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「キャシー、君は美しい」―美園さくらさんについて│雨に唄えば

「やるんだ、キャシー」

恋人からの信じがたい言葉。
吹き替えを続けろ。
大女優リナを守るために歌え。

なぜ?どうして?
そんな酷いことを言うの?
私のキャリアはどうなるの?
なによりも…
私たち愛し合っているんじゃなかったの?
あなたは私との関係よりも、自分の立場が大切なの?

突然の裏切り。
キャシーの衝撃、絶望はいかほどだったでしょう?

「いいわ、歌うわ。でも、あなたとはもう会わない。スクリーンの中でも外でもね」
涙をこらえ、絞り出すような声で気丈に告げるキャシー。

このシーンは観ている私の胸も潰れそうでした。
キャシーの悲しみ、やり切れなさ、無力感。
目の前が暗くなるような、足元にぽっかり開いた底知れぬ穴に吸い込まれそうな心持ち。
彼女の胸の内が痛いほどに伝わってきました。

緞帳に隠れ、リナの代わりに歌う「SINGIN' IN THE RAIN」。
しかし、観客の耳に届くのは、動揺など微塵も感じさせない軽やかに弾む声。
明るく澄んで楽しげな、雲間から覗く青空を思わせる晴れやかさ。

この瞬間、キャシーの心が強く、大きく変わったのが感じられました。

もし彼女が感情に振り回されて、涙に震える声で歌っていたら?
あまつさえ、「替え玉なんてできない!」とその場を放り出していたら?

理由はどうあれ、キャシーはプロとして自分の役割を果たしたのです。
そこにはドンへの想いの欠片もあったでしょう。
これが私からあなたへの最初で最後の贈り物よ、と。

しかし、それ以上に強くあったのは自分自身への矜持ではないでしょうか。
「与えられた仕事はきちんとやり遂げてみせる」

そこにはかつて仕事の場で大スターにパイをぶつけようとした癇癪持ちな女の子の面影はありません。
恋を失い、せっかく掴みかけた成功のチャンスを失いそうになりつつも、自分を裏切ることは決してしなかった。
物語の中で彼女は立派に成長したのです。

そして、静かに緞帳が上がり、すべてが明らかになります。
「この映画の真のスターは彼女です!」

一度は背を向けた恋人の胸へ、真っ直ぐに飛び込むキャシー。
溢れんばかりの喜びに包まれた彼女は、まさに「君は美しい」。
撮影所のラブシーンより何倍も何倍も光輝いていました。

どこにでもいるごく普通の女の子が、自信と誇りに満ちたおとなの女性へと変貌を遂げる。
『雨に唄えば』はキャシーの成長物語としても楽しめました。

* * *

なぜドンは始めからキャシーに作戦を打ち明けなかったのでしょうか?
先に知らせていれば、キャシーが絶望を味わうこともなかった。

それは愛する人に汚れ仕事をさせたくなかったからだと思います。
ドンとコズモの企みはお世辞にも綺麗なやり口とは思えません。
もしキャシーが「リナの後ろで自分が歌い、頃合いを見て緞帳を上げて、吹き替えのからくりを暴露する」と知っていたら…

そんなことにキャシーを巻き込みたくなかった。
自分は恨まれても憎まれてもいい。
それでもキャシーには人を陥れるような卑怯な真似をさせたくなった。

これは賭けです。
何も知らせず、傷ついた心のままキャシーに歌わせたら、どんな結果になるか分かりません。
声を詰まらせて歌えなくなるかもしれない。
悲しみのあまり、その場から姿を消してしまうかもしれない。

それでも、ドンはキャシーに片棒を担がせることを潔しとしなかったのです。
もしかしたらキャシーに限ってそんなことは起こらないという確信があったのかもしれません。
しかし、それは誰にも分からないことです。

「闘う騎士」の試写会が失敗に終わり、コズモが吹き替えを示唆したときもドンは「それが?」と答えました。
コズモは「なんで分かんないの?」とドンの鈍さを嘆きましたが…
愛するキャシーが不利益を被る可能性のある吹き替えなど、ドンの頭にはこれっぽっちも浮かばなかったのでしょう。

