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現代の“異類婚姻譚”『白鷺の城』がハッピーエンドである理由

宙組創設20年にして、初めての本格的な日本物レヴュー。
なぜ今まで一度も機会がなかったのか不思議ですが…

満を持しての作品は、陰陽師と妖狐の因縁をオムニバス形式で描く『白鷺の城』。

玉藻前や妲己、保名に葛の葉に富姫…
おなじみの人物が入れ替わり立ち替わり現れては歌い、踊る。
名場面の美味しいところをアラカルトで楽しめる。
歌舞伎で言うところの「見取り狂言」的な趣向ですね。

きらびやかな映像、華やかな舞台装置を駆使したスピーディーな展開。
雅やかな衣装をまとった見目麗しい宙組生たち。
駆け足ながら、バラエティに富んだ内容を45分の枠内によく収め、「宙組初日本物レヴュー」のタイトルに相応しい豪華絢爛な作品となりました。

* * *

千年に亘り、転生を繰り返す陰陽師(真風涼帆)と妖狐(星風まどか)。
時系列は以下の通り。

(1)紀元前11世紀頃の古代中国【妲己:星風】

(2)奈良時代【吉備真備:真風、妲己:星風】

(3)平安時代中期【安倍保名:愛月ひかる、葛の葉:松本悠里】

(4)平安時代後期【安倍泰成:真風、鳥羽上皇:凛城きら、玉藻前:星風】

(5)室町時代【栗林義長:真風、岡見宗治:芹香斗亜、八重:天彩峰里】

(6)江戸時代初期【幸徳井友景:真風、宮本無三四:桜木みなと】

(7)江戸時代初期【幸徳井友景:真風、宮本無三四:桜木、玉藻前:星風、富姫:松本】

(8)江戸時代初期【男:真風、女:星風】

舞台進行上は、(6)→(4)→(3)→(1)(2)→(5)→(7)→(8)となるので、ややこしいですね。
なにしろ流れが早いので、理解が追いつきません。

プログラムではちゃんと解説されてるのでしょうか?
私同様、プログラムを読んでいない方にはとっつきにくいのでは…と思います。

とはいえ、このようなオムニバス形式は嫌いではありません。
むしろ好き。

プロローグで謎が提示され、徐々に謎の正体が明らかにされる。
萩尾望都の『ポーの一族』を思わせる構成です。

「すきとおった銀の髪」に始まり、「エディス」で幕を下ろすバンパネラの一族の物語。
幸徳井友景の夢語りから始まり、奈良時代から江戸時代を巡る陰陽師と妖狐の物語。

断片をつなぎ合わせて、ひとつの物語を紡ぐ手法は幻想性が高まりますね。

夢はおぼろに頼りなく、つかみかけてはするりと逃げる女の面影。
あの女は誰なのか?
自分にとってどういう存在なのか?

すべてが明らかになったとき、女は命を落とす。
「二度と決して、あなたを手放さない」
そう誓った男は自刃し、女の後を追う。

美しくも妖しい、上田秋成の怪異小説を思わせる味わいがあります。

* * *

「異類婚姻譚」という物語のジャンルがあります。
人と、人ならざる者との恋愛や婚姻が描かれる「物語の型」のひとつで、世界各地に伝承されています。

上田秋成が著した『蛇性の婬』ならば人間と蛇。
『白鷺の城』では人間と狐。

人間の相手となるもの(動物/妖怪/物の怪など)は異民族を表す、という説があります。
つまり、「外から来た者」「自分たちとは異なる常識を持つ者」の象徴ですね。

『蛇性の婬』は蛇が封じ込められて終わりますが、『白鷺の城』は人と狐が結ばれる。

「今ひとたびの…」で、折り重なって倒れ伏す友景と玉藻前が蘇るシーンはドラマティック。
因縁から解き放たれ、ようやく結ばれる二人。
比翼の鳥となって羽ばたく姿に涙しました。

『雪女』や『鶴の恩返し』など、悲しい結末を迎えることが多い“昔ばなし”。
かたや、ハッピーエンドの『白鷺の城』は、グローバル化が進む現代ならではの「異類婚姻譚」であり、現実社会への呼びかけでもあります。

