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男爵(珠城りょう)の役割とは何か?│グランドホテル

『グランドホテル』の主人公、フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵(珠城りょう)。
彼は死して舞台を去るわけですけど、彼の役割ってなんだったんだろう?と思ったんですよね。

エリザヴェッタ(愛希れいか)に愛を与え、オットー(美弥るりか)と友情を育み、フラムシェン(早乙女わかば/海乃美月)の危機を救った。
彼らと交わった時間はわずかだけど、それぞれに何らかの影響を与えた。

自分では何も生み出さないろくでなしだったけど、みんなに何かを残して去った
生きる活力や幸せや…
それが彼が『グランドホテル』という作品に存在した意味なのでしょう。

“物語の中での役割を果たした”
役目を終えたから舞台を去ったフェリックス。

実在の人間でそんな人生はあったものではありませんが、演劇においては成立します。

現実の私たちも一期一会。
出会っては別れ、生まれて死ぬまで何人とかかわりをもつのでしょう?
それらの人々とひとつふたつ影響を与えあって今の自分が在る。

来ては 帰る
これが人生さ

生まれて死ぬまでの間にどれだけ深く人と関わり、喜びや悲しみを分かち合えたか。
フェリックスはグランドホテルで過ごした一日で“人生を生きた”と言えるでしょう。

しみじみと味わい深い物語『グランドホテル』。
もう一度、劇場で生の舞台を観たくなりました。

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2020年ヅカ納めは月組!和物レビューの最高峰『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』

宝塚熱が再燃する前、毎年クリスマスは『くるみ割り人形』を観に行くのが恒例だった私。
ここしばらく宝塚優先でご無沙汰してましたが、『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』で久しぶりに「花のワルツ」を聞けて嬉しかった!

というわけで、2020年ヅカ納めは月組『WTT/ピガール狂騒曲』!
去年は同じく月組の『I AM FROM AUSTRIA』、一昨年は宙組の『白鷺の城』で一年のヅカ活を〆ました。
今年はどうなることかと思いましたが、無事に観られてよかったです。

和物レビューの最高峰『WTT』


やはり格別に好きな『WTT』。
近年の和物レビューの最高峰と思います。

雪と月と花と。
小細工なし、潔いほど引き締まったテーマ。
ようこそ日本へ、ようこそ宝塚へ。
坂東玉三郎丈監修のもと、四季折々の自然美を舞踊で表します。

音楽は西洋の古典。
「雪」はヴィヴァルディの『四季』より「冬」。
「月」はベートーヴェンの「ピアノソナタ第14番(月光)」。
「花」はチャイコフスキーの『くるみ割り人形』より「花のワルツ」。

日本舞踊を洋楽で。
宝塚ファンにおなじみの「和洋折衷」ですが、初めてご覧になる方には、やはり新鮮に映るのでしょうか?

音楽は世界共通言語。
クラシックの採用により、文化が異なる方が観ても、瞬時にテーマを捉えられるメリットがあります。

併演のお芝居『ピガール狂騒曲』でシャルル(月城かなと)が「子どもの頃に観た人形劇を生きた女性で演ったら、どれほど綺麗だろうと思った」と語りますが、眼下に広がるのは正にその光景。

特に素晴らしいのは「月の巻」。
しんしんと冴え渡り、吸い込まれるような美しさ。
始まっては終わってしまう。
寸刻を惜しみ、目に刻みつけます。

時を止めたい。
この瞬間を凝結させて、透き通ったクリスタルの箱に永遠に閉じ込めてしまいたい。
そんな欲が湧きます。

圧巻!団体賞間違いなし!月組渾身の「月」に魅了される│WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-

こんな状況でなければオリンピックでいらした国内外の方に楽しんでいただけたと思うと悔しいですが…
宝塚がある限りは和物レビューを上演し続け、またいつか多くの皆さまに観ていただける日が訪れますように。

宝塚よ、永遠に


「Welcome,Welcome」のリフレインが癖になるテーマ曲も素晴らしいですね。
気取らず、温かく、どこか懐かしさを覚えるメロディ。

大劇場の赤い屋根、ファンが行き来する花のみち、武庫川の流れが目に浮かび、鼻の奥がツンとします。
宝塚はいつまでも私の夢の宝石箱であってほしい、と改めて思いました。

「すみれの花咲く頃」や「この愛よ永遠に TAKARAZUKA FOREVER」のようにファンに愛され、末永く歌い継がれる曲になりますように!