恋人を悲しませたくない、汚したくない。
これは紛れもないドンの愛です。
キャシーもそれを悟ったからこそ、彼のもとへ戻ったのでしょう。

結果として、キャシーは己の仕事を全うし、何もかもが丸く収まりました。
ドンの信頼、キャシーの自信。
素晴らしいラストシーンでした。

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月組子の魅力を再発見!叶羽時/蓮つかさ/麗泉里/朝陽つばさ│雨に唄えば

『雨唄』は隅々まで見どころ満載。
今まで気づかなかった新しい生徒さんの魅力を発見できたのも収穫でした。
順不同、思いつくままに記します。

○発声法の先生(朝陽つばさ)
休演された佳城葵さんの代役として、抜擢された彼女。
立派に大役を務め上げました。

トップスターと二番手に挟まれて、早口言葉や日替わりのアドリブを披露するという難役。
抜群の舞台度胸と芝居心で、連日満場の客席を沸かせました。
彼女にとっても良い経験になったのではないでしょうか?
何より、舞台人に最も必要な愛嬌、観客を味方につける力を持っているのが素晴らしい。

それにしても、遠目だとルックスがやすちゃん(佳城)そっくりですね!

○ゼルダ・サンダース(叶羽時)
『雨唄』で毎回楽しみだったのはゼルダの歌声!
特に潤いのあるまろやかな中音域が心地よくて至福でした。

時ちゃんは表情の作り方がいいですね。
いつもニコニコ可愛らしく、お芝居では豊かな感情を操るのが上手くて注目しています。

リナ(輝月ゆうま)との「ともだち~~~!!!」も息ぴったり。
本当に何度観ても可愛くって大好きなやり取りです。

吹き替えが明らかになり、ドン(珠城りょう)を責めるリナの後ろで一所懸命に援護射撃をするゼルダも見どころ。
「そうよ!そうよ!」「リナ、負けないで!」
ゼルダの心の声が聞こえるようでした。

親しみやすくて、愛らしくて、友達思い。
「お元気アイドル」の枠にとどまらないチャーミングなゼルダちゃんでした。

○ロスコー・デクスター(蓮つかさ)
今回一番見る目が変わったのが、れんこんちゃん(蓮)。
硬質で繊細な持ち味、悩める白い貴公子タイプの印象が強かったのですが、なかなかどうして、素晴らしいコメディセンス!
さんざん振り回された上の「こんちくしょー!カーーーット!!」は拍手喝采!

大仰に笑いを取りに行くのではなく、あくまでも役として生き、台詞のニュアンスや身のこなしで、観客の笑いのツボをくすぐる。
わきまえた態度は好感が持てます。

フィナーレのダンスナンバーでは、水も滴る色男に大変身!
監督役では封印していた優しげでアンニュイな色気がたまりませんね。
ゆったり狙いすました投げキッスは威力抜群でした。

○緑のドレスの女/白のドレスの女(麗泉里)
コケティッシュな魅力でドンを誘惑する泉里ちゃん。
緑のドレスの女、アクロバティックなリフトは見ごたえあり。
白のドレスの女、低い位置での回転も鮮やか。
毎公演、靴と床が擦れる鋭い響きにハッと胸を衝かれる思いがしました。
なにか幻想を絶ち切られるような思いがして…

カーテンコールで隣に並んだ発声法の先生とじゃれあうシーンでは泉里ちゃんの本来の健康的なチャーミングさが出て可愛かったですね。

* * *

他にも、サイレント映画の敵役と、キャシーを見出すシドを演じた蒼真せれん君。
全場面フル出場に近かった朝霧真君。
そして、甘いルックスが目を引いた礼華はる君。

書ききれないほど大勢の素敵な生徒さんに楽しませていただきました。
そうこう言ってる間に、『エリザベート』集合日。
『雨唄』で得たものを糧に益々の躍進を期待しております。

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飄々と、軽やかに―『雨に唄えば』のブースター、美弥るりかについて

赤坂で月組の『雨に唄えば』、日比谷で星組の『ANOTHER WORLD/Killer Rouge』。
どちらも笑えて泣けて、終演後はじんわり温かな余韻が残る素晴らしい舞台。
同じコメディとはいえ、ここまでテイストの違う2作品を同時に上演できる宝塚。
あらためて劇団の懐の深さを感じますね。
両方共、本当に大好きな作品です。