自分たちと異なる存在と、上手く調和し、共存していくこと。
人間と狐が手を取り合うラストはそのような関係を示唆している、と捉えました。

もう、人と狐が引き裂かれたり、人と狐の間に生まれた子が泣くような時代に後戻りしてはならないのです。

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星風まどかさんについて、組の名刺代わりのショー『シトラスの風』について

『天は赤い河のほとり』の感想。
かなりスピーディーな展開でしたが、原作を知らず予習もせずに観た私にも分かりやすく、楽しむことができました。
自分の頭の中の知識と、劇中の出来事がパズルのようにサクサク当てはまっていくのも快感。
ネフェルティティの胸像が隻眼である理由など、エピソードを上手く取り入れてるなぁと感心したものです。

小柳奈穂子先生の脚本は気取ったところがなく、平易で親しみやすいのがなにより。
物語の流れの見せ方が巧みで、原作ファンも多く訪れる『天河』の演出に彼女を起用したのは正解だったと思います。
原作ファンの友人も「ヴィジュアル再現度が高く、よくまとまったストーリーだった」と話していました。

とはいえ、膨大な原作を90分に圧縮した弊害はいたるところに。
多少の駆け足感は否めません。
「これはこういうことかな?」「原作ではきちんと描かれているのだろう」と適当に補いつつ観ましたが、少々不親切ですね。
せめて一本物だったら良かったのですが、宙組誕生20年で『シトラスの風』を併演する都合上、仕方なかったのでしょうか?

さて、記念すべき宙組20周年。
真風涼帆さんと星風まどかさんの新トップお披露目も重なり、二重の喜びとなりました。
まどかちゃんは初の生え抜きトップ娘役でもありますね。

私が宝塚を観始めた頃はまだ4組制で、しばらくお休みして戻ってきたら5組に増えていて驚きました。
そこから、大空祐飛さん、凰稀かなめさん、朝夏まなとさんと歴代トップの舞台を拝見してきましたが、常に変わらないイメージは「大人っぽくて、ゴージャスで、スタイリッシュな宙組」。
真風君が就任されてからも、その印象は引き継がれ、むしろ一層強化され、嬉しい限りです。

面長で体格の良い真風君と、丸顔で小柄なまどかちゃん。
ゆったり鷹揚で頼もしい芸風の真風君と、可愛らしく三拍子揃った実力の持ち主まどかちゃん。
見た目も中身のバランスもぴったり。
素敵なトップコンビ誕生に、心よりおめでとうを申し上げます。

* * *

前回の記事は男役さん中心でしたので、今回はまどかちゃんについて。

お芝居のユーリ役は、ショートカットがよく似合う活発なヒロインで、フレッシュな魅力を振りまきました。
賢くて、意志が強く、思いがけない状況に陥っても、前向きに進もうとする姿が印象的。
現代に残してきた家族や友人、ボーイフレンドに未練はないのかな?と思いましたが、原作ではもっとページが割かれているのでしょうね。

むしろ、カイル(真風)と共に戦いに身を置くことで次第に「自分が過去に呼び寄せられたのは意味のあること」「自分に課せられた使命は、カイルと共に平和を実現すること」と悟っていきます。
特に、「自分が享受していた平和は、過去の誰かの犠牲の上に成り立っている」という、物語の最も大切な部分がきちんと伝わってきたのがなによりでした。

ショーは「ノスタルジア」が秀逸。
クラシカルで美しく、これぞ宝塚という場面。
優しくリリカルなまどかちゃんの“O mio babbino caro”で幕を開けます。

数年前に観た全国ツアーでは、同じシーンでみりおんちゃん(実咲凜音)の歌声を堪能しました。
透き通るように繊細なみりおんちゃん、柔らかくまろやかなまどかちゃん。
代替わりしても美声を楽しめるのは嬉しいことです。

組を象徴するような作品、名刺代わりになる作品を持っていることは幸せですね。
宙組の『シトラスの風』しかり、花組の『EXCITER!!』しかり。
世代を超えて受け継がれ、観客もまたその時々のスターさんの輝きと、組の伝統を味わえる。
とても素敵です。

閑話休題。
ひとりの女性を巡る恋の鞘当て。
定番のシチュエーションながら、非常にドラマティックな盛り上がりを見せる場面です。
“Nessun Dorma”に乗せて対立する男ふたり。
ふたりの間を揺れ動く女。

胸元を開けたシルバーのサテンシャツのキキちゃん(芹香斗亜)は華やか。
襟元の詰まった純白のシャツの真風君は禁欲的。
異なる色気がぶつかり合って、めちゃくちゃカッコいいですね!

