来坊。
しかし、その正体は…!?

最後はぜーんぶキキちゃんが持ってっちゃう、めちゃくちゃ美味しい役!

ラストシーンは突然の水戸黄門化に驚き!
治道のピンチに、若草色のマントを翻し、颯爽と現れるアレハンドロ!
カッコいいーーー!!!

君こそヒーロー☆彡☆彡

って言いたくなっちゃいますね!
(MASK☆Jを思い出します)
痛快な勧善懲悪っぷりに拍手喝采!

キキちゃんの軽やかさ、なんとも言えない愛嬌が最高に活きたアレハンドロ。
その裏には、友や、密かに心を寄せる女性への熱い想いがあふれている。

ひとことで言えば、いい男!

「作家の信頼×役者・芹香斗亜」が生み出した新キャラクター・アレハンドロ


男役のキャリアあってこそ成り立つ難しい役ですが、キキちゃんの持ち味と相まって、魅力的に仕上がりました。
どうしてこんなに自然体に面白いのでしょう?

観劇後に公式サイトの大野先生のインタビューを見直したら、謎が解けました。
宝塚歌劇団│宝塚ミュージカル・ロマン 『El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-』の見どころ<後編>

芹香には、台本で描かれたままを演じるというよりは、彼女自身が見せたいと思う形で演じてもらいたいですね。そのために挑戦したいことがあれば、最大限、尊重するつもりです。常にもう一段階膨らませようとする努力を怠らない彼女ですから、“芹香が演じるアレハンドロ”をつくりあげてくれると期待しています。今回はスター・芹香斗亜として、どのようにセルフプロデュースをしてくれるのか、注目したいと思います。 [公式サイトより抜粋] 


すごいですね!!
「挑戦したいことがあれば、最大限、尊重するつもり」だなんて。
こんなふうに役作りを自由に任されるなんて役者冥利ではありませんか?

「作家の信頼×役者・芹香斗亜」が生み出した新キャラクター・アレハンドロ。
どこまで台本か、どこまでキキちゃんオリジナルか分からないところが面白い!
(観客の爆笑をさらった“キキちゃん”は、どなたの発案!?)

風に吹かれるように飄々と生きるアレハンドロはキキちゃんそのものだったのですね。
はる(天彩峰里)との、ほのかなロマンスの芽生えには思わずニヤニヤしちゃいました。
いいカップルです!

物語の一番大切な台詞「バルトロメ・ハポンとして生きろ」もキキちゃんに託されました。
かなり強引な展開でしたが、アレハンドロに言われると何もかも上手くいっちゃうような気がしますね。

異国の地で妻と友を得た治道。
真風くんとキキちゃんのバディ感がそのまま治道とアレハンドロの関係にも投影されているようで、いっそう心温まるエンディングとなりました。

トップスターと二番手の力が拮抗する今の宙組、見応え抜群です!

↓ブログランキングに参加しています↓
よろしければ応援クリックお願いします

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

↓Twitter(ブログ更新情報)↓
‎@noctiluca94

○『El Japón/アクアヴィーテ!!』関連記事はこちら↓
真風涼帆は大野拓史のミューズか?+個人評(和希そら/瑠風輝/星風まどか)│El Japón
わーかーるーよー!藤井大介先生の「真風涼帆評」に完全同意│アクアヴィーテ!!

真風涼帆は大野拓史のミューズか?+個人評(和希そら/瑠風輝/星風まどか)│El Japón

『El Japón -イスパニアのサムライ-』大好き!
めちゃくちゃ私好みのストーリーで楽しい!
何回観ても面白いし、観るたびに新しい発見があり、味わいが深まります。

真風涼帆は大野拓史のミューズか?


メインキャストそれぞれに良いお役がついて、これぞ当て書き!
私の考える宝塚第一の魅力は「座付き作者による当て書き&新作主義」。
なので、『エルハポン』みたいなバリバリの当て書き新作が来ると無条件にテンションが上がるのです。

「宙組×大野拓史」といえば、一昨年の『白鷺の城』が記憶に新しいところ。
真風涼帆の魅力をギュギュギュっと絞りきった濃縮還元100%真風涼帆でした。

ちなみにテーマソング「狂おしい夢」は、宝塚の芝居歌で一二を争う大好きな曲。
真風くん独特の引きずるようなリズムと、夢幻性のある曲調のコンビネーションが生み出す色気。
妙な中毒性があります。