細かいことですが、『雨に唄えば』と『Killer Rouge』で同じ衣装が使われているのを見つけたときは嬉しかったです。
偶然でしょうか?
娘役さんのイエローとオレンジのグラデーションのミニワンピース。
動くたびにフリンジが揺れ動くのが可愛くて大好きな衣装です。
なんとなく見えないつながりが感じられ、宝塚はひとつ…という思いがして楽しいですね。

* * *

珠城りょう演じるドン・ロックウッドの幼馴染みにして無二の親友、コズモ・ブラウン(美弥るりか)について。

珠様トップお披露目の『アーサー王伝説』から二人の関係は、訳ありの姉弟、束の間の友人、頼もしき朋輩やビジネスパートナー、最新作ではなんと恋人同士。
他組のトップと二番手よりバラエティに富んだつながりを演じることが多い彼女ら。

今回は、公私共に厚い信頼と友情で結ばれた相棒役です。
ドラはドン&リナを「ベーコン&エッグ」と評しましたが、彼らもまた同じように切っても切れない間柄と言えるでしょう。

二人の関係が端的に表れたのがこちらの台詞。
「コズモ、俺はいい役者かい?」
「親友だろ?言ってくれ」
「時々そう言ってくれないか」
ドンにとってコズモは鏡のような存在なのでしょうか?
コズモを通して自分の現在地を確認する。
親友への無条件の信頼が垣間見えて好きな場面です。

苦楽を共にしてきた二人ですが、銀幕のスターとしてより多くの社会的成功を収めているのはドンの方。
しかしながら、わだかまりなく関係が続いていることに絆の深さを感じます。

「僕には何がある?」と言いつつ、飄々とした様子のコズモ。
実のところ、彼は人として大切な、目に見えない多くのものを持っているのですが。
こんな風にさらりと口に出せてしまうところに、彼の正しい自己肯定感、しなやかで強靭な精神を感じさせます。

アイディアマンの彼は、幾度もドンやキャシー、モニュメンタル映画会社の危機を救います。
その過程で彼が少しづつステップアップしていくのも嬉しいですね。
音楽部門の責任者に任命されたり、昇給したり、しまいには脚本家の口も?

陽気で軽妙な味。
くりくり動く猫のような瞳、豊かな表情。
真骨頂は「MAKE 'EM LAUGH」。
歌って、踊って、舞台狭しと駆け回る大ナンバー。
ジャンプするたびに鳴る「ぴよょ~~ん」というSEがこんなに嫌味なく似合う方がいらっしゃるでしょうか?
凄まじい運動量ですが、みやさん(美弥)は身軽さを活かして、思わず笑顔がこぼれる楽しい場面に仕上げました。

同じシーンに出ている他の生徒さんも大変ですね。
次から次へと飛び出す仕掛け、どこかがつっかえたらすべてガタガタになります。
バケツに足を突っ込み、白粉を飛び散らせ、はしごに引っかかり、天井から落ちてきた人形と戯れ、爆弾をキャッチし…
とても書ききれないほどの細かい動きが続きます。
コズモの行く手を先回りして、個々の芝居もしつつ、さりげなく彼をサポートする。
目まぐるしく変化する場を滞りなく進めるチームワークが素晴らしいですね。
このシーンは団体賞ものです。

発声法教室でもドンや先生(朝陽つばさ)と絶妙な掛け合いを見せます。
アドリブが微妙にスベりかけても必ず拾うコズモ。
何があっても立て直してくれる彼の機転には救われました。
(自分で拾えないとすがるような目でコズモを見るドンもツボでしたが)

思いがけない代役で大変だったでしょうが、立派に大役を果たした朝陽君もお見事でした!
冒頭のちょっとミーハーなお巡りさんも良かったですね。
舞台度胸と芝居心が光りました。

もちろん、ドンとは作品の目玉であるタップの相性も抜群。
猛練習を重ねたという軽快な脚さばき。
体格の異なるドンに引けを取らない大きな動きでしっかり見せます。
キャシーも加わるナンバーのウキウキするような楽しさ。

前向きな心と、抜群のひらめきで、物語を大きく動かすきっかけを作り出すコズモ。
さりげなく誰かに手を差し伸べることができる優しさをもったコズモ。
みやさんの自然体で力みのない芸が、この作品にまたとない軽やかさを添えてくれました。
なんのかんの言いつつ、リナちゃんにちょっかいを出すところも好きですね。

次はいよいよ『エリザベート』。
実のところ、登場人物で一番好きなのがフランツ・ヨーゼフなのです。
どのようなアプローチでみせてくださるか期待大です!

