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花に嵐のたとえもあるぞ、さよならだけが人生だ│桜嵐記

“花に嵐のたとえもあるぞ、さよならだけが人生だ”

月組トップスター・珠城りょうさんの退団会見から一週間。
昨日、トップ娘役・美園さくらさんの同時退団が発表されました。

卒業公演は、珠様とご縁の深い上田久美子先生が手がける『桜嵐記』。
タイトルを見た瞬間、頭に浮かんだのが冒頭の「花に嵐」の一節でした。

花に嵐のたとえもあるぞ、さよならだけが人生だ


子どもの頃に父の蔵書で目にして以来、なんとなく心に残っていた言葉。
突き放したような、しかし、どこかカラリと明るく、悟りきった響きが魅力です。

元ネタは、唐代の詩人・于武陵(う ぶりょう)の五言絶句「勧酒(かんしゅ)」。

勧君金屈巵
満酌不須辞
花發多風雨
人生足別離

(君に勧む金屈卮[きんくつし] 満酌辞するをもちいず 花ひらけば風雨多し 人生別離足る)

「花に嵐…」は井伏鱒二の訳によるものです。

コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

(この杯を受けてくれ どうぞなみなみ注がしておくれ 花に嵐のたとえもあるぞ 「さよなら」だけが人生だ)

リズミカルで親しみやすい言葉。
後半二行は、太宰治や寺山修司により、さらに広く知られるようになりました。

上田久美子と珠城りょう


上田久美子作品との出会いは2013年の『月雲の皇子』。
先生のデビュー作であり、珠様の初主演作でもありました。

当時、特に応援している生徒さんがいたわけでもないバウホール公演に東京からわざわざ駆けつけたのは、ただ「衣通姫伝説」というテーマに惹かれたから。

しかし、そこで私が観たのは若い才能と情熱の奇跡の融合でした。

研ぎ澄まされた台詞、月組子の緊密な芝居。
物語世界に飲み込まれるように幸せな演劇体験でした。

珠城りょうに心奪われた瞬間│月雲の皇子

そして、『BADDY』。
良くも悪くも固定化された“珠城りょう”のパブリックイメージを覆す作品は衝撃でした。

上田久美子先生、“珠城りょう”をぶっ壊してくれてありがとうございます!│BADDY

愛あれば命は永遠に


節目節目に珠城りょうのターニングポイントを刻みこんできた上田先生。
最後の共作となる『桜嵐記』は、どんな珠城りょうを描くのか?

ヒントは公演解説にあります。
「桜花咲き乱れる春の吉野で束の間の恋を得、生きる喜びを知る」
「南朝の武将・楠木正行の、儚くも鮮烈な命の軌跡を、一閃の光のような弁尚侍との恋と共に描く」

潔く散る桜花は仏教思想の“無常”の象徴であり、男役の“滅びの美学”とも重なります。
トップスターの卒業公演にはもってこいのテーマですね。

珠様の男役像の魅力は「健康的な逞しさと裏腹な“死”との相性の良さ」と考える私。

鮮やかに咲き、跡形も残さず、きっぱりと去る。
しかし、短い人生の中で「意味ある生」を生きられれば「永遠」を手に入れることができる。

それはどういうことか?
誰かの心の中に生き続けることですね。

弁尚侍(美園)との恋により「生きる喜び」を知る正行(珠城)。
四條畷の合戦後、正行の菩提を弔うため、尼となる弁尚侍。
正行は彼女と共に生き続けるのです。

珠様のトップお披露目公演『グランドホテル』にも「生きる喜び Joie de vivre」という言葉がありました。
男爵(珠城)によって、生きる喜びを取り戻したエリザヴェッタ(愛希れいか)。
男爵は死してなお、彼女の心に光を灯し続けたのでしょう。