めでたく新年三が日に大千穐楽を迎える年またぎの公演。
長く歌劇の発展に尽くしてこられた、みえこ先生(松本悠里)のご卒業。
残すところ数日、全員揃っての佳き日となりますよう願っております。

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シャルル(月城かなと)とジャンヌ(珠城りょう)―同じ枕で眠り、同じ夢を見るふたり│ピガール狂騒曲
圧巻!団体賞間違いなし!月組渾身の「月」に魅了される│WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-
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シャルル(月城かなと)とジャンヌ(珠城りょう)―同じ枕で眠り、同じ夢を見るふたり│ピガール狂騒曲

久々に心を撃ち抜かれる役に出会いました。
月城かなと演じるムーラン・ルージュの支配人、シャルルです。

シャルルの夢の城、ムーラン・ルージュ


月組子の愛すべき役者っぷりを堪能できる『ピガール狂騒曲』。
事前情報なしで観たら、めちゃめちゃ面白い!
原田諒先生らしい舞台機構使いの巧みさ、彩りの美しさも相まって満足度が高かったですね。

魅力的な人物たちのなかで、とりわけ心惹かれたのがシャルル。
もともと、れいこさん(月城)のお芝居が大好きな私ですが、今回は当たり役。
当たりも当たり、大当たり!
こんなにいい役を書いてもらえて、演じられるなんて役者冥利です。
シャルルが“生きて”ました。

時代遅れと蔑まれ、落ちぶれたムーラン・ルージュを立て直そうと躍起になる支配人。
幼い頃に見た人形劇を忘れられず、「生身の女性で再現したら、どれだけ素晴らしいだろう?」と夢を見、叶えた男。
ムーラン・ルージュはシャルルにとって「夢の城」なのです。

夢を追う人、シャルル


夢追い人・シャルルは、ショービジネスに生きる人々の具現です。

コロナ禍で大打撃を受けたエンタメ業界。
宝塚歌劇も例外ではありません。
クラスター発生、相次ぐ公演中止、減員・減席での興行…

このまま廃れてしまうのか?
もう立ち直れないのか?
シャルルの嘆き、焦りは他人事ではありません。
宝塚を取り巻く今の状況と重なり、胸が痛みました。

ムーラン・ルージュ起死回生の策として白羽の矢が立ったのが、大人気覆面作家のガブリエル(美園さくら)。
話題性抜群の彼女を舞台に立たせれば、一気にV字回復を狙えるかもしれない!?

そこへ転がり込んできたのが、珠城りょう演じるジャック。
シャルルはジャックに、雇用と引き換えに、渋るガブリエルを引っ張り出すよう命じますが…

男装の美青年ジャックを軸に起こるテンヤワンヤの物語は、シェイクスピアの『十二夜』が下敷き。
しかし、『ピガール狂騒曲』はあくまでオマージュです。

ヴァイオラ(シザーリオ)=ジャンヌ(ジャック)=珠城りょう。
オーシーノ公爵=シャルル=月城かなと。
オリヴィア=ガブリエル=美園さくら。

オーシーノ公爵の恋の矢印はオリヴィアに向かいますが、シャルルの矢印はガブリエルに向かっているようには感じられませんでした。

シャルルが関心を寄せるのは、ガブリエルの美貌と才能。
彼にとってガブリエルは恋愛対象ではなく、あくまで彼女の商品価値を欲しているように思えるのです。
シャルルはムーラン・ルージュの救世主となる華のあるスター、いわば「トップスター」を探していただけ。

もちろん、舞台を支える踊り子たちも大事。
仮縫いに立ち会ったり、「君たちあっての小屋」と言ってみたり。
舞台は真ん中のスターだけでは成り立たない。
踊り子たちは踊り子たちで、愛おしく大切な存在なのです。

これも宝塚に通じるところがありますね。
原田先生の想いが透けて見えるような台詞です。

妙に禁欲的な男性像がハマるのも、れいこさんの個性。
ポリシーの「商品に手を付けない」も真実味があります。
踊り子は家族であり、我が子のようなものなのでしょう。

一発逆転を賭けた舞台が滅茶苦茶になり、死を覚悟して街をさまよっても、そのまま流されることはない。
むざむざと夢の城を明け渡すことを潔しとしない。

踊り子、裏方、自分の小屋を支える人々の生活がかかっている。
彼らを見捨てることはできない。
どんなに不格好であろうと、自らに課せられた責任を放棄することはしない、できない。
不死鳥の情熱を秘めた男、シャルル。

シャルルには一貫した人間性・人格を感じます。
私がれいこシャルルに惚れ込んだ理由はここです。

シャルルは男役像の理想のひとつ


シャルルが真に求めていたのは、自分の夢を共有できる相手。

「ショービズの世界には夢がある」
「その一員になれたら」
ムーラン・ルージュで働かせてほしいと直談判するジャックの言葉は、シャルルの胸に染み通ったに違いありません。
乾いた砂が水を吸うように、素直に、心の深いところまで。

同じ枕で眠り、同じ夢を見られる相手が、すぐそばにいた。
シャルルがジャック(ジャンヌ)を受け入れたのは、ごく自然な流れです。
れいこさんの誠実な芸が、シャルルという人物の行動に説得力を与えました。

真摯に人生に向き合う男は、愛する人にも同じように向き合うでしょう。
シャルルは、宝塚ファンならば贔屓に演じて欲しいと願う、男役像の理想のひとつではないでしょうか?