やがて、キキちゃんが真風君に手袋を投げつけ…
結末は誰にも分かりません。
決闘はどちらが勝ったのか?それとも相討ちだったのか?
“若さ”ゆえの美と無謀。
“青春”の儚さや虚しさ。
「ロマンチック・レビュー」の粋を集めたような名シーンです。

また長くなってしまいました。
続きは改めて。

○『天は赤い河のほとり/シトラスの風 -Sunrise-』関連記事はこちら↓
カッコいい あぁカッコいい カッコいい│『天は赤い河のほとり』の男たち(真風涼帆・芹香斗亜・愛月ひかる)
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カッコいい あぁカッコいい カッコいい│『天は赤い河のほとり』の男たち(真風涼帆・芹香斗亜・愛月ひかる)

カッコいい あぁカッコいい カッコいい

観劇後、思わず浮かんだヅカファン川柳。
いやー、本当にカッコ良かった…
出てくる男、出てくる男、ことごとくカッコいい!

カイル(真風涼帆)が出てきてカッコいいーーー!!!

ラムセス(芹香斗亜)が出てきてカッコいいーーー!!!

マッティワザ(愛月ひかる)が出てきてカッコいいーーー!!!

誰かが登場するたび、ひたすら「カッコいい!カッコいい!」と叫び続ける私の脳みそ。

さらに、ザナンザ(桜木みなと)、ルサファ(蒼羽りく)、カッシュ(和希そら)、ミッタンナムワ(留依蒔世)…
後から後から姿を現す美しい男役さんたち。
『NICE GUY!!』の“イケメンオークション”のシーンを思い出しますねー。
宙組の層の厚さを実感しました。

それにしても、真風君は堂々たるものですね。
もう3年くらいトップスターをやってるんじゃないかと思わせる落ち着きっぷり。
ゆったり鷹揚な色気。
王者の風格も申し分なし。
可愛らしいまどかちゃん(星風まどか)との並びもぴったり、お似合いのコンビです。

浅黒い肌×金髪のキキちゃん(芹香)は危険ですねー。
ちょっと遊び慣れた感じの艶っぽさ。
時折見せる猛禽類のような鋭さ。
武将としての佇まいも見事で、主人公(カイル)に対する敵役として、しっかり存在感を示しました。
ラストシーンで「俺の子孫とお前の子孫が結ばれる」的な台詞があり、物語の壮大さを感じさせました。

愛ちゃん(愛月)マッティワザも存在感抜群。
短い場面ながら、姉タトゥーキアへの愛もしっかり見せ、深く印象に残りました。
切ない愛、やるせない想い、愛ちゃんはそういった感情を見せるのが本当に巧いですね。

ところで、ひとつ分からないことが。
どうしてマッティワザはユーリにタトゥーキアのイヤリングを託したのでしょうか?
たぶん私が前後を見逃したせいですが、いまいちこの部分が分からなくて。
ご存知の方、よろしければ教えてくださいませ。

真風君、キキちゃん、愛ちゃん。
こんなに素敵な3人が揃ったなんて奇跡のよう。
全員、スタイル抜群でハンサム。
成熟した大人の男役としての味がある。
しかし、見事なほど個性がかぶらない。
ひとりひとりも魅力的ですが、3人並ぶと大人っぽさとゴージャスさとスタイリッシュさが何倍にも増すのです。
さらに嬉しいのはコスチューム物がばっちりハマること!

この完璧なトライアングルと、まどかちゃん、そして宙組生たちが一丸となった舞台。
新生宙組がこれから私たちにどのような世界を見せてくれるのか…
わくわくが止まりません!

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夢が叶った!?大好きな宝塚歌劇とマリメッコのコラボが実現!│ハンナのお花屋さん

ウニッコーーー!!!

フィナーレは溢れるようなウニッコ三昧!

マリメッコ好きにはたまりません!!

大好きな宝塚と大好きなマリメッコのコラボなんて、最高!
お衣装にマリメッコが採用されたと伺い、嬉しくて思わずウニッコ柄を身に着けて行った私。
心なしか、会場内でもウニッコさんが目立ったように思います。

オープニングは青ウニッコシャツ×白パンツの男役さん群舞。

カッコいいーーー!!!