「死」に打ち克ち、「愛(生)」を得る。
タカラジェンヌとしての「死(卒業)」を迎え、宝塚の歴史の中に、ファンの心の中に、「永遠」となる。

お披露目と卒業公演が同じ言葉でリンクする。
偶然か必然か。
不思議な一致です。

宝塚「男役」の魅力ってなんだろう?【case1.珠城りょう】
まゆぽん支配人はロシア語で何と言っているの?│グランドホテル

今、このひとときを共に


長い間、日本では「花」といえば「桜」を指す慣わしがあります。

「花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」や「願はくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のころ」など多くの歌が残されていますね。
井伏が訳した「花に嵐」の「花」も「桜」であると考えてよいでしょう。

『桜嵐記』の「桜」に「美園さくら」を連想し、「花に嵐のたとえもあるぞ、さよならだけが人生だ」に結びつければ、卒業公演のタイトルとしては極上。

別れはすぐそこに迫っているけれど、今、この(杯を交わす)瞬間は共にいよう。
「さよなら」だけが人生だから、今、このひとときを共に過ごそう。楽しもう。

タイトルに込められた餞の想い。
これが宝塚の温かさです。
冬真っ只中の公演となりますが、せめて劇場はうららかな春爛漫の空気に満たされますように。

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美園さくら、満開になる!+キャスト個別感想(光月/鳳月/風間/夏月/輝月/暁)│I AM FROM AUSTRIA

一日遅れのクリスマスプレゼントは月組の『I AM FROM AUSTRIA-故郷は甘き調べ-』。
これにて2019年の観劇納め。
月組(ON THE TOWN)で始まり、月組(IAFA)で終わった一年。
今年も沢山の素晴らしい作品に出会えて幸せでした。

一年の締めくくりにふさわしいハッピーストーリー。
登場人物の誰もが愛しくなる『IAFA』のざっくり感想を。

美園さくら、満開になる!


いやー!もう!
今までどこに隠れていたの!?ってくらい美園さくら全開でした!
あなたは「エマ・カーター」という役を待っていたのね、と腑に落ちました。
それほどエマとさくらちゃんがぴったりフィット。

周囲と一線を画す、歯切れよくウィットに富んだ台詞回し。
“女優”を感じさせるゴージャスな仕草。
なにより、歌!

一曲目の歌い出し。
え?何?何?誰が歌ってるの?
さくらちゃん!?

こんな声が出せるの?
こんなふうに歌えるの?

いわゆる“娘役歌唱”とは完全に別物。
『IAFA』のナンバーをモノにし、エマと同化するまで、どれほどお稽古を積まれたか…
思わずそんなことに思いが至ってしまうほど、今までと格段に違う、新しいさくらちゃんでした。

まさに「飛躍」という言葉がぴったり。
いいお役に出会え、役者冥利ですね。

愛すべきエードラーの住人たち


○エルフィー・シュラット(光月るう)
るみこさん(光月)最高ですね!大好き!
「だって、ミュージカルだもの!」の象徴のようなキャラクター。

彼女は何者ですか?
みんなを幸せにする妖精?魔法使い?

気になって調べてみたら、ドイツ語の女性名「Elfi」には「妖精、不思議な力」の意味があるらしく…
えーっ!?もしかして本当に…?
まあ、あれこれ追求するのも野暮ですね。
だって、ミュージカルなのですから!

事あるごとに繰り出されるオーストリアン・ギャグ。
個人的にはヨハン・シュトラウス父子のくだりでありえないくらい笑っちゃいました。

彼女のようにチャーミングに年齢を重ねていきたいものです。

○ヴォルフガング・エードラー(鳳月杏)
高田純次風味なパパ。
ちなつさん(鳳月)は舞台にいるとき、「あ、ちなつさんだ」と思わないんですよね。
「○○さんが演じてる役」ではなく、その人物が居る。
イメージの固定しない役者、好きです。