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「甘い珠城りょう」という新境地を拓いたドン・ロックウッド│雨に唄えば

※本記事に拍手コメントをくださったh様、お返事を差し上げました。お手数ですが、拍手ボタンからご確認いただいてもよろしいでしょうか?

早々に梅雨明けし、雨に唄うどころか連日猛暑だった赤坂ACT。
初日すぐは珠様(珠城りょう)がお風邪を召されないか心配していた滝行ですが、もはや「気持ちよさそう!一緒に浴びたい」と思うほど。
そして千秋楽を迎えた途端、まさかの戻り梅雨!
珠様どんだけ晴れ男役…

ともあれ、温かな夢いっぱいの日々をくれた『雨唄』メンバーに感謝です!
千秋楽おめでとうございました!

* * *

『雨に唄えば』は珠様の太く甘い声質と、温かみのある茶目っ気が上手く作用した演目ですね。
一番の驚きは「甘い珠城りょう」の出現。
もちろん今までにも甘さのある役はありましたが、今回は殊に際立って感じられました。

大好きなシーンはなんと言っても、脚立のラブシーン!
すれ違っていたドン(珠城)とキャシー(美園さくら)の気持ちが通じ合うサウンド・スタジオでの一コマ。

「あぁ、その…君になにか言おうとしているんだ」

初めて恋を知った少年のような初々しさ。
溢れる想いが言葉にならないもどかしさ。

「でも僕は大根役者だから、ちゃんとしたセットがないと言えないんだ」

美しい夕焼け、きらめく満天の星、頬を撫でる優しい夜風。
自分のテリトリーの中で自信を取り戻したように次々舞台装置を整えていくドン。
しかし…

「月明かりの中…」
薔薇の這う四阿に見立てた脚立に立つキャシーを見上げ、言葉を失うドン。
恋に彩られたキャシーの瞳。
その輝きに射られたように息を呑むドン。

切ないまでの愛おしさ、わずかな怯え。
恋に落ちた瞬間、ドンの体内から湧き上がる熱が劇場を染めるのを確かに感じました。
この表現は見事。

やっとの思いでこぼれたのは「君は美しい」。
ほとばしる喜びを抑えられずキャシーもろとも脚立をくるくる回すドン。
ふんわり風をはらんで揺れるキャシーの青いスカート。

二人の胸の高鳴りがダイレクトに伝わってくるような。
忘れていた大切な気持ちを思い起こさせてくれるような。
心ときめく素敵なシーンでした。

* * *

このとろける蜜のような表現が引き出された要因を考えてみました。
もちろん脚本や演出によるものですが、それだけではない、書かれていない部分から発するものについて。

ひとつは、相手役さんが違うから。
トップ就任前の『激情』から直近の『カンパニー』に至る7作品、相手役はすべてちゃぴちゃん(愛希れいか)でした。
学年は一期違い、音楽学校の予科本科からの気心の知れた仲。
トップとしてのキャリアも長く、一公演の主役を張れるだけの三拍子揃った実力の持ち主ちゃぴちゃん。

二人が紡ぎ出すラブシーンからは、愛、親しみ、労り、尊敬…さまざまなニュアンスが読み取れます。
これは深い信頼に裏打ちされた表現であり、戦友や同志に近い二人の関係性によるものと考えます。

対して、今回の相手役は今までほぼ接点のなかったさくらちゃん(美園)。
プログラムのさくらちゃんのコメントにもありますが、学年も離れ、経験も足りない彼女を、庇護し、導いていく珠様。
これがドンの個性に上手くマッチして、これまでにない甘さを醸し出すことになったのではないでしょうか。

* * *

そして、珠様の甘さが大爆発したのはラストシーン!
「YOU ARE MY LUCKY STAR」に乗せて、キャシーを包み込むドン。
愛おしくてたまらない風にキャシーを見つめる瞳の優しさ。
そっと頬を撫でる指先の温かさ。

珠城りょうという男役の最大の武器である包容力に、さらに甘さが加わった。
これはもう無敵なのでは…!?