スタイル抜群のタカラジェンヌですから、特大の芥子の花模様もばっちり着こなします。
あきらさん(瀬戸かずや)を筆頭に、あかちゃん(綺城ひか理)や、つかさ君(飛龍つかさ)…脚長ハンサムさんが勢揃い。
どこを見ればいいか迷う!
振りの美しい方が目に入ったなぁと思ったら組長さん(高翔みず希)でした!

キキちゃん(芹香斗亜)は、なんと青ウニッコのスーツ!!
こんなインパクト大なスーツ、着こなせるのタカラジェンヌだけだわー。
全身ウニッコなのにノーブルさを保ってるキキちゃん…何者!?

娘役さんは赤ウニッコのミニドレスに、ショッキングピンクのタイツ。
とても可愛いんですが、欲を言えばタイツはマットな素材が好みかな…
テカテカな生地はウニッコの素朴さと不釣り合いなように思います。

じゅりあさん(花野じゅりあ)は本編のロングヘアとはガラリとイメージを変えた、ツイッギー風金髪ショートのウィッグ。
ドレスのデザインも相まり、60年代っぽくて素敵。

本編では音くり寿ちゃんのお歌があまりなくて残念でしたが、ここではソロが聴けて満足!

彩世さん(仙名彩世)は濃いピンクのウニッコ。
たっぷり生地を使ったスカートが踊るたびにふんわり揺れて、とても華やか。
ミアは体の線が隠れるたっぷりしたお衣装が多かったので、フィナーレでは綺麗なスタイルが観られて良かったです。

みりおさん(明日海りお)は、スカイブルーの地に黒×ライトピンクのウニッコスーツ。

みりおさんの生地だけキラキラ加工されてるのがツボ。

トップスター仕様のマリメッコ!斬新ですね!

ちなみに、フィナーレの音楽は『花のワルツ』のアレンジ。

花組/お花屋さん/花柄/花のワルツ …と花尽くしのフィナーレでした!

ところで、公演終了後はこのお衣装どうなってしまうのでしょうか?
あまりにインパクトが強すぎて、他の作品に使われたら「ハンナの…」って分かっちゃいますよね。
かと言って、一回こっきりではもったいない!
『タカラヅカスペシャル』とかのイベントで大活躍したりして…

ここからは余談。
一目でMarimekko(マリメッコ)と分かるMaija Isola(マイヤ・イソラ)のUnikko(ウニッコ)が採用されましたが、個人的な好みとしてはもう少し優しい感じの柄ならば、より『ハンナのお花屋さん』の世界観にフィットしたのではないかと…

Annika Rimala(アンニカ・リマラ)のPuketti(プケッティ“花束”)なら、カラーバリエーションも豊富でぴったりでは?
男役さんには可愛らしすぎるかしら?

または、石本藤雄のKesanto(ケサント)。
“休耕地”のネーミングそのままに、野に咲く素朴な花々が水彩画風に描かれます。
植物の瑞々しい香りが立ち上ってくるような美しいパターン。

同じ水彩調では、Aino-Maija Metsola(アイノ-マイヤ・メッツォラ)のJuhannustaika(ユハンヌスタイカ“真夏の魔法”)も、北欧の短い夏を思わせる鮮やかさで素敵。
ちなみに私は彼女のSitruunapuu(シトルーナプー“レモンツリー”)が大好き。
身に着けるだけで、ぱっと明るい気分になれるんですよね。

ところで私、今年始めの記事に「マリメッコの生地が宝塚で採用されないかなー?」と書いていたんです。
マリメッコファン見逃し厳禁!Bunkamura ザ・ミュージアムのマリメッコ展
思いがけず早々に叶って嬉しい!