○フェリックス・モーザー(風間柚乃)
可愛い人たらし。
あのほっとけない感が演技だとしたら恐ろしい。

“そこに居る”人々


○ヘルタ・ヴァルトフォーゲル(夏月都)
なつこさん(夏月)が現れた瞬間、「おぉっ!」とのけぞりました。
なんなんですか、あの実存感。
いるいる、こういう人!
エマの名前を聞いて、キオスク(なのかな?)から出てきたときのただならぬ空気。
「この女性はエマにとって深い関わりのある人物に違いない」と瞬時に悟らせる力。

山小屋からの電話を受け、ささやくようにつぶやく「アデーレ…」の限りない温かさ。
あれは“母親”の声です。
(無性に自分の母の顔が見たくなりました)

母子の間に何があったか、そして何が起きようとしているのか。
おぼろげながらすべてを観客に納得させ得る芝居。

『IAFA』のMVPは、なつこさんに決定!

○ライナー・ベルガー(輝月ゆうま)
この人はどうして何を演ってもカッコいいんでしょうね~~
ピンクの長髪とか…反則。
(「ちょうはつ」と入力したら「挑発」と出たけど、あながち間違いではない)

どんなにゲスな男を演じても、にじみ出る知性と艶。
なぜゴシップ記者になったのか、彼の半生が気になります。
だって絶対只者じゃない!
人生に倦んだような態度の源はどこにあるのか…
『IAFA サイドストーリー・ライナー編』希望。

○パブロ・ガルシア(暁千星)
繊細でとてもいいお役でしたね。
「エマ、好きな人がいるんでしょ?」
「僕は君の味方だよ」

傷ついたエマの心に優しく沁み入る言葉。
他者に対する誠実。
ありちゃん(暁)の澄んだお芝居がピタリとハマったパブロ。

フェリックスへ向ける視線も情熱的でありながら、こまやかに優しく、パブロの愛の形を物語ります。
ラストはふたり並んで生きる未来が思い浮かぶような素敵なシーンでした。

怒涛の発表あれこれ


昨日から怒涛の発表ラッシュ。
ちょっと早い劇団からのお年玉でしょうか!?

なかでも注目は『ピガール狂騒曲』のヴィジュアル解禁。
深呼吸してから見てね、な画像

珠城りょうが新しい扉を開いた!

男と女のあわい、ギリッギリの妖艶を突いてきましたねぇ…
本当にあのジョージお坊ちゃまと同一人物ですか??

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○『I AM FROM AUSTRIA』関連記事はこちら↓
五つ星獲得なるか!?話題作『I AM FROM AUSTRIA-故郷は甘き調べ-』に月組が挑む!

蘭乃はなドットコム?―宝塚歌劇とお花についてあれこれ

食卓も秋らしいお花に替えたくて、黄色のピンポンマムを中心に、濃い紫のトルコ桔梗と薄紫の女郎花を活けました。
月組カラー×宙組カラーでいい感じです。

今回は、宝塚と切っても切れない「お花」にまつわるあれこれを。

日常に潜む“タカラヅカ”を探す楽しみ


東京公演の観劇がてら、よく訪れるレストランのレストルームにも、トルコ桔梗とルリタマアザミが飾られていました。

ルリタマアザミってご存じですか?
まんまるで青いハリネズミみたいな花。
見たことはあるけど、名前が分からない花が「ルリタマアザミ」と知ったときは驚きました。
「るりたま(美弥るりか×珠城りょう)!?」って。

なんでもない日常に潜む“タカラヅカ”を探すのは楽しいですね。
「るりたま」という名前の花がある!

宝塚と胡蝶蘭


先日、らんちゃん(蘭乃はな)のお名前を打とうとしたら、サジェストに「ランノハナドットコム」って出たんですよ。
なんだろう?と思って飛んでみたら、胡蝶蘭専門のお花屋さんでした。

胡蝶蘭は歌劇には欠かせないお花。
今は楽屋にお花を入れることはできませんが、卒業生のブーケでは定番人気。
名前の通り、ひらひら舞う蝶のような華麗な花姿はタカラジェンヌにぴったりです。

「蘭乃はな」という芸名は双子の「すみれ乃麗」さんと並び、可愛くて娘役さんらしいお名前ですね。
「蘭」に「すみれ」、いずれも宝塚らしい花です。
もしもの話ですが、もし三つ子ちゃんだったら、もうひとりは「桜」でしょうか?