今このタイミングでシャルルを演じたことは、れいこさんにとって大きな糧となったはずです。
これからのれいこさんが、どんな形で「男役・月城かなと」を完成させていくのか?
ますます楽しみになりました。

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圧巻!団体賞間違いなし!月組渾身の「月」に魅了される│WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-

坂東玉三郎監修とのことで、演目発表時から楽しみにしていた『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』。
こんな状況でなければ歌舞伎好きの友だちも誘えたのに、と残念でなりません。

初日明けの先週に沢山お声がけいただいてたんですけど、稼働4日+繁忙期で泣く泣くあきらめ…
仕事も一段落つき、週末にようやくMY初日を迎えられました!
すっごく良かったです!
こんな素晴らしい舞台が一週間も私の横を通り過ぎていたなんて…無念!

圧巻!団体賞間違いなし!月組渾身の「月」に魅了される


久しぶりの月組観劇。
ピアスもスカートもマスクもイエローでまとめ、仕上げにさくらちゃん(美園さくら)の役・ガブリエルにちなんで、CHANELのGABRIELLEをつけて…(形から入るタイプ)
やっぱり宝塚はいいですね!
うきうきわくわく、気持ちが華やぎます。

ときめきが最高潮に達したのは幕開き!
チョンパで眼前に広がる絢爛豪華な絵巻物。
これぞTAKARAZUKA!
この世のものとは思えぬ綺羅びやかさに溜め息がこぼれます。

大劇場でご覧になった方の「2階がいい」とのアドバイスに従い、2階席を確保しましたが大正解!
マスゲームの醍醐味、フォーメーションの変化を余すところなく味わうには上から眺めるのが最高!

どのシーンも素晴らしいですが、圧巻は「月」
鳥肌が立ちました。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」に乗せて舞う月組子。
息をするのもためらうほどの静謐。

音は鳴っていますが、なぜか「静か」なのですね。
ひたひたと身に沁みる青ざめた静寂は月の光そのもの。

粛々とした舞から、ゆるやかに組子が入れ替わり立ち替わり、次第に熱を帯びた総踊りへ。
あえかな三日月から馥郁たる満月への変貌。
月組の未来を寿ぐ演出。
堂々たるクライマックスでした。

このシーンだけでチケット代の価値がありますね。
団体賞ものです!

緑の宝石「ボレロ」と、金蒔絵の「月」


似たような反復とクレッシェンドで構成されたシーンとして、『Éclair Brillant』の「ボレロ」を思い出しました。
宝塚のエレガンス、ここに極まれり―美の洪水、宝石箱のようなレビュー│Éclair Brillant

「ボレロ」が宝石なら、「月」は蒔絵。
満天の星空に煌めく緑の貴石。
漆黒の闇夜に浮かぶ黄金の月。
どちらもファンの心に長く残る名シーンですね。

「雪」「花」も秀逸。
すっかり満足して、うっかり一幕で帰りかけるところでした 笑
(歌舞伎の一幕見と勘違いした)

このうえ芝居まで観られるなんて!
なんて贅沢な二本立て!
月組子の愛すべき役者っぷりが存分に引き出された『ピガール狂騒曲』。
さらに後物のフィナーレまでつくなんて…
満漢全席お代わり+デザートブッフェってくらい満腹!満腹!
大満足でした!

お芝居の感想は、また改めて。

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交錯するジェンダー、ルイ(愛希れいか)とリュリ(佳城葵)│All for One

私にとって月組の珠城りょう×愛希れいか時代の最高傑作『All for One』。
トップコンビのみならず組子全員がどんぴしゃ当て書き。
誰も死なず、誰も傷つかず。
最高に幸せなハッピーエンド。

成功の要因はキャラクター造形の確かさ。
なかでも、ルイ14世を演じたちゃぴちゃん(愛希)の功績は大きいです。
男役から娘役に転向した彼女ならではの“ヒロイン”ルイ14世がどのようにして生まれたのか?