「宝塚で『はいからさんが通る』が観たい」と書いたのも実現しましたし(チケットは取れませんでしたが)、望めば叶うって本当ですねー。
これからもこっそり要望を書いていきたいと思います。

○『ハンナのお花屋さん』関連記事はこちら↓
ニュータイプの主人公誕生!明日海りおは『草食系』ではなく『お花屋さん系』│ハンナのお花屋さん
“白い貴公子”芹香斗亜アベルが素晴らしい!│ハンナのお花屋さん
矢車菊の花言葉は“繊細”―たおやかに強く、繊細な仙名彩世ミア│ハンナのお花屋さん

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“白い貴公子”芹香斗亜アベルが素晴らしい!│ハンナのお花屋さん

過去と現在が交錯する『ハンナのお花屋さん―Hanna's Florist―』。

主人公クリス(明日海りお)とミア(仙名彩世)。
クリスの両親、アベル(芹香斗亜)とハンナ(舞空瞳)。

若く美しく、才能があり、周りに愛されるチャーミングな男、クリス。
誰とでも打ち解ける彼ですが、しかし、どこか他者を寄せ付けない謎めいた部分もあります。

それはなぜか?
クリスとミアの距離が近づいたり離れたりするのと並行して、アベルとハンナの真実が明らかになります。
中盤以降は加速度的に物語へ引き込まれていきました。

キキちゃん(芹香)は“デンマーク貴族の御曹司”の設定がピタリとハマる貴公子っぷり。
エーリクの台詞にもありますが、持って生まれた品の良さは余人をもって代えがたい魅力ですね。
舞空瞳ちゃんは森の妖精が舞い降りたかのような愛くるしさ、清らかさ。
このふたりで『うたかたの恋』を観てみたいですね。

身分や境遇違いの恋は物語の定番ですが、ハンナの社交界デビューのシーンはドラマチックで見応え有り。
「私が生きる場所はここではない」
“街へやって来た森の妖精”ハンナに、そう確信させるだけの魔窟感。

王子は陸、人魚姫は海。
貴公子は街、妖精は森。
それぞれが生きられる場所は違ったのです。

クリスのルーツがデンマークだけに『人魚姫』のモチーフが其処此処に見受けられますが、ハンナが声を失うのもそのひとつ。
(過剰なストレスによる一時的な失声と思われますが)

公演中ですので詳細は差し控えますが、ぼんやりしていたアベルとハンナの物語が明らかになるにつれ、二重構造の奥深さに気付かされるのです。

白い貴公子と純真無垢な少女が恋に落ちる。
おとぎ話ならばラストシーンは「めでたしめでたし」一択ですが、現実はままならぬもの。

アベルが背負うものはあまりに大きく、そして彼はもうひとつの“ある事情”のため、ハンナとの幸福だけを追い求めることを自分に許さなかったのです。
しかし、その誓いがもたらした結末はあまりに酷く、辛いものでした。

アベルの心に安らぎは訪れたのか?
恐らく、あのたったひとつの願いが成就した時、彼の魂は救いを得たのだと思いますが…

クリスにとって、ミアを知ることが父母を知ることになる。
父母を知ることがミアを知ることになる。

幼い頃、両親と暮らした小さな家に固執するクリス。
やがてロンドンからデンマークへ、夢の家に移り住んだ彼ですが、それはかつての“HOME”ではありません。
容れ物を満たすのに必要なもの。
彼のユートピアに欠けていたピースこそ、ミアだったのです。

アベルとハンナのパートは、独立した物語を観たような充実感。
決して多くが語られているわけではありませんが、行間を埋めたのはひとえにキキちゃんと舞空瞳ちゃんの力量によるもの。

特に、これが花組集大成となるキキちゃんの素晴らしかったこと。
アベルというひとりの男の愛、喜び、父性、哀しみ、苦しみ、絶望…すべてが客席に届きました。
そして、舞台の上にキキちゃんの姿が無い時でも、しっかりその存在を感じられました。

上品なお顔立ち、美しいスタイル、貴公子然とした佇まい。
キキちゃんの魅力は単なる白い王子様にとどまらず、きちんと血の通った骨太な男らしさも感じられるところ。
伸び盛りの男役の色気も加わり、鬼に金棒ですね。

フィナーレのトップコンビのデュエット前には、キキちゃんへの餞のシーンが用意され、会場中から温かな拍手が贈られました。

この春、同じ赤坂ACTシアターでキキちゃん主演の『MY HERO』を観たのが昨日のことのようです。
本公演後に宙組へ異動されますが、花組で得たものを糧として、新天地で更に高く大きく羽ばたかれることを期待しております。

○関連記事はこちら↓
ニュータイプの主人公誕生!明日海りおは『草食系』ではなく『お花屋さん系』│ハンナのお花屋さん

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プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
◇更新情報はこちら◇
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