寡黙で屈強な剣士・蒲田治道は真風涼帆の男役像にドンピシャ。
黙ってそこに立っているだけで匂い立つ男らしさに惚れ惚れ~~

大野先生が紡ぐ「男のロマン」「男たるもの」が大好きな私。
その哲学に合致するパフォーマーのひとり、真風涼帆。

婚礼前夜に夫を亡くし、彼が遺した宿屋を女手ひとつで切り盛りするカタリナ(星風まどか)。
自らの意志に反し、愛する人を見殺しにした治道。
虚ろな心を抱え、同じように、ただ生きながらえてきた男と女が出会う。

宿屋の危機に直面し、治道に剣術を教えてほしいと乞うカタリナ。
「あなたは死に場所を探していた」「私もだ」
しかし、夢想願流は守るべきもののために振るう剣である。

カタリナに喪服を脱ぐよう告げる治道。
“自分を縛りつける過去を脱ぎ捨て、もう一度自分の人生を生きろ”のメッセージ。
カタリナに剣を教えることは治道自身の「救い」でもありました。
次第に、再び立ち上がる心を取り戻していくふたり。

互いに忘れられない相手がいながら、惹かれ合う治道とカタリナ。

カタリナにダンスを教わるシーンの治道の「照れ」は悶絶もの。
無骨な男が思わずこぼす、なんとも控えめな恋慕の情がたまりません~~
もうっ!大野先生ったらーーー!って言いたくなっちゃいます。
それを絶妙なさじ加減で表した真風くんも凄い!

真風涼帆というミューズを得た大野拓史が描く『El Japón -イスパニアのサムライ-』。
胸のすく爽快な冒険活劇でした。

和希そら/瑠風輝/星風まどか


和希そらさんの藤九郎、瑠風輝さんの西九郎も、人物がしっかり書き込まれて魅力的。

藤九郎は彼だけでひとつの物語が成り立つほどドラマのあるお役。
葛藤を乗り越え成長する藤九郎を繊細に描いたそらちゃん。
彼女のお芝居にはいつも心惹かれるものがあります。
いい役者さんです。

西九郎もいいお役。
もえこちゃん(瑠風)はあまり“男役々々”しない自然体なお芝居が巧いですね。
治道や藤九郎を導く度量の大きさをサラリと演じて気持ちよかったです。

治道の登場によって、暗いトンネルを抜けたカタリナ。
自分の頭で考え、自分の足で立ち、自分の手で最善を選び取る、敏い女性。
大野先生の描くヒロインはいつも“女も惚れる女”を体現して嬉しいですね。

※好きすぎて収まりきらなくなったアレハンドロ(芹香斗亜)については次回!

好きな台詞


大野先生の台詞に痺れがちな私。
今回のお気に入りは支倉常長(寿つかさ)の「我々の旅は失敗だったと思うか?しかし、我々は始めの一歩を踏み出したのだ」的なアレ。
シビれる~~

まだ見ぬ世界への憧れ。
私を惹きつけてやまない大野作品のテーマはこれです。
なので、『Bandito』や『NOBUNAGA』のラストシーンも大好き。

2020年観劇初めに『エルハポン』。
幸先のいいスタートになりました!
今年も沢山の傑作に出会えますように!

↓ブログランキングに参加しています↓
よろしければ応援クリックお願いします

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

↓Twitter(ブログ更新情報)↓
‎@noctiluca94

○『El Japón/アクアヴィーテ!!』関連記事はこちら↓
わーかーるーよー!藤井大介先生の「真風涼帆評」に完全同意│アクアヴィーテ!!

少年よ、高く跳べ!―ライナス(和希そら)の「個」の魅力│オーシャンズ11

宝塚版『オーシャンズ11』といえば、「ひたすらカッコいい男役たちを愛で、きらびやかな大スペクタクルを味わう作品」と思っていた私。
しかし、その印象は宙組版により180度くつがえりました。
他でもないライナス・コールドウェル(和希そら)によって。

華やかなエンターテイメントを軸に、ひとりの少年の成長が鮮明に浮かび上がる『オーシャンズ11』。
宙組ならではのエッセンスが加わった、新鮮な味わいを楽しみました。

心揺さぶる、和希そらの芝居


雑踏からそらちゃん(和希)が現れ、歌い始めた瞬間、鳥肌が立ちました。
世をすねた目つき、どこかぎこちなく、周囲から浮き上がる存在感。
まぎれもない、ライナス・コールドウェルがそこにいました。

卓越したダンスと歌唱に注目が集まりがちなそらちゃんですが、芝居もなかなかのもの。
直近で印象深かったのは『WEST SIDE STORY』のアニータ。
男役ながら、物語のキーパーソンとなる艶やかで知的で感情豊かな女性を見事に演じきったそらちゃん。
“Somewhere”は何処に?―真風涼帆・星風まどか・和希そら評│WEST SIDE STORY