観客のときめきの扉も開きましたよね。
ババーーーン!!っと。

キャシーを後ろ抱きにして、満面の笑みを客席に見せるドン。
この表情が一番好きです。
全身で娘役さんを抱きしめて包み込んでいるときの顔。

なんですかね、あの純度100%な笑顔は。
「幸せ!」と体いっぱいで叫んでいるような。
照明が要らないくらいの輝きです。
珠様とさくらちゃんが放つ光に満たされる劇場。

とどめは、一度体を離し、向き直って真正面から恋人を抱きしめるドン。
ありったけの力で、二度と離さないと言いたげな若く熱い抱擁。
甘いときめきと、胸いっぱいの幸福に包まれる大団円。
素晴らしい舞台でした!

最後になりましたが、休演された皆さまの一日も早いご快復をお祈り申し上げます。
『エリザベート』で元気なお姿を拝見できることを心待ちにしております。

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歌える!踊れる!芝居ができる!輝月ゆうまの超絶技巧が光る『雨に唄えば』

輝月ゆうまが巧い!巧すぎる!!

「歌えて、踊れて、芝居もできる」まゆぽん(輝月)が、「歌えない、踊れない、芝居ができない」女優リナを演じる可笑しみ。
もちろんファンは彼女が舞台のオールラウンダーであることを知っています。
「本人とは正反対の役をどんな風に演じるのか?」
興味は尽きません。

「まゆぽんなら大丈夫」
「とびきり魅力的なリナちゃんを見せてくれる」
ファンが彼女に寄せる絶対的な信頼と言ったら!

リナは『雨に唄えば』で一番の儲け役です。
しかし一歩間違えば、舞台を壊しかねない難役でもあります。
やりすぎてはいけない。
引きすぎてもいけない。
極めて高度で繊細な技術を要求される役。

これは他の役にも言えます。
いたるところに温かく上質な笑いが散りばめられた『雨に唄えば』。
客席の受けが良ければ、ついエスカレートしてしまう危険をはらんでいます。
うっかりすると、役ではなく芸名の自分が顔を出してしまったりして。
ですが、舞台は一人のものではありません。
全体の調和を乱し、内輪受けに走っては興ざめです。

『雨唄』メンバーはこの辺りが巧みですね。
皆が役として笑いを取っている。
笑わせるために動くのではなく、真摯に動くことで笑いを得る。
ドンやコズモを筆頭に、シンプソン、デクスター、発声法の先生…
皆の優れた連携が、快い笑いを呼び起こすのです。
素晴らしいカンパニーの在り方です。

特に、まゆぽんの匙加減は絶妙です。
押し付けがましくなく、強烈でチャーミングな女優を怪演。
自身の芸を客観視できている証です。
『雨唄』の舞台で、輝月ゆうまに求められるもの、果たすべき役割を、きちんと認識した上でのリナ・ラモントなのです。

ちょっと浅はかなところもありますが、キュートで、憎めなくて、愛おしい。
つい応援したくなっちゃう女の子。
舞台をご覧になった方全員がリナのファンになったのではないでしょうか。

素っ頓狂で、ワガママで、猪突猛進。
そんなリナが皆の心を捉えて離さないのは、その自己肯定感の高さゆえではないでしょうか?
リナはとっても真っ直ぐ。
「ママにも電話するわ」の台詞にもあるとおり、愛されてすくすく育ったことがうかがえます。

だから、自信たっぷりで底抜けに明るい。
ドン(珠城りょう)に邪険にされても気にも留めません。
めげずに何度でも立ち向かっていきます。
そのパワフルさ。

しかし、リナは強いばかりの女の子ではありません。
ソロナンバー『WHAT'S WRONG WITH ME?』。
「なぜダメ?なぜ嫌うの?」
こんなに愛してるのに、どうしてダメなの?
いじらしい胸の内を覗かせるリナの姿に、なぜだか泣けて仕方ありません。

「あたしのミスター・ラモント」に込められた愛と希望。
ドンは「勝手に明るい未来を想像するな」と突き放しましたが、このときばかりはドンが憎たらしくなりましたね。
リナちゃんに冷たくしないで!と言いたくなっちゃいます。

「脳天気に見せてるけど、あたしだって冷たくされたら辛いのよ?」
彼女の胸の奥の哀しみに思いを馳せると切ない気持ちになりますね。
もっとも最終的には「ダメじゃない!」と自分を肯定するのが、さすがのリナちゃん。
立ち直りが早い!