そして、「らん」「れい」ときたら「りん」?
「桜乃りん」なんてお名前、いかにもありそうな感じがします。
(OGに桜乃彩音さんがいらっしゃいますね)

おとめと花


年に一回発行される宝塚歌劇団の生徒名鑑『宝塚おとめ』。
「好きな花」が宝塚ならではの項目で好きです。
応援している生徒さんがお好きな花の柄のレターセットでお手紙を書いてみたりして…

空欄のままの方もいらっしゃいますが、それはちょっと寂しいですね。
まさおさん(龍真咲)だったと思いますが、薔薇の品種名まできちんと書いてらして、本当にお好きなのだなと嬉しくなりました。

ちなみに私は、薔薇ならダブル・デライトと夢香が好き。
沈丁花、くちなし、金木犀も好き。
同じ花を挙げてらっしゃる生徒さんには親しみを感じますね。

ある娘役さんの「どくだみ」はインパクト抜群!
可憐で控えめな姿からは想像もつかない強いクセのある香り。
食用や薬用にもなるお花。
老若正邪演じ分ける、その方の舞台そのもの。

好きな花と芸風の共通点を探しながら『おとめ』を眺めるのも楽しいかもしれません。

あの日薔薇一輪


ある生徒さんに頂いた薔薇の花。
特別な日の思い出を残したくて、見よう見真似でドライフラワーにしてみました。
色も形も思いのほか綺麗に保たれ、初めてにしては上出来。
見るたびに楽しかった記憶が甦ります。

お花を頂くのは嬉しいものですが、大好きな方からならば喜びもひとしお。
もともと薔薇は大好きですが、素敵な思い出が加わってますます好きになりました。

ただいま東京宝塚劇場で上演中の花組『青い薔薇の精』も薔薇が重要なモチーフ。
青い薔薇の花言葉は「夢が叶う」
長い間、先頭に立って宝塚人気を引っ張ってこられた、みりおさん(明日海りお)のラストステージにふさわしいですね。

宝塚に憧れた少女が、大好きな場所で沢山の夢を叶え、まもなく卒業しようとしている。
そんなみりおさんの姿に重なるような作品なのでしょうか?
楽しみに見納めたいと思います。

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現代の「白薔薇の君」明日海りお―各組トップコンビを薔薇にたとえてみました

いつも宝塚にまつわる薔薇情報を教えてくださるw様から「シャルム Charme」という品種を教えていただきました。
みりおさん(明日海りお)退団公演のショー「シャルム!」と同じ名前ですね。

お芝居『A Fairy Tale ―青い薔薇の精―』では、青薔薇の精に扮されるみりおさん。
かつて自然界に存在しなかった青い薔薇の花言葉は「不可能」。
しかし、品種改良により青い薔薇が生まれてからは「夢が叶う」となりました。

宝塚に憧れて入団し、ひとつひとつ夢を叶え、ファンに夢を与え、名実ともにトップ・オブ・トップとしてご活躍のみりおさんにふさわしい花ですね。

現代の「白薔薇の君」明日海りお


もうひとつ、みりおさんにお似合いと思うのは真っ白な薔薇。
何もかも削ぎ落としたような純白が、卒業を間近に控えたみりおさんに重なります。

「白薔薇の君」といえば、永遠の貴公子・春日野八千代先生の代名詞。
みりおさんは現代の白薔薇の君でしょうか。
甘く、優しく、薫り高い“男装の麗人”。

みりおさんが白薔薇なら、他の方は?
各組トップコンビのイメージに合った薔薇を選んでみました。
(左がトップさん、右がトップ娘役さん)