「いい芝居」に男も女もないと思わせた彼女が挑む少年ライナス。
その不器用な瑞々しさ。
「オーシャンズって泣くような話だっけ?」と思いつつ、父の旧友ソール・ブルーム(寿つかさ)とのやり取りから「JUMP!」への流れで不覚にも涙してしまいました。

ライナスの焦燥


ダニー、ラスティー、ソール、フランク、ルーベン、バシャー、イエン、リヴィングストン、バージル、ターク。
個性豊かなオーシャンズの面々で、ライナスだけが「子ども」なのです。
単に年齢の若さを指すのではありません。

リヴィングストンもモロイ兄弟も若いけれど、確固たる「自分だけの何か」を持っている。
犯罪すれすれ(というか完全にアウト)なクラッキングやヴィジュアルエフェクツの腕前。
決して褒められたやり口ではないけれど、それでも、彼らはその持てる技能を駆使して人生を謳歌している。
彼らには、自分の足で自分の人生を歩いている者たちの輝きがある。

でも、自分には何もない。
このままコソコソと他人の懐を狙い、小銭を稼いで、その日暮らしを送るのか?

自分はどうなる?
何者にもなれず、何も成し遂げず、ただ年をとっていくのか?

そんなのはイヤだ!
なんとかしたい!
どうすればいい?

くすんでちっぽけな自分に嫌気がさす。
俺だって、あの光の輪の内側に立ってみたい。

切羽詰まったようなそらちゃんの瞳から、ライナスの焦燥、煩悶、そして閉塞感がひしひしと伝わってきました。

跳べ!ライナス


鬱屈したライナスの心を揺すぶったのは、ダニー(真風涼帆)の「男にしてやる」。
突破口を開いたのは、ソールの「跳べ!ライナス」。

自分だって跳べる
あんたたちと一緒に跳んでみるよ!

オーシャンズの導きで、自分の進むべき道を探り当てたライナス。
それまでの怯えは消え失せ、目に輝きが宿る。
強く押さえつけられた分だけ、いっそう強く跳ね返すバネのような。
爽快感あふれる少年の成長。
見事な変貌ぶりでした。

血の通った人間が生きている。
その「熱」を観客に届けることができるのが、大勢の中で埋もれないそらちゃんの「個」の魅力
すごい武器です。

「男とはいかに生きるべきか」を問いかける『宙組オーシャンズ11』


ダニーやラスティー(芹香斗亜)を始め、ほとんどの登場人物のバックグラウンドが描かれない『オーシャンズ11』。
例外はテリー・ベネディクト(桜木みなと)とライナスのみ。
二人の共通点は、父親との確執。

ギャンブルで身を持ち崩し、家庭を破壊した父親への憎悪から裸一貫のし上がったテリー。
「伝説のスリの息子」のレッテルを持て余し、先の見えない暮らしに倦んでいたライナス。

自らの力で父親の壁を乗り越えたテリー。
オーシャンズが寄ってたかって跳び越えさせたライナス。
しかし、ダニーたちは手助けをするだけで、跳んだのはライナス自身の意志です。

少年が大人の男として立つとき、避けて通れないのは、ひとりの人間として父親と向き合うこと。
『オーシャンズ11』は「父と子の物語」でもあるのです。

ライナスの擬似的父親の役割を果たしたダニーとソール。
今回の宙組版の面白いのは、初演星組と再演花組でライナスを演じた真風さんとキキちゃん(芹香)が、それぞれダニーとラスティーとして和希ライナスに対峙するところ。

初代が拾い上げ、二代目が手を差し伸べる三代目ライナス。
和希ライナスにとって、真風ダニーは父であり、芹香ラスティーは兄であったのかもしれません。
(ラスティーのさりげないスキンシップ[肩ポンや鼻ツン]に、いかにも彼らしい親愛の情が感じられて良かったです)

少年から大人にJUMPしたライナスを取り巻く面々。
クールでスタイリッシュな見てくれの奥に、「男とはいかに生きるべきか」の熱い問いかけが渦巻く宙組オーシャンズでした。

↓ブログランキングに参加しています↓
よろしければ応援クリックお願いします

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

↓Twitter(ブログ更新情報)↓
‎@noctiluca94

新解釈「モナリザの謎」観れば観るほど面白いスルメ作品―個人評(真風/星風)│異人たちのルネサンス

『異人たちルネサンス』は、観れば観るほどじわじわと面白さが増してくる不思議な作品でした。

テーマが明確で、起承転結がはっきりしており、脚本に過不足はない。
生徒の配し方は適材適所。
美しい衣装、耳馴染みの良い音楽。
舞台機構の使い方も巧み。
派手さはありませんが、しっとり落ち着いた良さがありますね。