* * *

内面の愛らしさもさることながら、女っぷりも凄い!
もともと目鼻立ちのくっきりした美人さんですが、珠ドンへの愛に彩られたまゆぽんの美しさ、可愛らしさと言ったら!
全身から愛嬌がこぼれ落ちるよう。
ドンを好きで好きでたまらない気持ちが、表情からも仕草からも溢れて輝いています。

くるくる変わる表情も魅力。
ぷっと頬を膨らませた顔すら、とびきりの可愛さ!

スタイルも抜群!
売れっ子女優らしい華やかさで数々の衣装を着こなします。
「感じて このスタイル」で、妖艶な笑みを浮かべながら脚を組みかえるのを真正面で観たときは目のやり場に困りましたー。

* * *

そして、輝月ゆうまのスーパーテクニックを思う存分味わえるのが、歌!

「下手」 が 「上手い」!

リナちゃん甘いわ!
本物の音痴はそんなもんじゃない(ソースは私)!と思っちゃいました。
ひとつひとつの音の外し方が緻密で、まさに職人芸。
考えてみれば、本当の音痴ではこの役はできないのですよね。
「記号」としての下手。
下手の「型」にハマっていれば良いのです。

トーキーの撮影現場で、マイクが拾う声が近づいたり遠ざかったりするのも、まゆぽんの手加減によるもの。
まゆぽんの驚異の超絶技巧で描く「下手」は間違いなく『雨唄』の見どころのひとつです。

ところで私、困ったことに何度か観ている間にリナが悪声とは思えなくなってきたのです。
耳が慣れた??
最初こそ驚きましたが、いまではちょっと個性的だけどいい声じゃない?とまで。
そうなると、ますますリナの可愛さがクローズアップされて、彼女への肩入れが増してしまうんですよね。
贅沢な悩みですねー。困った、困った。

リナちゃんの好きな台詞は「ドニ~~~!」かな?
ドンの親友に対する「コズ」呼びも同様ですが、“自分だけの特別な呼び方”をもっていると親密度が高まりますね。
だから、キャシー(美園さくら)がドンの名を呼んだとき「あんたが生まれるずっと前から「ドン」って呼んでたのよ!」という言葉につながるのですね。
「私だけが、愛する男の名を口にできる唯一の女でありたい」といったところでしょうか?

他にも「バッカみたーい」「トイレにジャーッ」と、リナ語録は枚挙にいとまがありません。

密かにキーポイントだと思うのは「ともだち~~~!」かな?
キャシーを巡って利害が一致したリナとゼルダ(叶羽時)ですが、ちゃんとした「女友達がいる」のはリナという人物を紐解く上でとても大切な要素です。
ドンにはコズモ。
リナにはゼルダ。
心許せる友人は、人生の豊かさの象徴です。
ドンには振られてしまったけれど、リナには慰めてくれる友達がいる。
リナはそんな幸せに恵まれていることが嬉しいですね。

* * *

フィナーレではありがたいことに本来の男役姿も観られます。
中村一徳先生の粋な計らいですね。
ひときわ目立つ長身でセンターに立つまゆぽん。
金髪リーゼントに黒燕尾、しかし、お顔は女化粧のまま。
ちょっとローリー寺西を彷彿させるような、なんとも妖しい色気を醸し出しています。

その姿で存分に男役の美声を響かせるのですが…
一瞬リナの顔が覗くとき、客席がどよめくのが面白いですね。
初観劇の方はあの美しくもカッコいい紳士と、リナちゃんが同一人物とは気づかないのではないでしょうか?
こんないたずらっぽい仕掛けも楽しいものです。

さて、吹き替えが知られてしまったリナはその後どうなったのでしょう?
転んでもただでは起きなさそうな彼女のことですから、案外、ユニークな声のコメディエンヌとして大活躍するかもしれません。
いずれにせよ、リナちゃんの声も含めて丸ごと愛してくれる素敵な人と出会って幸せになって欲しいものです。

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プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
◇更新情報はこちら◇
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