花組


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左:明日海りお/パスカリ Pascali
右:華優希/ポンポネッラ Pomponella

ほんのりアイボリーがかったぬくもりのある白、気高いイメージの剣弁高芯咲きのパスカリがみりおさんっぽいかなー?と。

少女漫画から抜け出たように可憐な華ちゃんは、弾むような響きが愛らしいポンポネッラ。
私の大好きな薔薇です。

月組


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左:珠城りょう/グラハム・トーマス Graham Thomas
右:美園さくら/フレグラント・アプリコット Fragrant Apricot

明るくおおらかな男役像が魅力の珠様は、ぬくもりのある黄色のグラハム・トーマス。
新たにさくらちゃんを相手役に迎えたことで、さらに包容力が増したように思います。

まだ五分咲きながら大輪の花を予感させるさくらちゃん。
期待を込めて、ほんのり桜色のフレグラント・アプリコット。

雪組


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左:望海風斗、右:真彩希帆(名称不明)

だいもんさん(望海)の歌声に包まれる至福のひとときをイメージした紅薔薇。
香り高く、表情豊か、ベルベットのようになめらかな美声。

みなぎる生命力が魅力のきぃちゃん(真彩)は、燃えるようなオレンジ色の薔薇。
彼女の舞台同様、見るだけで元気が湧いてきます。

星組


img-20190614_9.jpg
左:紅ゆずる/クイーン・オブ・神代 Queen of Jindai
右:綺咲愛里/クイーン・エリザベス Queen Elizabeth

絵に描いたような“宝塚の男役”紅さんは、いかにも薔薇らしい薔薇のクイーン・オブ・神代。
ゴージャスできらびやかな花姿は星組全体の印象でもあります。

偶然にも星コンビはQueen並びとなりました。
艶やかな淑女と無垢な少女が同居するあーちゃんは、柔らかで凛としたクイーン・エリザベスのイメージ。

宙組


img-20190614_10.jpg
左:真風涼帆/ブルー・パーフューム Blue Perfum
右:星風まどか(名称不明)

どこかミステリアスで底の知れない魅力の持ち主、真風さんはブルー・パーフューム。
“Perfum”の名前が示す通り、華やかで甘いライチのような香りが特徴です。

愛らしいヴィジュアルに反し、三拍子揃った大人っぽい持ち味のまどかちゃん。
内と外で色の異なる花びらがイメージにぴったり。

花で楽しむ宝塚


「トップコンビと薔薇」いかがでしょうか?
完全に自己満足のテーマですが、生徒さんを思い浮かべながら選ぶのは楽しかったです。

乙女の花園、宝塚。
花とは切っても切れない結びつきがあります。
芸名に「花」にまつわる言葉を使われている方も多いですね。
優希さん、美園さくらさん、綺愛里さん。

これからも折りに触れ、歌劇と花の話題をお届けできればと思います。

なお、名前を載せた薔薇は神代植物公園のバラフェスタ、名前がないのは代々木公園の「バラの園」で写したものです。
名無しの薔薇をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお教えくださいませ。
(きぃちゃんのは「オリンピック・ファイヤー Olympic Fire」かな?と思うのですが…代々木だけに)

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○「宝塚と薔薇」関連記事はこちら↓
「スイートハートの思い出」という薔薇がある!
「たまき」が咲いて、まもなく『夢現無双/クルンテープ』東京初日の幕が開く
望海風斗×真彩希帆コンビにぴったり!「希望」という薔薇がある!│神代植物公園 秋のバラフェスタ2018
「たまき」という薔薇がある!
“グランドホテル”という薔薇がある!宝塚ファン視点の神代植物公園 春のバラフェスタ2017