最も印象的だったのは、レオナルド(真風涼帆)がカテリーナ(星風まどか)をモデルに「誰も見たことのない聖母の肖像」を描き始めるシーン。

宝塚の舞台で、あんなに長く無音が続くのって珍しくありませんか?
音楽もなく、台詞もなく。
ただ、木炭が板をこする音が響くのみ。

この沈黙が雄弁なのですね。

劇場中が固唾をのんで見つめる中、二人の想いが煮詰まっていく時間。
息苦しいほど凝縮された空気に、こちらの胸まで苦しくなりました。

物語の大きな軸は、歪められ押し込められたカテリーナの心の再生。
思いがけず再会した幼馴染のレオナルドと対峙することで、次第に心が動いていく様子が手に取るように伝わってきました。

ありもしない「罪」を押し付けられ、頑なに閉じていたカテリーナの心。
いまわの際に残した「もう何も怖くない」がひときわ胸にしみました。

独りぼっちで、絶えず自分を責め続けながら、一羽の白い小鳥だけを頼りに生きてきた寂しい少女。
花の盛りを生きているのに、心は既に死んでいた。

重い鎧を着せられ、狭い檻に閉じ込められていたカテリーナ。
彼女を再び羽ばたかせたのはレオナルドの言葉。
「君は何の罪も背負ってはいない。君はあの頃と何ひとつ変わってはいない」

鳥籠に閉じ込められていたのはカテリーナの心だったのです。

いらない子、嫌われっ子と蔑まれながら少年時代を送ったレオナルドは知っていたのです。
たったひとつ、心を奮い立たせるものがあれば、心を死なせずに生きていけると。
それは「愛」であったり、「何かを生み出すこと」であったり…
サライ(天彩峰里)に絵を教えたのも同じ理由でしょう。

小さく縮こまっていたカテリーナの翼。
「愛」を知ったから、飛ぶのが怖くなくなった。
呪縛から解放された途端に命を落としたのは気の毒でしたが…

わずかな間でも、「本当の自分」を取り戻し、生きられたこと。
愛に満たされ、神の国へ迎え入れられたこと。
カテリーナは幸福だったでしょう。

ロレンツォが問いかけます。
「なぜ彼女は微笑んでいるんだ?」
レオナルドの答えは「本当の愛を知っているから」。

レオナルドは愛によって、カテリーナに新しい命を与えたのです。
そして、絵筆によってもうひとつの命を。
カンバスに閉じ込めたカテリーナへの想いは永遠です。

物静かで、内なる情熱を秘めた若き天才、レオナルド。
真風さんは持ち前の恵まれたルックスと、立っているだけで様になる男役の味を活かし、この寡黙で熱い青年を立体的に浮き立たせました。

野望の道具にされ、自分を殺して生きてきたカテリーナ。
まどかちゃんはレオナルドと出会って徐々に心を取り戻していくさまを、きちんと見せてくれました。

ラストシーンの教会、ひとり祭壇の前に佇むカテリーナ。
その姿からは、すべてを受け入れ、包み込むおおらかさが感じられました。
「愛」がもたらした自我の目覚め、自信、強さ。
その変貌ぶりに目を見張りました。

田渕大輔先生の新解釈「モナリザの微笑」の謎。
芝居のテーマとして面白く、興味深く拝見しました。

↓ブログランキングに参加しています↓
よろしければ応援クリックお願いします

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

↓Twitter(ブログ更新情報)↓
‎@noctiluca94

○『白鷺の城/異人たちのルネサンス』関連記事はこちら↓
最高のクリスマス!2018年宝塚観劇納めは宙組で│異人たちのルネサンス
「人材豊富過ぎる」宙組の贅沢な悩み―個人評(芹香/愛月/凛城/澄輝/風馬)│異人たちのルネサンス
現代の“異類婚姻譚”『白鷺の城』がハッピーエンドである理由
東宝デザート「酢×ゼリー」に外れなし!│宙組『白鷺の城』公演デザート「美人たちも来るねッ酸酢」レビュー

プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
◇更新情報はこちら◇
Twitter‎@noctiluca94

ブログ内検索とタグクラウド

最新記事

カレンダー

03 | 2020/04 | 05
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

カウンター

宝塚歌劇団人気ブログランキング

にほんブログ村ランキング

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
9位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
演劇
2位
アクセスランキングを見る>>

ブロとも一覧

ブロとも申請フォーム

noctilucaにメッセージを送る

お名前:
あなたのメールアドレス:
件名:
本文:

QRコード

QR

**