「もしも、ルイが男女の双子だとしたら?」
「しかし、誰がルイ(ルイーズ)の二役を演じられる?」
「そうだ、愛希が居る!」
小池先生の頭に、男女の双子という構想が先にあったのか?
それとも、愛希れいかという役者ありきだったのか?
いずれにせよ、ちゃぴちゃんが作家の想像力を掻き立て、多大なインスピレーションを与える役者であることは間違いないでしょう。
わくわくするような大スペクタクル“小池版三銃士 All for One”の誕生です。
愛(希れいか)あればこそ、小池三銃士+宝塚“キスの流儀”│All for One より抜粋


“役割としての男性”を演じるルイ(愛希れいか)


男装の女性である「男役」が演じるダルタニアン(珠城りょう)と、本来の性が女性である「娘役」が男装した女性を演じるルイ14世(愛希れいか)の恋。
一見ややこしいですが、物語としてはシンプル。

ルイの肉体と性自認は女性、恋愛対象は男性。
一般的なシスジェンダーの恋愛劇に過ぎません。

家庭の事情により、望まぬ「男の生活」を余儀なくされただけのルイ(ルイーズ)。
“役割としての男性”を演じていただけなのです。

生まれたときから男として育てられたルイに、女性の自我が目覚めたのはいつだったのか。
どこかの時点で「あなたは女だ」と告げる者があったはず。

公の場では男性、私の空間では女性の二重生活を送っていた彼女。
しかし、結婚適齢期を迎え、これ以上のごまかしは無理と爆発します。

女の姿で王宮を逃げ出し、飛び込んだ酒場で出会ったのが、三銃士の一員ダルタニアン。
ルイーズとして出会ったダルタニアンと再会したのがルイだったことが騒ぎの始まりです。

「男装の麗人」ものはなぜ面白いのか?


男性として生きるヒロイン。
宝塚ではそう珍しくはありません。
『ベルサイユのばら』のオスカル、『紫子』の紫子など。

なぜか?
単純に「物語として面白い」からでしょう。
「男装の麗人」が「男装の麗人」を演じる宝塚歌劇においては尚更です。

ショーやレヴューで男役の女装がもてはやされる理由と根っこは同じでしょう。
固く閉じた男の鎧の隙間からこぼれ出す女の色香。

男役ד男装した女性を演じる男役”のラブシーンは、男役×娘役のそれとは異なる倒錯したエロスがあります。

男性の主人公が、相手(ヒロイン)を同性と思い込むことで生じる誤解や混乱も作品のスパイスになります。
『All for One』でもルイが女性と知ったダルタニアンが起こす騒動が物語を動かす起点になります。

また、男装のヒロインはあるがままの姿で生きられないことに苦悩し、そこにドラマが生まれます。
きっかけは自発にしろ、強要にしろ、どこかで必ず自身の女性性に目覚めるのです。

ルイの場合はダルタニアンと出会って一気に開花したと考えられます。
すったもんだの末、女の姿に戻り、恋人とハッピーエンドを迎えて、めでたしめでたしとなる『All for One』。
カラリと明るく健康的な珠ちゃぴコンビにふさわしい物語でした。

交錯するジェンダー、ルイとリュリ


男として育てられた女は必ず女に戻り、男を求める。
そしてふたりは結ばれ、ハッピーエンド。
結末の固定化には異論がありますが、『All for One』はそれに当たりませんので別な機会に。

ひとつ気になるのは、わーわー大騒ぎの人々をよそにダルタニアンへ熱い視線を送る青年。
やすちゃん(佳城葵)演じる作曲家リュリの存在です。

快男児ダルタニアンに心惹かれた様子のリュリ。
彼は三銃士の一員アトス(宇月颯)に対しても「タイプ」という言葉をかけています。

この台詞は『Le CINQ』に載っていません。
やすちゃんの役作りの一環なのか、後から付け足された設定なのか。

同様の役を演じた『A-EN』の脚本の意図は明確でした。
まゆぽん(輝月ゆうま)演じる大型犬男子マイルズに恋する少年アダム。
恋の芽生えから成就を丁寧に描いたやすちゃん。

やすちゃんの不思議なところは、どんな人物を演じても、ふわっとそこにいてしまうこと。
力みなく、自然体に。

ことさら強調しなくても、視線や身のこなしでリュリという人物を観客に印象づけられるやすちゃん。
もしかしたら「タイプ」という台詞すら必要なかったかもしれません。

ルイとダルタニアンの恋と同時進行するリュリの恋。
多様なジェンダーが交錯し、宝塚歌劇の可能性が広がったのも『All for One』の面白さのひとつです。

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プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共に30年(ブランクあり)。全組観劇派。美丈夫タイプの生徒さんが好み。谷正純・酒井澄夫・木村信司・大野拓史作品が好き。観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。

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