飢えが欲しい、渇きが欲しい│夢現無双

どうして、こうなってしまったのか?
モヤモヤと消化不良な後味が残る『夢現無双』。
複数回観ても、初めに感じた引っかかりが拭えません。

もちろん、生徒さんは素晴らしい働きをみせています。

剛勇無双を演じさせたら右に出るものはいない、無骨で不器用で、ひとすじな男っぷりを遺憾なく発揮した珠城りょう(宮本武蔵)。
原作のイメージそのまま、芯の強い一途な娘を好演した美園さくら(お通)。
武蔵の終生のライバルであり、心の拠りどころとして抜群の存在感を示した美弥るりか(佐々木小次郎)。
籠の鳥の悲哀と、一級の女の凄絶なまでの美を両立させた海乃美月(吉野太夫)。

他のキャストも申し分なく、どこをとっても安心して観ていられる舞台です。

飢えが欲しい、渇きが欲しい。


違和感の正体は、武蔵の描かれ方。
具体的には「千年杉」のエピソード。

お通が武蔵への愛を自覚し、武蔵が「けだもの」から「人間」に生まれ変わる大事な場面のはず。
なぜ、どうして、ああなってしまったのか?

千年杉に吊り下げられ、二日二晩。
ジリジリ焦げるような陽に焼かれ、吹き荒れる風に晒され、滝のような雨に打たれる。
命が尽きたら、木にぶら下がったまま鴉に目玉をえぐられる。

原作に描かれるのは、私刑にも似た沢庵(光月るう)の処罰。
「今日までの振舞は、無智から来ている生命知らずの蛮勇だ、人間の勇気ではない(略)怖いものの怖さをよく知っているのが人間の勇気であり、生命は惜しみいたわって珠とも抱き、そして、真の死所を得ることが、真の人間というものじゃ」

「くそ坊主!」「貴様を蹴殺してやる」
二丈(約6m)もの梢にぶら下げられてもなお、わめき、暴れ、牙をむく武蔵。
しかし、沢庵の真実の言葉が彼の心を揺さぶります。

「…沢庵坊、後生だ、助けてくれ」
沢庵への呼びかけが「くそ坊主」から「沢庵坊」へ変化していることにご注目ください。
武蔵の心にわずかながら他者を敬い慕う気持ちが芽生えているのです。

「俺は、今から生まれ直したい。……人間と生れたのは大きな使命をもって出て来たのだということがわかった。……そ、その生甲斐がわかったと思ったら、(略)……アア!取り返しのつかないことをした」

反省、そして命乞い。
それまで、他人の生命も己の生命も塵芥のごとく扱ってきた男の心に差す光。
それは、人間らしい「理性」であり、「愛」です。

「死にたくない。もう一ぺん生きてみたい。生きて、出直してみたいんだ」

もう武蔵はけだものではない。
「死」を恐れ、「意味ある生」を求める心が生まれた
人としての自我が芽生えたのです。

目覚めた武蔵の心は赤子のよう。
「WATER」という言葉を知ったヘレン・ケラーのように、武蔵の精神にパァッと輝く世界が広がったのではないかと思います。

人間らしく生きることへの渇望。
希望、夢、憧れ、幸福…
このシーンでは、そんな当たり前の欲を求める強い気持ち、ヒリヒリするような焦燥が欲しい。

もっと飢えが欲しい、もっと渇きが欲しいのです

お通の愛


しかし、劇中では沢庵に先んじてお通がやってきて、武蔵を木から下ろします。
「又八とお甲のことを聞かせて」とせがむお通に、「は?」と返す武蔵。

「は?」は、こっち(観客)の台詞です。

又八とお甲の関係を知りたいから武蔵を助ける。
これは断じて違います。

武蔵を愛したから救うのです。
なぜ、お通の台詞をこんなふうに改悪したのか。
このシーンで笑いが起きるたび、残念な気持ちになります。

みなしごのお通は決して愛に恵まれていたとはいえません。
又八の母・お杉に拾われ、食うには困らなくても、心は満たされていない。

誰かを欲する気持ちは寂しさと相性がいい。
村中から憎まれ、誰一人助ける者とてなく、千年杉にぶら下げられた武蔵。
武蔵の孤独に、お通の孤独が共鳴し、愛が生まれるのが「千年杉」のシーンなのです。

「武蔵の苦しみとともに自分も苦しみたい」
原作に描かれるお通の気持ちと、あまりにかけ離れた『夢現無双』。

「舞台と原作は別物」と言えば、そのとおりですが、いくらなんでもこれは酷い。
ヒロインがこんなふうに描かれて、観客の共感を呼べるでしょうか?
それでも、懸命に武蔵を慕うお通を形作ったさくらちゃんはよく演っていると思います。

※台詞はすべて新潮社・吉川英治著『宮本武蔵』より抜粋

珠城りょうの男役


木から下りた武蔵のもとに沢庵が現れます。
武蔵を諭し、首を落とすかと思いきや…
電光石火、もとどりを切り落とす。
ざんばら髪になった武蔵。

木の上下で問答を交わすより、演出としてのインパクトは大きいでしょう。

しかし、これではあまりに受け身に過ぎます。
「諭される」のと「自ら悟る」のでは雲泥の差。

殺される前に殺す。
無造作に無慈悲に生命を奪ってきた武蔵。
乱世では当たり前のこととは言え、あまりに容赦がない武蔵の剣。
追われながら、飛ぶ鳥を石つぶてで打ち落とし、引き裂いて、血のしたたるまま貪り食らう悪鬼のような男。

そんなけだものの心が、他者の言葉ひとつで動くでしょうか?
生まれ変わりたいという欲が湧いたのに、体は千年杉に縛りつけられたまま。
身じろぎもできず、飢えて渇いて、死を待つばかり。
「死にたくない」
「生きて、出直したい」
喉から手が出るほど生きたいと願い、今までの自分を反省したからこそ、原作では沢庵の言葉が効いたのです。

極限状態で腹の底まで落とし込まれた言葉。
だからこそ、武蔵の心は底からひっくり返ったのです。

体が自由な(命の心配がない)状態で「俺は強い!」と土を掻いたところで、木に縛りつけられていたときとは切羽詰まりようが違います。

深い谷底から、遥かな頂きへ。
武芸者・宮本武蔵の成長こそ、吉川英治が書いた『宮本武蔵』のテーマでしょう。

その落差が大きければ大きいほど、読者(観客)はカタルシスを得られる。
しかし、『夢現無双』は平坦な印象なのが残念です。

珠様(珠城)の形作る男役の味は、粘り気を伴った熱く暗く重く湿った情念にある、と考える私。
そこに独自の男役の色気が生まれる。
汗と垢と泥にまみれ、飢えた瞳をギラつかせる青年武蔵はまさに適役。

決して「宝塚的」なヒーロー像ではありませんが、武蔵の成長をより深く印象づけるのであれば、原作に沿った構成でも良かったのではないでしょうか?

天命を帯びて生まれ変わり、その道を邁進する愚直なまでの明るさ、真っ直ぐさもまた珠様の男役の魅力。
どん底から高みへと登る武蔵の姿は、きっと宝塚ファンの心を捉えたと思います。

中途半端に口当たり良く仕立てる必要はありません。
もっと生徒と観客を信じてください。

原作物が増え、宝塚の枠からはみ出すかと思われる作品が多く上演されるようになった昨今。
元の作品をいかにタカラヅカナイズし、観客を納得させうる舞台に仕上げていくか。
今後の課題です。
その難しさを感じた『夢現無双』でした。

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プロフィール

野口 留香 noctiluca

Author:野口 留香 noctiluca
宝塚歌劇と共にまもなく30年(ブランクあり)。
月組/星組比重高めの全組観劇派。
美丈夫タイプの生徒さんが好み。
宝塚歌劇観劇記録・考察・思い出話・備忘録などをまとめたブログ。
◇更新情報はこちら◇
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